油屋にて
その日、若旦那の
「鹿島屋の若さま、毎度、ご
帳場に
「若さま、もう聞いたかい。西の町で、
密通とは、男女の道理に外れた肉体関係を
「奉公に行った先での事故や事件は、不運ながら付きものです。どれほど汗を流しても、商いのことを覚えるまえに、病気や怪我で働けなくなることもありますからね。いろいろと、注意が必要になるでしょう」
いくら薬種商とはいえ、原因が不明確な
「お待ちどおさま。はいどうぞ、いつもの採種油です」
きりっとした眉の看板娘が戻ってきて、結之丞へ油壺を手渡した。小形の陶器だが、訪ねたときよりも、ずしっと重くなっている。蓋付きの油壺でも、天然成分の青臭さが鼻につく。千幸は三つ折りの長財布の紐を
「毎度あり」
筋張った細い指で
「男所帯に、
女など
「これは駄賃だよ」
「あ、ありがとうございます」
結之丞は、おそるおそる片腕をのばした。手のひらに置かれた巾着袋から、チャリッと
〘つづく〙
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