第30話 謝ったあとにはボス戦がつきもの

 今、椅子に座って3人とミカさんが対峙している。


「3人揃ってどうしたんだ。解雇の解消にきたのか」

「そうだ。フィーはあずきから渡したご飯しか食べない。解雇したままでは、お世話係を辞めた現状ではフィーは本来の力を発揮できなくなっていく」


 ミカさんは長い髪をかき分け。


「それなら栄養槽に投げ込めば良いじゃないか。フィーも食べ物が入るなら食べずに入られまい」

「フィーは生き物です! そんなひどい扱いは許せません!」

「あずきが再開すれば良いだけの話しなんだがな」

「そのフィーのお世話係なんでが、お肉代渡してませんよね。なぜですか。フィーはみんなの物です。そのお肉代を解雇した人間に自腹で払わせるのはどうしてなんですか」


 ミカさんはえっという表情で。


「それは聞いていない。あとで支払おう」

「もうルカさんに話しが通ってます」

「そうか……」


 私は強い口調で言う。


「とにかく私がいないとフィーは痩せ衰えていきます! 栄養槽にシールドがあって入れるものをフィーが選択できるの、知らないでしょう! 私は自分を飛び込ませたらびよーんと跳ね返されたんです!」

「そ、そうか。ではフィーのお世話係として雇用しようじゃないか」

恩呼知真おんこちしんには」

「当然入らせない。あんなひどい行動をする奴は恩呼知真には要らない」


「えーと」とルカさんが話しに割って入る。


「あのですね、ミカさんはただのコマンダーでして。解雇権限なんてないんですよ。解雇権限があるのは私なんですよね」

「えっ?」

 本当に驚いた顔をするミカさん。

「今この部屋にフィーがいるのであずきさんを解雇しますね。ぬん、あずき、解雇」


 ゆっくりドスのきいた声であずき、解雇というルカさん。

 するとフィーの中から私の私物が全て出てきた。もちろんわたしも。

 大型全身洗濯機も。フィーの外がやべえことになった。


 中でルカさんが雇用とでも呼称したのだろう、今度はどばばばばばとフィーの中に私物とわたしが入っていった。すげーなおい。


「ぬん、ここあ、解雇」


 するとちょろっと私物が出てきただけで終わった。シンプルー。


「ここあちゃんもの少ないねえ」

「あずきの私物で大半が構成されてるんだ、あずき様々なんだよ」

「さてどうにかしてフィーに入ろうとしてください。綾雪乃さんは特別に私が許可しましたが、入れないと思いますよ」


 ジッパーを開けようとするここあ。全く動かない。フィーも困惑している。


「フィー、開けてあげて」


 フィーがジッパーを開ける。入り込もうとするあずき。しかしぽーんと跳ね飛ばされてしまった。


「恩呼知真から解雇されるというのはこういうことなんですよ。ぬん、解雇はミス、元通り」

「じゃあウチが解雇といったのは」

「解雇は無効です。精神的に追い詰めただけですかね。どれもこれもミカさんの越権行為なので、ミカさんが謝っておしまいにしましょう。喧嘩両成敗とか無しです」


 ミカさんはうるうると瞳に涙を浮かべると。


「ごめんなさい、辛いことをしてしまって。この通りです、本当にごめんなさい」


 土下座をしたのであった。私はその顔に足を乗せて。


「59連敗目、お待ちしてますね」


 と不敵な笑いを浮かべて逃げだすのであった。


「ふざけんなこのやろー!」

「ミカ、口調口調」

「いくら何でも許せるもんかー!」


 きゃっきゃきゃっきゃ逃げ回って捕まって関節絞められて。

 ギブギブギブ! なんて言いながら笑って過ごして。


 解雇騒動は幕を閉じたのでした。



 騒動のあと、冬明けまで80日くらい、雪解けまで65日くらいのとある日。


「え、わざと博士の豚どもを呼び込むんですか?」

「そうだ。あいつらは中型コアや大型コアを生み出すからね。そこまで強い敵もいないし呼び込んで討伐隊に倒してもらおう、というわけなのよ」

「うーん、曲がりにも天才博士ですし何かしてきそうですけども」

「討伐隊も参加するようだし大丈夫と思ってるんじゃないかしら。じゃ、OK出しとくわー」

「えぇー」


 喧嘩のあとさらに女の子の言葉遣いになって見た目だけなら可愛い子になったミカさん。ま、めでたく59連敗したんですけどね。

 ちなみに死体は集めて私の置換技術でコアに置換するそうです。血液は灯油。これらが物理報酬。金銭報酬は相当なものだと思う、聞かされてないけど。屍鬼は討伐隊が処分するんでしょう。

 じゃあやってやろうじゃないの。この青いインプラント500ゼニを入手したら。


 ――――――――


 手術ログ


 パワーアップ。

 皮下装甲の強化。

 表面装甲の搭載。

 セーラー服の機能強化。

 ・スカート付きポケットを両側に。

 ・・ポケットの亜空間化。

 ・・・疑似重りが入って華麗に舞うように見える。

 ・・・・戦闘時、胸の固定能力の大幅強化

 ・・・・・コーティング。

 シューズの機能強化。

 ・キック力増強。

 ・・グリップ力増強。

 ・・・かかとに円形刺突刃の搭載(前部は次の機会)。

 ・・・・コーティング。

 スパッツの機能強化。

 ・柔軟性向上。

 ・・緊急事の止血弱。

 ・・・さらに見えなくなる。

 ・・・・緊急事、フリルスカートになる(生地も変わる)。

 ・・・・・コーティング。

 下着やタイツ、ソックスの強化

 ・着心地の強化。

 ・・装甲化弱

 ・・・止血効果弱

 ・・・・緊急事、スパッツの変形に合わせた洋服に替わる。

 ・・・・・修復効果中(あずきの修復ではない)


 以上

 ――――――――


 今回は常に身につけている装備の機能強化が主な強化かな?

 でもパワーアップジャンプで50メートルはジャンプできそうなくらい筋力も付いたな。

 表面装甲は見えないけどまあ付いてるんだろう。最初の段階だし信頼は出来ないな。

 下着も強化される段階に入ったか。下着ってよくよくみると急所を守ってるから皮一枚でなんとかなった、とかそういうとき下着効果出てるかもしれないね。

 さーて、次の――。


「びええええええええええええええん!!!!!!! 今回僕の出番が無いよおおおおおおおおおお。 ゚(゚´ω‘゚)゚。。゚(゚´ω‘゚)゚。。゚(゚´ω‘゚)゚。。゚(゚´ω‘゚)゚。。゚(゚´ω‘゚)゚。 」


 ごめんなピンク。今回時間が無いんだ。


「びええええええええええええええん本当に終わっちゃったぁぁぁぁ。 。゚(゚´ω‘゚)゚。 」


 次に鉄を置換して折れないような金属にする。これゴミからだと全然素材として量が足りないんだよね。

 凄い効率が悪い。

 置換するには近い素材から置換するのが一番。

 エーテル増やせば多少は効率良くなるんだけどね


「これにあずきナイフを3方向おかーさん特製接着剤でくっつけてっと。 (΄◉◞౪◟◉`) 」

「ありがとうおかーさん。バックパックに入れておく長いのと、とっさに持てる50センチくらいの槍を作ってくれて」

「おかーさん呼びしてくれるならおかーさんいくらでも頑張っちゃう。  ( ・∀・)つ━╂───(´◎◞౪◟◎)──グサッ 」

「おかーさん、あれは出来てる?積極破壊シールドの強化版」

「出来てるわよ。効率も威力も範囲も、みんな引き上げたわ。まずもって普通の変異体じゃ通り抜けるのは不可能ね ٩(ˊᗜˋ*)و 」


 よっしゃ。これであとは――。


「待って待って、魔力スロットの電池を大型魔力コアに換装しておきましょう。今のおかーさんは手もおかーさんの手だからね、ピンクちゃんより繊細な作業が出来るのよ」


 といって乱暴に詰め込むおかーさん。ば、爆発しないよね?


「そういえばここあちゃんがフル装備にしたいって言ってたよ」

「ほとんど完了してるわよ。ここあちゃんに聞いてみなさい。あとはエネルギーの翼くらいね、これももう少しよ ٩(ˊᗜˋ*)و 」


 ほへー。後で行ってみよう。しかしおかーさんの存在も街に広まっているからひっきりなしに依頼が来ているみたい。悲鳴をピンクちゃんがあげていた。「僕の身体なのにいいいいいいいい。 。゚(゚´ω‘゚)゚。 」


 ここあちゃんに聞こうと思ったけど、討伐隊の準備が整ったらしい。こういうのはタイミングをずらすと士気に関わるし継続戦闘時間にも関わる。


 すぐに移動し、丘の上から街の方に掘られた溝の上に立ち、叫ぶ。


「博士資源作戦、始めます!!」

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