第27話 反乱
「シュッシュッ、シュシュッハイ!」
ジャブジャブ、ジャブストレート。止めにミドルキック。
下水処理は午前中には終わるので、公園の片隅に置換技術で作った地面に置くタイプのサンドバックを置いて練習してます。
筋力は増えないけど、技術向上は必要だと思った。あのとき止まらずに蹴り上げりゃ良かったんだ。判断できなかった。
だから練習。とっさの判断が出来るように練習。
「ハイ! ハイ! ハイ!」
ロー、ミドル、ハイの打ち分け。キック中心に練習。
筋力があるから鋭く振れるというのは誤りで、技術があって初めて鋭く振れる物だと思います。
当分の間練習していきましょう。
さて。一週間ほどたちました。30日ですね。全くの練習無しから初心者程度にはなったので動きが見違えるほど良くなったかな。
さてさて。冷静に考えましょう。
私は解雇されました。ということは中の私物を取りに行かないといけません。
「ということでフィーよ、中に入れておくれ」
「グルルル」
「おめーの意見なんざ聞いてねえんだよ、こっちは解雇されてフィーのお世話係にされたんだ、無償でな。ほら、さっさと開けよ」
「クゥーンクゥーン」
「おめーの話は聞いてねえって言っただろ。横のジッパーから勝手に入るからな。フィーがどれだけ嫌がっても私は自由に出入りできるもんな」
といって逃げようとするフィーにキックを入れて黙らせ、横のジッパーから入りました。
中に居たのはミカさんとおか、所長。
解雇されてるんだから私物を取りに帰っただけだといい、全身洗濯機、無限コンロ、物質置換機、魔力結晶生成機、冷蔵庫、ソファー、化粧台、自動手術機などなど私の部屋と所長の部屋、手術室にあったものを全てバックパックに仕舞い込みました。まだ入るバックパックさん凄いな。
「じゃあ、そういうことで。フィーの世話もやめたいんですけど駄目ですか? 護符の作成に2000ゼニかかったんですよ。フィーを使えない現状だと同じ物を作るだけでどこまでかかるかわからないので。毎日25ゼニ支払ってくれるなら別ですが」
「あずきちゃん、あんまりやけにならないで (:3_ヽ)_ 」
「やけじゃないですよ、なんで解雇されたのに私物使われたままなのかなって思っただけです。当然の行動ですよ」
お世話になりました、といってジッパーから出る。終始ミカさんは無言だった。無言は肯定の証。フィーのお世話やーめた。
「じゃあな、フィー。もうお世話しなくて良いんだって。いやーお金がかかって大変だったよー。下水処理で30ゼニもらってうち25ゼニをフィーの食費に充ててたんだぜ。下水処理やっても5ゼニで毎日生活してたってんだ、やってらんねえよな」
「クゥーン」
「臭い飯食わせて悪かったな。それじゃあな、フィー」
「ばうー、ばうー」
さって。
インプラント挿せるピンクちゃんと別れたので、大型のアンドロイド遺跡を探さないといけませんね。目星は付いてます。北の崖に大型シールドで守られた場所があるそうです。どういうシールドかはわかりませんが、未盗掘な大きな設備であることは間違いないでしょう。
ちょっと行ってきます。インプラントはお店で買えるけど、設備は買えない。
森を越えた先にあるのですが、困ったことに私のレーダーやセンサーは東西南北を認識していないんですよね。
こういうぼろが出るのがインプラント式の欠点です。
コンパスは森に入ると磁場の出る岩石があるので使い物にならないですし。
盗掘される危険性が増すけど、
先にコンパスで北の方向を確認。
これでなんとかなるでっしゃろ。駄目なら戻れる。
ドカンドカンと撃ちまくり、道を作っていく。なんどか撃ち直したが、崖の所にたどり着いた。奇跡だ……。
「さーて、大型シールドは……あれか。所長の所もそうだったけど、シールドって見えるもんなんかな。雪も積もってないし積極破壊型だね。センサーで攻撃してきそうな設備は……ない。接近してみよう」
ずしずしと雪をかけわけ進みます。今までは森をふっ飛ばして主に森の上にあった雪も溶かして進んできたけど、崖の周りは地面に雪があるからね。かき分けて進まないとね。
30秒くらいで諦めました。雪が深すぎる。こんな時は……。
「
そう、私もね、拡散方向・方法を操るくらいは覚えましたよ。溶かせ!
じゅうじゅう
おおー溶けていく。雪ってエネルギーぶつけたくらいじゃ頑張ってもほぼ溶けないって聞いていたけど、SAKURAで溶かすとそこそこ溶けますね。
エネルギー量も高いもんねサクラ・フレアは。バンバン撃っていきましょう。
拡散型サクラ・フレア! 拡散型サクラ・フレア! 拡散型サクラ・フレア!
進まねえ。溶けるけど溶ける距離が短い。これブーステッド撃った方が良いのでは? ブーステッド・サクラ・フレア!
数メートルで吸収された……雪に負けるエネルギー量なのか。必殺技だと思っていたけどそこまでじゃないのは心に刻んでおこう。でも私にとって切り札なのは変わりがないけど。
しかしやるしかない! エーテル残量を気にしつつ前に進むしかない! 帰りどうしようかな!
雪解けまでここにいるか! 博士来そうだけど強力な護符あるしな。電池も大量にある。
春になったら予備の護符に付け直して逃げ去ろう!
シールドの手前まで来たぞ。さてと外観は。楕円形のおおきな扉にそれを覆うシールドか。
センサーの反応は……。シールドが私の波長と同じ? なんの波長? 不明か。
扉の印字はー、私の紋章と似てるな。センサーで解析。
同じ? 左に梅、右に桜というシンプルな物だけど。
シールド触れてみるか。つんつん。触れた。積極破壊系じゃないのかな? でも雪積もってないぞ?
そしたら。スピーカーで。
「お帰りなさいませ、AX-001。お待ちしておりました」
いや、私の型番で言われても、貴方のこと私知らない。
「ここは何の施設なの?」
「はい、ここは博士に反撃するための倉庫です」
本当かな。おかーさん、じゃなくて、所長に確認とった方が良いな。
しかし、どうやってコンタクト取れば良いんだ? フィーは私の声をどこまででも聞きとれるから……。
「フィー、ご飯食べる? 一人で来るなら食べさせてあげる」
なんて言ってみたり。でもご飯くらい一人で食べるよねえ。
「ばうーん!」
え、来た!? しかも早い!
ええー森の上疾走してきたんだけど!? どんなん!? 風をスケートにでもして疾走してきたってことかな。いやすごい。
「ばうーばうばう」
「くすぐったいくすぐったい。なんか痩せてるね。ご飯食べてなかったの?」
「ばうばうばうばう」
「私の手渡し以外からは食べない、ってなんでよ。お腹すいたでしょ。いっぱい食べな」
ばらばらとフィーのご飯をバックパックから取り出して食べさせる。
「所長乗ってる? ちょっと確認したいことがあるんだけど」
「もぐ!」
くーやっぱお前可愛いなあ。
「はぁい、おかーさんよ。この遺跡懐かしいわね。1号機の出撃場だった場所よ。つまり貴方が博士と戦っていた時代ね。多分負けて捕らわれたときにそこら辺の記憶を破壊されてるからわからないかもしれないけど」
「話早い。そっか、じゃあ中味は――」
「――博士が仕掛けていてもおかしくないぞバカ」
なんでここあちゃんがいるの!?
「なんでって顔してるな。フィーはうれしさのあまり後ろから付いてくるボクを見ずにここへ来たんだ。ボクは空飛べるだろ」
「でもでも、私はもう解雇されていて」
「それはその可能性もあるってだけだろ。それに、ボクがバックスに付いていないとお前は突っ込んで死にかけるからな。それに助けられたこともあったが、基本ボクがいないと危ない」
正論パンチされてハートが痛いけど行きますか! まずは私が認証解除してシールドを消すかみんなを通過できるようにするかだ!
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