第38話 付き合ってないのと変わらないんじゃない?

【登場人物紹介】

これまでのあらすじを踏まえた人物紹介です。


真鍋星矢(せいや)…元々つとめていた物流会社をやめ、幼い頃からの夢だった舞台俳優をもう一度志す事に決める。元々、職場が同じだった中野春花と付き合っている。しかし、舞台が忙しく、最近はあまり連絡が取れてない。



多田愛未(まなみ)…あざと系女子。過去に星矢と添い寝する等して星矢を誘惑していたが星矢の告白を断った。それ以降、星矢とは絶縁状態。



中野春花(はるか)…星矢の彼女。星矢の告白を一旦保留にしていたが、その後、無事星矢と結ばれた。しかし、連絡があまり取れていないことに少し寂しさを感じている。



内間君恵(きみえ)…星矢の元上司。星矢に告白して振られた後も星矢を思い続けている。



青木悠馬(ゆうま)…新入社員。春花の後輩。春花に「いつでも相談してください」と言う。



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 星矢の舞台の稽古も佳境に入った。本番が近づいていたため、毎日稽古があった。星矢は今回主役二人の恋を邪魔する役だった。主役二人のうちの女性の方は星矢がずっと憧れていた舞台女優、垣内さやかだった。星矢の暮らしはギリギリのものだったが憧れの女優と一緒に稽古できているという事実は星矢にとって偉大な事だった。春花と会う機会が減っている事すら忘れるほど日々は充実していた。



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〜中野春花の視点〜



 ピロン。春花の元に星矢からラインがきた。春花は急いでチェックするも来週の舞台の時間などの連絡だった。


「はぁ。最近、こういう連絡ばっかだなぁ」


春花は思わず愚痴を呟く。


「それさ、付き合ってないのと変わらないんじゃない?」


春花の呟きに内間さんが口を挟む。


「傍から見たらそうですよね。でも私は応援するって決めたんで」


「それ、何回目?毎回同じ事言ってるよ。そろそろ自分の気持ちに正直になったら?」


春花にはその言葉が痛かった。本当はかなり我慢しているからだ。そして我慢することに疲弊していたからだ。

会いたい。でも「会いたい」と言うと忙しい星矢を困らせてしまう。春花の中でそんな葛藤の気持ちがあった。



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〜真鍋星矢の視点〜


 星矢は稽古の後、さやかさんにサシ飲みに誘われた。さやかさんはフッ軽で後輩をよく飲みに誘う。


「ごめんなさい。今日、彼女と久しぶりに電話しようと思ってるんですよね」


「へぇ!良いじゃん!楽しんで!」


そう言って憧れだった舞台女優とのサシ飲みを断って星矢は家に帰った。



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〜中野春花の視点〜


 春花は家に帰り、布団の上で独り考え事をしていた。星矢との連絡のすれ違い。「寂しい」という自分の正直な気持ち。

そして愛未の「寂しい時は誰かのぬくもりを求める」と言う言葉と内間さんの「そろそろ自分の気持ちに正直になったら?」という言葉。さらに悠馬に「相談乗るんでいつでも電話してください」と言われたことを思い出した。


春花はしばらく考えてから悠馬に『今、電話できる?』と送った。秒で既読がつき、電話することになった。


春花は悠馬に彼氏と連絡がほぼできてなくて寂しいこと、スキンシップ多めが良い春花がしばらく会えてすらいないことを相談した。悠馬はただひたすらに春花の話を聞いて相槌を打った。春花は話を聞いてもらうだけで大分心がスッキリした。



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〜真鍋星矢の視点〜


 星矢は帰宅すると春花に『今日電話できる?久々に稽古早く終わって時間できた!』と送った。しかし、一向に既読がつかない。星矢は二時間待ったが、眠気に耐えられず寝てしまった。



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〜中野春花の視点〜


春花と悠馬は二時間近く電話した。


「やばい。もうこんな時間だ。青木くんと話すの楽しくて時間経つの忘れてた」


「いえいえ。中野先輩が落ち着けたなら良かったです。彼氏さんと上手くいくと良いですね!」


春花は少し満たされた気分になり、電話を切った。電話を切ると星矢からラインがきてたことに気づいた。


………はぁ。タイミング、、………


春花はせっかく久々に電話できる機会を逃したことに落胆した。しかし、後輩と電話していたとは言いづらかったため、『ごめん。仕事長引いちゃって気づかなかった。また今度しよ!』と送った。




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 星矢と春花はそんなふうにすれ違っていたが時間だけが過ぎ、本番の日を迎えた。本番は全7日程。

春花は博と内間さんと同じ最終日に観に来る予定だった。星矢は舞台裏でみんなで写真を撮り、今日から頑張ろうと意気込んだ。



………ここまで本当に稽古稽古稽古と忙しかった。でもそれは今日からの本番を成功させるため。これが終わったら一旦稽古が落ち着くからそしたら春花と久々に会うんだ。それまで頑張るぞ!!………




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〜中野春花の視点〜



 春花は相談したいことがまだあった。彼女ではあるが、二ヶ月近く会ってない、連絡すらほぼ取れてない状況だったため、今後の話し合いをしたかったが本番前は星矢の事も考えてしないと決めていた。しかし、そうしているうちに新しい舞台の出演が決まって話すタイミングを逃す可能性もある。いつ話し合いをするべきかという相談だった。その相談をするため(もしかしたら寂しさを埋めたかっただけかもしれないが)後輩の悠馬と仕事終わりにご飯に行くことになった。

春花は悠馬に相談したことでまたも心が満たされた。




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 そして修羅場は突然にしてやってくる。星矢が本番の一日目を無事に終え、帰り道を歩いていると夜ご飯帰りの春花と悠馬に出くわした。






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ここまで読んでくださり、ありがとうございます!主人公が誰と結ばれるのか等、予想を応援コメントとかに書いてくれるととても嬉しいです。

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