第8話 剣をもつもの

『ほぉ、それが例のアクト・フレームか』

帝国の隊長機であろう機体から感嘆の声が聞こえた。

(……やるしかない……やるしかない……落ち着

 け……落ち着け……さっきの感覚を思い出し

 て……)

レットははやる鼓動を深呼吸で落ち着ける。

そして、操縦桿を強く握りしめる。

『では、武器を構えよ』

そう言って、隊長機は腰から剣を抜刀する。

「え、ええと……武器は……」

レットはシステムディスプレイを操作する。が、

「武器がない!」

さっきまでの整備班の打撃剣とはなんだったのか。

焦りと緊張がレットを締め付ける。

『聞こえるか、レット!』

ノアの声がシステムディスプレイから聞こえる。

どうやら、いつの間にか通信状態になっていたらしい。

『後ろだ!後ろのコンテナに剣が置いてある!それ

 を使え!』

「わ、分かった!」

後ろを振り向くと武器が入っているコンテナがカメラに映る。

「これか!」

その武器の内から、平べったい棍棒にも見えなくもない形状の打撃剣を取り出し、構える。

「それでは、行くぞッ!」

隊長機がスラスターを稼働し、距離を詰める。

「うわぁっ!」

打撃剣を構えたはいいものの、相手の攻撃を受けきれず弾かれ体勢を崩す。

『どうした、そんなものかアクト・フレームッ!』

更に隊長機が追い打ちをかけようと剣を逆手に構える。

「う、おぉぉぉっ!」

杭のように撃ち落とされた剣を左腕装甲で防ぎ、右手の打撃剣を突き出す。

それを飛んで躱し、距離を取って隊長機は再び構える。

レットは体勢を立て直し、両手で打撃剣を構える。

「っ来いっ!」

『はぁぁ!』

隊長機の突撃を打撃剣で受け止める。

「このぉっ!」

そのままブースターを全開にする。

『ぐっ、』

「いけぇっ!」

推力とパワーで隊長機を吹き飛ばし、そのまま……

ガシャァァァン!

凄まじい金属音が響く。

その音の元には、頭部から肩部にかけて大きな切断面を残した隊長機と、バッテリーセーバーに移行する直前、もう一本の腕を引きちぎったアクト・フレームがいた。


獣の瞳が色を失う。

それはまるで、眠りにつく様に。

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源刻のヴァルキリウス MasterMM @Mastermm

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