<第十一話> 万死回避
こいつ桁外れに強い。
暗殺者に真っ向勝負は向かねぇかなあ。
逃げようにも来た道を戻らなきゃいけない。
背中を向けて逃げるなど不可能だ。
あいつは風の魔術だが、こうもビルに閉ざされた空間じゃ気づくのがギリギリになるな……
「静寂の霧消:逆風」
また新しい魔術……
鼻腔から脳の先まで全神経を研ぎ澄ますも、風は感じなかった。
魔術師の右手は確かに穏の方向を向いている。
しかし一時の静寂が当たりを包む。
詠唱で聞き取った単語そのままの状況となった。
旭でも狙ったか……?
疑念は解消できない。
向かい合った状態で後ろにいる旭を気にかける事など出来はしない。
「……!!!!」
【
後ろからの斬撃
風だった
咄嗟に前に瞬間的に移動するも瞬時に穏は理解した。
しくったな……
「
魔術師は穏の能力を一回見ただけで見抜き、発動後の隙を狙っていた。
穏の移動距離まで予測し、目の前で腕を右に振りかぶった。
「穏!!!!!!!!!!!」
後ろで旭の呼ぶ声が聞こえた。
風の刃が穏の腹部を真っ二つに切り裂いた━━━
ように思われた。
<
[count4]
風の刃は穏の身体に触れる前に、存在事“消滅”した。
「……⁉」
魔術師は明らかな動揺を見せる。
【
魔術師の胸元に銃弾のような速さでハンティングナイフが向かっていた。
旭の能力……?
あいつ怪我なんてどこも……
いや……それよりも
あいつが避けた隙を狩る!!!!!
「我が身を守れ:防風」
魔術師の左手に薄緑の壁ができる。
避けない……か
なら防御魔法を行使している腕━━━
左側に回り込む!
すかさず懐に入り込むと、ナイフを突き刺す、が
魔術師はその瞬間
"まるで砂像のようにあっさりと霧散してしまった。"
「…………あ?」
「穏……!」
後方にいた旭が駆け寄る。
「お前……!怪我は!!!」
「俺の能力忘れたか?<
「あ、あぁ……昔そんな事言ってたな……つってもまさか目の前で見る機会があるなんて思ってねぇから!!とっくに忘れてた」
俺のコア能力<
例え銃弾であろうと、ナイフであってもその攻撃は穏の前では消え去る。
相手の超能力による電撃、引いては魔法ですらも塵一つ残さず消し去る。
これは遠距離攻撃に限ったことではなく、相手が近距離で殴ってきた場合や、剣の攻撃が当たりそうな場合でも能力が致命傷あるいは死に至ると判断した場合
"当たらない"
「とりあえず今のうちにここを出よう。上気をつけろ」
またビルの上にいる場合は厄介だ。
「あ、ああ」
あいつは俺が攻撃するまで間違いなく実体のある人間だった。
それがどうして急に幻になったりするんだ??
戦っていたのが幻だったのか……?
そもそも俺たちはあいつに指1本触れても……
「待て旭」
魔術師について考えていると、拍動補強を使っているのか自分と距離が空いていた。
「
どこに行ったのか宛もない。
しかしまだ能力は4回の余力を残している。
旭さえ狙われなければ、不意打ち程度では態勢は崩れない。
「諦めててくれねぇかな……」
旭が心底疲れきったように呟いていた。
「左に出て走るぞ。俺の4,5歩後ろについてこい」
「分かった」
路地を1歩出ると雲間からの日差しが頬を照らした。
雨の日のアスファルトのこの匂いは嫌いじゃなかった。
右を見れば異質な黒い空間が見える。
俺の能力は暗闇を自由に創り出せるが、出来たら最後無責任にも消すことは出来ない。
光が少しづつ暗闇を薄めていくのを待つのみだ。
左を向けば2,3m先に交差点がある。
人は見えなかった。
それだけでも不気味な雰囲気を覚えるが、不安の種は恐らく人がいないことではないように感じる。
そのさらに先の景色に穏は違和感を覚えた。
横断歩道を渡った先。
自販機の飲料水のデザインがアニメで見るようなぼやけた単色の文字も薄い現実味のないものだった。
よく見れば周りの建物の輪郭もはっきりしない。
不思議な感覚だった。
「穏?どうだ?あいつ居ないか?」
「穏?」
「あ、あぁ……大丈夫だ。行こう」
俺は━━━
《根源解放:蜃楼》
<
[count3]
<
[count2]
<
[count1]
<
[count0]
[Nusquam est]
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます