第3話
零夜は今回は優しくドアを閉めて行った。
これがいつも通りなのだ。燈彗は起き上がり、椅子に座り仕事を再開する。燈彗はしばらく
仕事をしていると、書室に入る人物がいた。
「あ、
「ぼ、ボス!書室で仕事はやめてって行ったでしょ!?」
「...すません」
だが、燈彗は考えた。希子は自分に言いたい
ことが他にあると。なぜなら、燈彗はいつも書室で仕事をしているからだ。注意しに来たのもそのついでだろう。それを察したため、燈彗は仕事をバッグにに入れて書室から出る準備をする。そんな燈彗の様子に希子は珍しそうな顔をしていた。
「....ボス。いつもより潔が良いですね」
「え..希子は俺と話したいことがあるんだろ?
それなら俺の部屋で話そう」
「え、な、なんで分かったの!?」
「それくらい見たら分かる。行くぞ」
「は、はい」
亜挫魅の構成員は全員が燈彗や零夜が保護した人で女子と男子が半々だ。保護した人は無理矢理ここの構成員になる..という訳ではなく本人の意見を尊重している組織なのだ。そのため男女共の構成員達は仲がいい。保護した人の99%がここの構成員になる。1%は、外でお金を稼いで
来てその稼ぎの半分をこの組織に入れてくれている。無論燈彗や零夜もこの組織の構成員の人間誰もこの組織に入ろということを一言も言っていない。本人が自主的にしてくれていることだ。構成員..いや、保護した人全員自分の部屋が
ある。それでも、構成員達のほとんどの時間はリビングや誰かがいる場所にいる。燈彗と零夜も同様でリビングにいることの方が多い。仕事の時もである。数分間の間、希子と燈彗の2人で燈彗の部屋に入る。燈彗と零夜は自分達の部屋がある。
「ボスの部屋久しぶりに入りました!...意外と
綺麗にしてるんですね」
「やかましい。ほら、ソファーに座れ。お茶でも入れる」
「あ、私ジュースが好きでーす!」
「知っとるわ。オシャレに言ってんだよ。察せ」
「あははっ!察してますよー」
「ったく..」
こんな会話をして燈彗はお茶で希子はみかん
ジュースを出した。希子は「これこれー!」と
上機嫌で飲む。燈彗と希子の関係性は兄と妹という関係なのだ。まぁ、歳は希子の方が上だが。燈彗と零夜は構成員との距離感が近く本当の家族のように接している。ボスと構成員という肩書きはあり、上下関係は少なからずあるが亜挫魅の構成員達は全員家族なのだ。そして、ジュースを飲み上機嫌の希子と燈彗はそろそろ本題に入ることになった。
「それで、希子。俺に話したいことって何?」
「....それは、ボス..!いや、燈彗さん!学校に行って!」
「え!?さ、さっきの話し聞いてたのか」
燈彗は驚きながらも怒りはせずに、希子の隣に座り頭を撫でる。希子は、なんとも言えないような顔をしていた。
「...ごめんなさい、燈彗さん。でも!燈彗さんは自分の学校に行かずに私達を学校に行かせてくれたし私達のことは気にしないでいいんですよ?私達も燈彗さん同様、燈彗さんの意識を尊重したいと思ってますし..」
希子がそう言うと、リビングでいた構成員達が燈彗の部屋を心配そうに覗いてうんうんと頷いている。きっと、希子と燈彗が部屋に入って行ったことで構成員達は燈彗の学校の話しだと察したのだろう。希子の顔と構成員達の様子を見て燈彗は、自分の判断ミスをしたことに気づいた。燈彗は自分と零夜だけでこの話を止めようと考えていた。だが、燈彗が思っていた以上に構成員に話が広がるのが早かった。これを機に燈彗は何があっても皆の意見を聞いた方がいいな。それが自分の話だとしてもと、燈彗はそう思いながら、おもむろにソファーから立ち上がり希子と盗み聞きしていた構成員にも聞こえる
ように話しかけた。
「希子、家族会議するぞ」
「え!わ、わかった!燈彗さん!」
希子は嬉しそうに微笑んで燈彗の部屋を走って出て行った。その時には盗み聞きしていた構成員は何事も無かったようにリビングの椅子に座っていた。
「相変わらず走るの早いな希子は」
と燈彗は、そう言い笑いながらバッグに入れた仕事を部屋に広げて仕事をする。燈彗と零夜の自室とリビングは自室のドアを開けたらすぐにリビングという距離である。燈彗もいつもならリビングに行き仕事をするが今は行かない方がいいと察した。すると、リビングの方が歓喜の声と零夜の「だから僕以外の方がこういうのは皆の方が聞くって行ったじゃん!」という声が聞こえてきた。燈彗と零夜の自室は自室のドアを開けたらすぐにリビングという距離である。そのため少々リビングの声が聞こえるのだ。だが、それは燈彗の耳がいいだけだ。普通の人は今の声は一切聞こえないだろう。それくらい防音機能がついている。そして、零夜の声を聞いて燈彗はため息をつきながら仕事を再開する。
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