第2話

こうして少し落ち着いたところで燈彗は本題に入ることにした。燈彗は裏社会組織の亜挫魅のヤサに単身で乗り込んできた桃坂 沙紀という人間に聞きたいことがあるのだ。自分の学校に悪影響を及ぼすという大きめな危険性があったとしてもこちらまで来るのだ。相当な訳があると思うのは、想像に固くない。


「それで、桃坂さん。本題に入りましょう。

あなたも俺たちと関わりがあるって知られたら色々とやりずらくなるでしょう?」


「そうですね、お気遣い頂きありがとうございます。本題を初めて頂いて構いません」


「わかりました。では、あなたが来たのはこの

手紙の件であってますか」


「えぇ、あっています。おふたりの知っての通り私の学校は魔法と能力を伸ばすことに特化してる学校です。なので国が管理している組織の手伝いをすることがあります。その時に情報を引き

抜くことも容易です。私はあなた達が組織を

作った理由を知ってますしね。だから私はあなた方の目的に協力したいのです」


桃坂はその後も燈彗と零夜の目的に協力したいといった内容を話し続ける。だが、燈彗も零夜もその言葉を信用することはない。それで裏切られることも裏社会ではよくあるからだ。他の構成員がスパイを送ってくることなど今に始まったことではない。もしそれが師匠の友人だとしても。その度に、2人はそれらを殺してきた。燈彗と零夜は他にも桃坂の提案を信用しない理由がある。それは燈彗達側にのメリットしかないというところだ。と、同時に桃坂にはデメリットしかない。タダより怖いものはないという言葉があるようにメリットしかないものには裏には罠や裏切りがあるものなのだ。桃坂が話し終わるのを待ち、燈彗は桃坂の方のメリットを問う。


「桃坂さん、俺らのメリットは分かりました。

けど...あんたのメリットがいまいち分かんないんですね。バレたらあんたの立場が悪くなるのになんで俺らをわざわざ入れようとする。あんたのメリットはなんだ」


と言い、燈彗は常人なら震えが止まらなくなるくらいの圧を桃坂にぶつけた。零夜は、それは分かるため桃坂の様子を伺っている。燈彗は、内心でこれで桃坂は流石に諦めるだろうと考えていた。だが、諦めるどころか桃坂は笑顔を崩すことすらなかった。


「....私のメリットですか。理解してくれるとは、思いませんが私は教師として子供の味方をしたいだけです。子供を大切に見守るのが大人の役目ですから。それが友達の弟子ならなおさらです」


桃坂はそう言い微笑んだ。燈彗と零夜は桃坂の対応に驚いた。なぜなら、桃坂は2人の師匠と同じことを2人に言っていたためだ。それと同時に2人は一瞬桃坂の顔が2人の師匠の顔に重なって見えた。それを見て燈彗と零夜はアイコンタクトで会話をし、燈彗が考えながら桃坂に問う。


「.....その子供が相当なでも同じこと言えるのか」


「ふふッ..当たり前です。どんな子でも大事な

子供です。.....それで、おふたりは私の学校来てくれますか?」


燈彗は桃坂がこう答えるのを知っていた。2人の師匠にも同じ質問をし、全く同じ答えが返ってきただから。零夜は燈彗の言葉に吹き出した。それにつられたのか桃坂まで笑いだした。そんな様子に燈彗は、ばつが悪そうに零夜の腕を小突いて零夜を黙らせる。そして、燈彗が真剣な顔に戻し桃坂の問いに答える。


「....あなたはいい人だ。師匠のご友人だし、信用出来る。零夜もあなたの学校に行きたがっているしこちらこそお願いをしよう。金は俺が工面するから零夜は通わせて欲しい」


「えぇ、わかったわ。零夜君よろしくね」


「よろしくお願いします、桃坂先生。でもなんで燈彗は通わないの?」


と、零夜は燈彗と学校に通いたそうにしていた。燈彗は、それを気づいていないフリをして零夜が通うための手続きを進めた。桃坂...いや沙紀の口調が軽いものになったのは仕事モードではなくなったらからだろう。今の燈彗、零夜と沙紀の関係は師匠の友人と友達の弟子という関係なのだ。そして、手続きを終え沙紀は帰ろうと口を開く。


「では、私はここで。...あ、連絡先を教えてくれる?零夜くん」


「え?あ、はい」


そして、沙紀は零夜と個人的に連絡先を交換した。連絡先を交換した沙紀は満足そうに微笑み燈彗の方を向き、子供っぽく笑いかけた。


「良かったらあなたも来てくれることを願ってるわ。あなたは本来優しい子だから」


「え、俺が優しい?ご冗談を。本当に優しい奴はこんなことしようとしないですって」


「いいえ、燈彗くんは優しいわよ?貴方は今でも人を大切にしてるわ。だから現にこんなにも多くの人があなたについて来てるの。自信を持って!」


と沙紀は明るくそう言い、燈彗の肩にポンッと優しく手を置き出て行った。その背中は堂々としたもので嬉しいと同時に何かを決心しているようにも思えた。


「じ、自信って..まぁいいか」


「燈彗。僕..いや、少し燈彗も考えたいと思うし

..まだ日にちはあるから今度にするよ」


「あぁ、その方が助かる」


と、零夜はそう言い残し書室を後にした。そして燈彗は休憩がてらソファーでゴロゴロする。

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