第29話 出撃場を荒らす女たち

 いやー良い場所だった。今はフィーの中で新しい道具の配置と、動作するか調べているところ。

 大型全身洗濯機なんかは全身洗濯機がフィーと私の部屋でしか動作しなかったから、大型もそうだろうなあ。

 大型が動くなら普通のは処分しよう。

 フィーのゴミ箱の中にぽいだ。


 移動できるお風呂とシャワー、無限の水道はどうだろな。外でも動くのかな、お風呂とシャワー、無限の水道共にサイズはそこまででもない。

 無限の水道は制限ありそうだけど、結局これ無限の水差しの改良版だからナノマシン置換技術で上手いことやってそうなんだよね。


「おーい、あずき。出撃場の中にゴミ箱ないか? ちょっと大型全身洗濯機が入らないんだ」

「えー探す探す」


 そういってキッチンがあった方へ向かう。すると大きなゴミ箱があるじゃないの。小物を入れてひっくり返す。うん、亜空間ゴミ箱だね。ガサゴソと引っ張り出し、フィーに喰わせる。


「おら、くえ、フィー」

「ぎゃおおおぉぉ!!」

「ゴミ箱食べたくはないか。じゃあテレポートで体内のご飯入れる所に運んでフィーに食べてもらおう。それなら良いよね、フィー」

「ばうばう」


 やっぱ直食いと吸収口に入れるのは違うもんだなーなんて思いつつテレポートさせる。

 食べたあたりで少しフィーが太った。ぷくっと。亜空間をしまうには自分のサイズも大きくしないといけないのだ。フィーのでーぶでーぶ。


「よし、これではいるっしょ。ここあちゃんどうですかー」


 無線で呼びかける。無線もバージョンが上がっているので遠く亜空間まで秘匿して飛ばせる。


「無事収納できた。普通に使えるな。多分外で使用するのは難しいだろう。フィーが自分のコンセントにコードを挿してる。高出力の無限電源がないと動かないだろうし、ちょっと大きすぎる」

「なるほど、移動できるお風呂とシャワーはどうですかー?」

「移動できるお風呂とシャワーはユニットバスだな。無限電源で水が出てくる。単3電池をソケットに入れたところ、お湯が出た。カーテンは全周カーテンで全く見えないし、コーティングも凄いコーティングが見て取れる。カビとか無縁だろうな。手に乗るくらいまで小さくなるし、フィーを使わず長距離遠征する場合は良いんじゃないか?」


 フィーがいない長距離遠征ってあるのかな? 最後は無限の水道だー。


「無限電源で水、魔力ソケットに単3電池を入れるとお湯が出るのはユニットバスと変わらない。ただユニットバスは汚れを洗い落とす洗剤がもう水に含まれているんだ。こっちはそんなことがないから飲用水として飲めるな。無限電源なら数個新たに手に入れたし外に行くとき便利になるだろう」

「へー。それじゃあ通常時は無限電源と一緒くたにしてキッチンに置いておこうか。キッチンの水を使うのもフィーのエネルギー使うし、代わりになるなら万々歳だよ」

「そうだな、おまえがかっさらっていった無限のコンロがあるからお湯を沸かすのも難点はない」


 かっさらっていったわけではありませんー。解雇されたから回収しただけですー。


「さて、ほとんどかっさらったけど良いのかい、出撃場としては」

「大丈夫です。ナノマシンが新しく作り直します」

「ほー、こんなところでナノマシンが出るとは。私が戦争に参加していた時代にはもうあったんだね」


 くるくるーと回りながらピンクちゃんが目の前に現れて、ズン (΄◉◞౪◟◉`) 、と所長の顔になる。


「こえーよ」

「うふふふ、驚かせようとしたくて。ナノマシン自体はテラフォーミングする時代から散布され続けているわ。この星はナノマシンで開拓したのよ」

「へえー、それが役目が変わって今の形になったわけだね」

「そういうこと。1年後、近くにいたらまたここに来ましょう。亜空間ゴミ箱や無限電源くらいは元通りになってるわ ٩(ˊᗜˋ*)و 」


 それじゃ、出撃場よさようなら。扉を開けてもらってシールドから脱出。扉が閉まるのを確認して腐ゆっきーの街へと戻った。フィーが森の上を疾走するんで凄く速かった。

 フィーが小さくなってここあちゃんが鞍に座り門を抜けたり、いつもの場所へフィーを配置したりしたあと、ミカさんのところへ向かうことにした。ここあちゃんも付いてくるって。嬉しい。助かる。


 ここは搦め手でルカさんを味方にしてからミカさんのところへ向かおう。レーダーによるとあっちだ。フィーも連れていこう。


「ここら辺は安宿街だな。よし、ついた。一泊5ゼニと書いてあるぞ。必要最低限の宿だな。5ゼニもあればしっかりしたチェストが付いているしドアの立て付けも良い。物が盗まれることもないだろう」

「ふーん。今財政が潤っているからもっと高いところへ泊まろうとしても大丈夫なんだけど、そうはしなかったんだね」

「自分だけに使うことは憚られるからな。今は日が高い。バイトに行っているだろう。夜になったらもう一度訪ねよう」

「ここ犬をつなげるポールがあるから一言言って、フィーにウルフ犬あたりになってもらってそこで過ごそう。まだ整理整頓と大きくなった分の再配置終わってないし」


 そうしようということになって、ポールを借りてフィー内部のお掃除開始。伸び幅が70センチくらいと結構大きくなったので隙間が一杯ある。


「あずき、このチェストはどうすればいい?」

「あーそれはもうちょっと広い場所に置こう。狭いから出撃するとき肩がぶつかって難儀だったんだよね」

「あずき、この化粧台は」

「お風呂場だね。洗面台と言った方が良いか。みんなで使うものだからね。私達化粧ほとんどしないけど。ミカさんの59連敗のためにあると言っても過言ではない」


 などなど、私の方が多少こういう心得があるので私の指示の下再配置していった。


「ソファーは新しいもの買わないと駄目だね。L字型のソファーだけど、隙間が大きく開いてる。あ、全身洗濯機は2個置くスペースもないし1個捨てちゃおう。フィー、食べちゃって」

「ばうばう」

 そういって栄養槽にぽいっと捨てるフィー。栄養槽も大きくなったねえ。以前わざと栄養槽に飛び込んだことがあるけど伸びる蓋みたいなものでびよーんと跳ね返された。まあ入ってもお尻から出せるらしい。お尻からかあ……。


「ばうばう、ばう!」

「ほー、水の使い手になったらしい。みてみようか」


 周囲に人がいないことを確認してフィーから出る。

 おお、フィーの毛が薄い水色になっているでは無いか!首筋の青い毛はさらに深い色になっている!


「凄いね、フィー!」

「ばうばうーん」

「で、なにが出来るんだ」


 フィーは軽ーく口からコールドブレスを吐いた。

 足下を凍らせてスケートのように疾走したりした。

 背中に氷の翼を作り、風の疾走でちょこっと飛んだりもした! ちょこっとなのはポールに繋がれているからね。


「凄い凄い! フィー凄いよーなでなでなで」

「ばうーんばうーん」

「凄いよーなでなで」

「ば、ばうー、ばうー」

「よーしよしよし、首筋を撫でてあげようねー」

「ぐがーぐがー」



 ねた。



「なあ、お前は自由に入れるけどボクはフィーの許可がないと入れないんだが」

「そろそろルカさん帰ってくるでしょ」

「確かに帰ってきたな。おーい、ルカさん」


 二人で手を振りルカさんをお出迎えする。


「おやおや、もうお帰りですか? 北の方に行くの大変でしたでしょうに。ここあちゃんに説得されましたか?」

「いえ、これからミカと対決してくるのですが、まずはルカさんを仲間にしようと」

「ズバッとそのまま言いますねあずきさん。まあ解雇とフィーのお世話係の件は私も一言ありますのでついて行きますよ」


 やたー、これで心強い仲間を手に入れたぞ!


「しかし、知らなかったとは言えお世話係のお肉代自腹だったのは申し訳ありません。ちゃんと日数分支払いますからね」

「20日やったから……600ゼニ!? 大金持ちになっちゃった!」

「500ゼニだアホウ。下水処理は特殊な奴じゃないと出来ないからな。普通は専門のサイボーグが地域を巡廻して請け負ってるんだ」

「そうなの?貧民の人が最後にやる手段だと思ってた」

「汚れた下水道だとかなりガスが出ますからね、呼吸の要らないサイボーグじゃないとガスで窒息死します」


 そういや私気管支にフィルター入っていてほとんどのガス無効だったわ。

 ガスが充満して、とか酸素がなくて、とかでの窒息死もしない。

 そのような状態になっても即座にエーテルと魔力スロットに入ってる魔力電池で無酸素行動に移行できる。

 モンスターが出すような分類できないガスは吸ってすぐに肝臓に血液で送られて、肝臓代謝で解毒する感じだね。

 サブ心臓が複数あるから血液の流れを自由に変えることが出来るんだー。

 ちなみに通常でも必要な酸素は極小で大丈夫。勿論一杯あったほうが何かと有利だよ。



「もうちょっと下水処理頑張ろうかな。雪解けまでの期間75日やるとしても、えーと、うーんと。1500ゼニ手に入っちゃう!」

「あずきって情報処理苦手だったっけ?」

「そういうのは天才最強のここあちゃんの担当でしょ」

「それじゃあまいりましょうか。術、人物特定。中原ミカ。ふーむ、あそこらへんだと……中級宿にいますね。一泊7~10ゼニ。女性が泊まるならそういうものでしょうか」


 速報、私、女性じゃなかった。実際女性の人格を植え付けられた女性型アンドロイドですし。


 人物特定が示すとおりに進み、中級宿へたどり着く。ミカさんと面会したい旨を受付にいい、少々待つ。無事に通してもらえた。

 そしてミカさんの部屋の前。

 はたして上手くお話しすることは出来るのか。

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