第37話 最近、生活リズムが合わないんですよね
【登場人物紹介】
これまでのあらすじを踏まえた人物紹介です。
真鍋星矢(せいや)…元々つとめていた物流会社をやめ、幼い頃からの夢だった舞台俳優をもう一度志す事に決める。元々、職場が同じだった中野春花と付き合っている。
多田愛未(まなみ)…あざと系女子。過去に星矢と添い寝する等して星矢を誘惑していたが星矢の告白を断った。それ以降、星矢とは絶縁状態。
中野春花(はるか)…星矢の彼女。星矢の告白を一旦保留にしていたが、その後、無事星矢と結ばれた。
春日部博(ひろし)…星矢の元同僚。良き相談相手で定期的に星矢とも飲んでいる。
内間君恵(きみえ)…星矢の元上司。星矢に告白して振られた後も星矢を思い続けている。
町田孝之(たかゆき)…星矢がつとめるバーのバーテンダー。星矢の一つ上。
堤健司(けんじ)…バーのマスター。オネェ。星矢に色々アドバイスくれる人生の先輩敵存在。
今西絢音(あやね)…男の欲望を詰め込んだかのような女性。アパレル店員やりながら一流ユーチューバーになることを目指している。星矢にもう一度舞台俳優を目指すきっかけを与えた存在でもある。
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星矢が物流会社を退社して二年が経過した。星矢と春花の関係はまだ続いている。しかし、周りが結婚を意識し始める年齢となってしまったが、そこの話し合いは全然進んでいなかった。
そんなある日、物流会社に『真鍋星矢』の出演舞台のお知らせが来た。最初の方は元の部署の人の大半が観に行っていたが今では博と内間さんと春花くらいしか観に行く人はいなかった。
「また来たね。星矢の舞台!」
「今回は結構大役らしいですよ。劇場も有名なとこだし稽古も忙しいみたいで。最近はほぼ会えてません」
「ま、また観に行ってやるか。どうせ喜ぶでしょアイツ」
そんな会話が繰り広げられていた。多田愛未は一人でその会話を気まずそうに聞いていた。星矢は一度も愛未の元にだけ出演情報のお知らせをしていなかったからだ。
星矢は日々、稽古に励んでいた。次に出る舞台がミュージカルなのもあり、ダンスのレッスン、歌のレッスン、そして演技のレッスンも繰り広げられていた。日々の稽古に加え、夜はバーテンダーとして働いていた。舞台で稼げるお金はほぼなかったため、生活費はギリギリだった。生活費以上にギリギリだったのが時間だ。ほぼ春花と会う時間も作れないほどに忙しかった。一日一通は必ず返すようにしていたが、それが原因だった。春花も『会いたい』とよく送っていたが星矢の舞台を応援すると決めていたのもあって我慢していた。それもあってか最近は近況報告のみの連絡となり、『会いたい』と送る事もなくなった。
「今の状況、結構やばいですよね?」
春花は会社の飲み会で不満をぶちまけた。不満というより自分たちの関係を危惧しての相談的な意味合いが強かった。
「でも星矢さんの夢、応援するって決めたからなぁ。文句言うべきじゃないですけど。これで上手くやっていけると思いますか?」
春花の相談に社員が一斉に愛未を見た。こういう相談は愛未が専門だと全員が思っていたからだ。
「ちょっと〜。みなさん、何で私を見るんですか〜。私、付き合った人数は多いですけど長く続かないこと多いんで逆にこういう時のアドバイス苦手なんですよ?」
「愛未ならどうする?彼氏が忙しすぎて全然会えなかったら」
「めっちゃ寂しいんで誰かにぬくもりを求めます」
愛未の解答にそこにいた全員が゛こいつに聞くべきじゃなかった〜゛と思った。
結局解決策も出ないまま飲み会が終わってしまった。飲み会終わりに春花はラインをチェックするが『今から会社の飲み会!今日電話できたりするかな?』と飲み会前に送ったメッセージに既読が付いていないのを見て落胆した。
「中野先輩!帰り道一緒ですよね?一緒に帰りません?」
そうやって声をかけてきたのは今年入社したばかりの新入社員、青木悠馬(ゆうま)。学生時代はサッカー部だったコミュ力抜群のバリバリの営業マンタイプの後輩社員だ。帰り道が一緒なこともあり、最近は二人で帰ることが多くなっていた。
「さっき話してたことなんですけど」
電車の中で悠馬が口を開く。
「俺で良かったら相談乗るんで!寂しい時いつでも電話してください!」
笑顔でそう言う悠馬。春花はかなりの硬派だったため、異性と電話とかは仕事連絡以外は一切しない主義だった。
「ありがとう。気持ちは嬉しいけど私、電話とかあんましないタイプなの。彼氏と本当に上手くいかなくなったら別れるつもりではいる。でも今は寂しいだけだし彼氏の夢を応援してるから我慢しなくちゃいけないんだ」
そう語る春花の横顔が凄く寂しそうな事に悠馬は気づいていた。しかし、今の悠馬にはどうすることもできなかった。
星矢はバーに着いて着替えている時に春花からのラインに気づき、『今、稽古終わってバーで仕事。今日は電話できない。ごめん。』と返した。
「電話断っちゃうんだ〜」
後ろから孝之がラインを見てきた。
「本当に忙しくて最近、生活リズムが合わないんですよね。でも大丈夫です。春花は俺の夢を理解してくれてるんで。会う頻度も減ってきてるんですけどそれでも数少ない会える日を大事にしているつもりです!」
自信満々に星矢は答えた。春花は星矢と電話できない日々に寂しさを感じていてたまに家で涙していることを知らずに。
こうして星矢と春花の歯車は少しずつ狂っていった。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございます!主人公が誰と結ばれるのか等、予想を応援コメントとかに書いてくれるととても嬉しいです。
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