第26話 激闘! 強い屍鬼との戦い!
「そろそろ屍鬼が暴れたところだ。フィーから降りて警戒しながら進むぞ」
4人が降りて、警戒しながら進む。
すると、まだ新しい血液を見つける。
「これは、被害者の血液だね。近くにいるかも」
耳を澄ますとむしゃむしゃと物を食べる音がする。
「ここあ」
「ああ、聞こえている。腕か何かを食べているんだろう」
「先にここあが狙撃しろ。そうしたら私が制圧射撃をする。ルカさんのスロウがかかったらここあは足が止まった屍鬼を射撃で処分だ。あずきはここあのバックスに入れ」
「了解、足音を消して移動する」
そっと移動するここあちゃん。後ろからついていく私。
[目標を視認、おいしそうにしゃがみながら腕を喰ってる]
ここあちゃんが喉だけで喋れる小技を使い無線で状況を知らせる。
私は、私は、私は。私のせいでこんな屍鬼を呼んだんだ。
私がやらなきゃ。私がやらなきゃ。私が、私が、私が。
「うわあぁぁぁぁ!!」
気がつくとここあちゃんの狙撃より前に屍鬼に突っ込んでいった。
「
必殺のサクラ・フレアを放つ。
しかし。
「死んでない! 突っ込んでくる!? サクラ・フレアを防がれた!?」
サクラシールドではなかったが何らかのシールドを展開し口から裂けた3本の舌を出し突撃してきた。
「肉弾戦なら負けない、パワーアップ! うおおお!!」
挨拶代わりの右ストレート!
え
止められた。左拳で受け止めたのだ。
左手ははめてあるからすぐに左アッパーで迎撃する。それも止められる。
両手を持たれた私。プロレスの力勝負みたいな感じで力を出し合う。
じり貧だった。私の方が負けて腕を下に曲げさせられている。
「くそがよう……」
プロレスの力勝負は、力負けして手を下げられると、肘の関節を絞められる。
「ぐああ」
苦痛にあえいで口を開けた瞬間、触手を口に入れられた。強制的に喉をこじ開けられ、胃の中へ入っていく。
何をする気だと思ったら、触手で胃の中を食べ始めた。胃の中には胃酸がある。それで内部から溶かすつもりか。
触手の上部からもう一本棒みたいな物が生えてくる。狙いは額。脳を吸うつもりか。
まずいな、生体部分の脳が吸われてしまう。それでも死なないけど、データを機械脳に移行させないと。
移行開始。生体脳には主に経験が記録されているからな。経験もとても重要な強さの一部。
額に触手がくっつき、ドリルのような物でこじ開けようとする。
しかしそこは負けなかった。頭部から首はかなり強固な造りなのだ。皮下装甲もある。生体ドリルに負けてたまるか。
胃も胃酸は効果がない。胃の中以上は絶対溶けない。
もっと奥を喰おうと触手を精一杯伸ばしたとき、反撃を始めた。
「ぐうう!」
「アイイイイ!!」
触手をかみ切った。胃の中を食べるような触手は柔軟性がないと駄目だ、固くは出来ない。
そして左腕を射出する。
めいいっぱい力を入れていた屍鬼はスッテンコロリンと転がった。今だ。
何をすれば良い? 殴れば良いのか?
ナイフは今射出した左腕から出る。ハサミもそうだ。
ここまで接近してのブーステッド・サクラ・フレアなら効く?
一瞬判断が止まった隙に屍鬼は逃げだ――せなかった。ここあちゃんの右腕に付いているエネルギー速射砲の連射であっけなく頭や胴体を貫かれて死んだのだ。シールドは展開されなかった。
「げほげほ、おええ」
なんとか触手を出す私。
「こえでなんとか――、痛っ、ここあちゃ、痛、なんでビーム砲を撃つの」
「役に立たない奴を処分しようとしているところだ。狙うならヘッドショットだからな」
ビーム砲を撃ちながら近付くここあ。ボロボロな私は為すすべもなく撃たれて地面に転がる。
「お前は
「なにいって――」
「お前はコマンダーの指令すら守れない下等生物だ。そんなやつは恩呼知真のメンバーじゃない」
「その辺にしとけ、ここあ」
ミカさんの声でここあは射撃をやめた。2回思い切り腹部を踏みつけてから。
ミカさんが私に近付いてくる。そして胸元を掴み。
「お前は博士の味方か!?」
もの凄い怒鳴りつけられた。
「ちがっ、私は――」
「この状況は博士のせいだろ、違うか!?」
「でも、私がいたから血液が」
「そんなの博士がお前を狙っているからだろう! お前のせいじゃない! お前にGPSを付けたのはお前自身か!?」
「ち、違います、遺跡で待ち伏せしていた蛙型の」
「そうだ、開かないはずの手術室に待ち伏せしていた特殊な蛙野郎だ! 他に何度かショック受けてるがそのたびに取り除いてきたか?」
「いえ、取り付けられたのはあれだけで」
「じゃあ博士がお前が脱獄した際にここに来るだろうと配置していたしか考えられないだろう! GPSをつけたのは博士だ! お前のせいじゃない! 博士が悪い!! GPSまで取り付けてお前を付け狙う博士が全部悪い!!!!」
「私は、悪くないんですか」
「めちゃくちゃ悪い! コマンダーの指令を無視して突っ込んで死にかけるなんて奴は恩呼知真には要らん! 解雇だ!」
「か、解雇」
「お前は当分フィーの世話係だ。亜空間に入ることは許さんからな」
私は涙ボロボロで「はい」と頷くだけだった。
周辺の屍鬼はレーダー機能がむちゃくちゃ強いここあちゃんが軒並み処分してくれていた。ビームは可変式でぐにょぐにょ曲がるそうだ。森の中でもバカスカ当てられる。おかーさ、所長製の道具はやっぱり変。
私が腐ゆっきーで冬ごもりしていることは博士にはバレているため、なんどかサーベル型の変異体や火を吹くトカゲなどが攻めてきたりしたけど、みんな壁に備え付けてある機関銃で撃退。死体は大きな袋に詰めて私が置換技術で魔のコアにしちゃう。血液は灯油にすることにした。人間だから死体からもコア出るしね。
金持ちの街は違う。
「さて、今日も下水処理の仕事をしますかね」
フィーのお世話にフィーの食料も調達しろという指示も入っていたため、伐採と薪割りじゃお金が足りない。臭いのと不衛生なのを我慢して下水処理の仕事をすることにした。一日30ゼニも手に入るから、25ゼニくらいするフィーの食事も十分まかなえる。残り5ゼニで1日を生活するのだ。宿泊に3ゼニ、食事1~2ゼニで本当ギリギリなんだけどね。
下水処理も慣れれば楽なもんで。置換技術を使って石けん水や重曹水を作りそれで下水をゴシゴシすればおっけー。便利な技術である。一度洗っちゃえばそんなに汚れないんだよね。この街水使い放題だし水洗便所なんで。洗剤のカスがこびりつくからそれを綺麗にするのが主な任務。便とかは意外とくっつかない。
勿論臭うから専用の服を着ているんだけど、臭いも身体にこびりつく。ただ、小石を消臭剤に変えて身体にふりかければ臭いも取れる。大変だけどしょうがない。とんでもない過ちを犯したんだから。
「フィー、餌置いとくね」
「グルルル」
めちゃくちゃ怒ってるオオカミの顔で顔を背けるフィー。私が臭いんだよね。
「臭い取り切れないからさ、ごめんね。ブラッシングとかもしたいんだけど臭くて近づけないからさ、あとでやらせておくれ。全身洗濯機を使えば臭いも綺麗さっぱり取れるからそれからだね」
「ぐるる! ぐるる!」
「お前のブラッシングなんて要らないなんて言わないでよ。全身洗濯機使えば綺麗さっぱりなんだから」
「グガガガガガ!」
「臭い飯だすなは、ごめん。今度からお肉屋さんに持ってきてもらうからさ」
フィーのご飯は出勤前の朝あげているんだけどやっぱり犬のフィーには匂うみたい。消臭剤位じゃ嫌なんだろうね。
ちなみに護符は皮下装甲の内側に収納している。洗えないもん。皮膚の中に入れている感じなので違和感が凄いけど我慢するしかない。
雪解けまであと一ヶ月半かあ。
長いような早いような。
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