第4話

燈彗は仕事を全て終えてリビングに向かう。

すると、すごい人数の構成員がいた。その中に零夜もいる。燈彗の姿を見て嬉しそうにする構成員達。その姿はまるで人慣れした犬のようだ。


「ボス!希子から話しは聞きましたよ!仕事は俺らに任せて副ボス...カシラと一緒に学校に通ってください!」


「そうっすよ!ボス!俺らもちゃんと学校行かせてくれましたし!あなたのおかげで今の俺らがいるんです!俺たちはあなたに感謝してるんですよ!」


「「「「そうですよ!!ボス!!!」」」」


「み、みんな..」


燈彗がリビングに行った瞬間、学校の話しに

なった。急な話題に少々困惑しながら構成員達の話を聞く燈彗。一方構成員達に話した張本人である零夜は、うんうんと泣きそうになり

ながら感動していた。零夜はいつも涙腺が緩いのだ。燈彗と零夜は8歳の時に組織【亜挫魅】を作った。その時から2人は、組織を大きくするために小学校にもあまり行っていなかった。この2人にとって亜挫魅という組織はかけがえのない程に大事なものなのだ。


「.....わかった。皆がそう言うなら俺も学校

行くわ。ただし、何かあったら隠さずにすぐに俺が零夜に伝えること!」


「「「「はいっ!」」」」


燈彗は自分以上に喜んでいる構成員達を見て

笑顔を浮かべて長めのソファーに座った。すると、燈彗の隣に座って来た者がいた。座って

きた者の正体は零夜だった。零夜の顔はニヤリと品のない顔をしていた。そんな零夜の顔に無意識に顔を歪める燈彗。燈彗の表情を見た零夜はニヤリとした顔をやめ、燈彗に話しかける。


「ちょっと、そんな顔しなくても良くない?」


「え?だってキモかったし」


「流石に酷いよ?いくら僕でも泣くよ?」


「泣けよ、勝手に。めんどくさいなー」


と、燈彗が言うと零夜はしくしくと泣き真似をし始めた。燈彗は嘘泣きをしている零夜を無視してどこからか本を取り出し読み進める。そして数分が経ち、無視され痺れを切らせたのか零夜が泣き真似をやめて燈彗に話しかける。


「...にしても、その本何?その本見た感じこの

ジャンル好きじゃないでしょ?恋愛ものなんて」


「まぁ、あまり好きじゃないジャンルだな。

....これは、姉さんがよく話してくれた本だからたまに読んでるんだ。そしたらこの本だけ好きになったんだ」


「え、あのすい姉ぇが?あまり本読む人じゃないのかと思ってた」


「いや、その解釈で間違いない。でもこの本だけは別みたいでな。この本の話を良くしてた」


零夜は少し驚きながら言う。一方、燈彗は優しい笑顔をして本を撫でていた。零夜の言っていた『翠姉ぇ』という人物は翠香すいかという名前だ。翠香は、燈彗の実の姉だ。翠香は燈彗が小1の時に燈彗の家族と零夜の両親と共に亡くなっている。零夜も翠香を姉のように尊敬していた。つまりこの本は燈彗にとって翠香の形見のひとつと言っても過言ではない。


「へぇ、燈彗お兄ちゃんのお姉さんがこの本を?俺も読んでみたい!お願い!読ませて〜!」


「うわ!?りん!?び、びっくりしたぁ」


「え?零夜気づいてなかったのか?燐は最初からいたぞ?」


「え!?」


燐に驚いている零夜を無視し、燐は燈彗の膝の上に座り、猫のようにスリスリしてきた。燐は猫の獣人のため猫らしいことをするのは当たり前だろう。この世界は人間だけではなく色んな種族の者が暮らしている。例えば、人間や獣人、エルフ、鬼、吸血鬼、などの多くの種族がいる。燐は今まで保護した人の中で1番最近に保護をし、今の組織ではの8歳だ。そのため、みんな燐を可愛がっている。結局、燈彗は燐に形見の本を貸した。零夜は心配そうにしていたが何も言わなかった。その後2人は、ご飯の時間になるまでリビングでみんなで楽しく話した。

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