第6話 ノア・ゼルトス

戦艦に住民が避難しきると、戦艦から人型フレームが現れ、アクト・フレームに近づいていく。

『これから、あなたの機体を艦に収容します。

 ついてきてください、ノア隊長』

その通信を聞いたレットに、とある疑問が浮かぶ。

(ノアって……父さんの……)

『……?ノア隊長?』

「あぁ、いや、分かりました。」

疑問を胸に抱えながら、レットは戦艦に搭乗した。


「あ、あれ……」

戦艦に収容されるや否や、レットの搭乗した人型フレームの動きが止まる。

『ノア隊長?どうかされましたか……?』

「い、いやなんか急に動かなくなって……」

レットが困惑していると、システムディスプレイに文字が表示される。

『バッテリー残量、3%

 バッテリーセーバー起動 

 サブシステム停止

 メインシステム機能制限』

「ば、バッテリー切れ……」

この機体がバッテリーで駆動していたことに驚いていると、整備用ハッチであろうこの場所の扉から2人の人影がこちらに近づいて来るのが見えた。

『おーい!レイー!』

「父さん!」

『ちょっと待ってろよ、今開けるからな!』

慣れた手つきでコックピットを開け、レットを抱きかかえる。

「おーよしよし、怖かったな〜怖かったろ〜」

「え、いや、ちょ父さん…」

更に困惑していると、父の背後から人影が現れる。

「……それがお前の息子か、ノア」

「あぁ、レットっつーんだ。ほら、レイ挨拶」

ノアに促され、レットは軽く会釈する。

「父さん。この人は……」

「昔の父さんの同僚だ。な?」

そう言って後ろから現れた人物に振り向く。

「……一応、だが」

不服そうな顔で答える。どうやら一応、同僚らしい。

「……それで、だが。」

ノアがレットの方に振り向く。

「あの機体、レイが動かしたのか?」

「……え、えと……」

真剣な顔で追い詰められる。

「別に俺は怒ってる訳じゃない。確認したいだけ

 だ。だから教えてくれ、レイ。」

「……少しだけ。」

「少しだけ?」

ノアが不思議そうな発音で返す。

「最初は勝手に戦ってたんだけど、途中から……」

「……そうか。因みにもう一つ確認だが、レイはあ

 の機体に乗ったことがあるのか?」

レットは首を横に振った。

「……そうか。よし、レイ。母さんのとこまで案内

 する。そこで……」

「待て」

ノアの同僚であろう人が止める。

「初めてアレに乗るなら、何故そこまで動かせた」

「必死ってこともあるだろ」

ノアが弁明する。

が、それを無視しレットに目線を合わせる。

「言え、何故そこまで動かせた」

「え、えと……」

「おい、何もここまで言うこと無いだろ」

「言え」

……答える為の言葉が足りない。

何より、怖い。

「ホラ見ろ、怯えてるじゃねぇか。今回はこのくら

 いにしても」

「駄目だ。是が非でも聞かせてもらう」

「……はぁ~。レイ、怖いとか悪いんだが、聞かせ

 てやれないか?」

レットはゆっくりと首を縦に振る。

「操縦桿を握ったら、何故か動かし方が分かりまし

 た」

「……ふざけているのか?」

更に声が低く、鋭くなる。

「いや、そういうことじゃなくて……」

その時、レットの動きが止まった。

「どうした?レイ」

「何か……来る……!」

同時にけたたましいサイレンが艦に響き渡った。

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