第十二部 報告

(何者だ。俺を襲うとは)

陸都りくとは弓をなんとか避けた。

「陸都さん!怪我は?!」

(…できるわけがない。この子を殺すなど、とても…)

拳を作る。風花ふうかを殴ろうとしたが、できなかった。

赤月将軍には、こう言われている。

『陸都。お前は私が知っている中で、一番優秀な忍者だ。清水 風花を殺してこい。そなたなら、わかるであろう?…清水 風花を殺して、脅すのだ。あの忌々しい高本たかもと将軍を。あの者をつぶせ』

(できるわけがない。俺はっ…)

風花が何かを見つけたみたいで、陸都さん、と読んでいる。

(感謝…しろよ…。俺じゃなかっから…今頃、殺されているぞ…)

心の中で、そう呟いた。

「どうした?…これは…。報告に向かおう。任務よりも、優先しなければならない!将軍には、俺が説明するから!」

何を言っているのか、わからなくなってきた。

陸都は赤月軍の者だ。何があっても、この情報を高本将軍に渡すわけにはいかないというのに。

弓矢の先端に付いてあったふみの内容はこうだ。

『若き英雄よ。もし、我が軍の協力を得たいのであれば、影に伝えよ。十万の大軍を送ろう。連絡をしてくれること、信じている。文の主が誰だか、かしこいそなたなら、わかるだろう。待っている』

この文の主は、もしかすると今、とてつもない勢力をつけてきている、ひいらぎ将軍ではないだろうか。

(十万か…。赤月将軍の兵は確か…十三万だったような。どちらにせよ、こちらの敗北は確定だ…)

なのになぜか、伝えてはいけないような気がした。

(大丈夫。伝えるだけ伝えよう…!)

もしも、赤月軍が負けてしまったら、跪いてでもなんでもして、高本軍に入れてもらおう。

愚かなのはわかっているが、そうするしかないと思った。




風花と陸都は、風のような速さで将軍のところに向かった。

屋根の上にいる際、赤月軍の者を見た。

「陸都さん。どうしましょう」

「…赤月軍の者は目が悪い。今のうちに言ってしまえば気づかれない」

赤月軍は人数が多いだけで、優秀な者は少なそうだ。忍者はわからないが。

だが、油断は禁物だ。いつ襲ってくるかわからない。

風花の周辺で、忍者が忍んでいる可能性もある。

(その可能性が一番高い…)

いやな予感が的中した。

「高本軍の者は、ノロマだねぇ」

「ああ。そうだな」

「ひひっ。どいつから締めるぅ〜?」

やはり、だ。赤月将軍は、優秀な者をうしろに隠す癖がある。

(三対二か…。赤月将軍も、やってくれる)

まるで、風花と陸都が来るとわかっていて用意したみたいだ。

「女だろうと、容赦はしない」

「いいね。私も容赦しないよ」

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