第24話 明日も頑張るぞ!

【登場人物紹介】

ここまでのあらすじを踏まえた人物紹介です。


真鍋星矢(せいや)…社会人二年目。優柔不断な性格。少し気になっていた後輩、春花に告白するも保留にされる。いつも何となく過ごしている。



中野春花(はるか)…社会人一年目。ストーカー対策として星矢とは恋人のフリをしていた。星矢の告白は一旦保留にしている。


堤健司(けんじ)…バーのマスター。オネェ。いつも星矢に的確なアドバイスをくれる人生の先輩的存在。


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 いきなりの勧誘に星矢は内心ビックリした。

「え、何で」


「あなた、今の仕事にやりがい感じてないわよね。分かるのよ。感じてないから仕事は何となく済ましてる。それで恋愛に対する比重が大きくなってるんじゃない?だからデートまでの時間が長く感じる。もちろん恋愛することは大事だと思うわよ。振られたらすぐ次の人にアタックするのも大事だと思う。でもそれでクヨクヨ悩んでる時間はもったいないんじゃない?そんなことしてる暇あるなら今までやったことないことに挑戦してみるのもいいと思うの。それで新しい発見があって自分の人生に何が必要で何が必要じゃないかが見えてくるから。そうすることで今の恋愛が上手く行く場合もあるのよ?だからうちで働いてみるのもアリだと思ったのよ」


「え、でも俺、今の仕事そんなすぐに辞めれないですよ?」


「辞めろなんて言ってないわよ。例えば土日だけ入るとかでも大歓迎よ?色んな人と話せるから視野も広がるし色んな価値観を得る事ができるし悪くない話だと思うの。それに就活の時、何となく業界を選んで何となく就職先を決めたから意志が弱いままなんじゃないの?一回自分の人生に何が必要でどんな時に幸せを感じるのか考えてみる時間も必要だと思うわよ?」


 星矢にとってこの誘いは悪いものではなかった。今の仕事に不満があるわけではないが毎日が退屈なくらい同じ事の繰り返しだし本能的に刺激を欲していたのかもしれない。土日のどっちかだけ副業で入るとかならやっていけそうだし新たな価値観を探す目的として入るのは悪くない。それにバーで働くということは少し憧れでもあった。

だからその誘いにすぐ了承した。早速週末から勤務することとなったのだ。


………春花とのデートまで一ヶ月あるし、それまでは新たな自分探しにでも出よう!………


そう決意して星矢はバーでの仕事に対してやる気に満ちていた。


 しかし、現実はそう甘くなかった。教育係として町田孝之(たかゆき)という人物が星矢につき、一から仕事を教えられた。初日は開店前から店の掃除が主だった。バーの内装は凄く綺麗だが厨房は少し汚かった。さらにゴキブリ等も現れた。星矢は飲食店でのバイト経験がなかったため、予想外の汚さに引いていた。そこを掃除しないといけないのも嫌だった。でも耐えた。掃除が終わったら楽しい接客ができると意気込んでいたからだ。

その考えは甘かった。メニューを覚えていない星矢はお客さんからの注文を間違えてしまう事もあった。初日だから注文を取ってそれをマスターに伝える事しかできなかったが、これに配膳やカクテル作り等、業務が増えると考えると気が遠くなりそうだった。お客さんに接客できるような時間になった頃には星矢は疲れ果てていた。しかし、その状況下でお客さんの相談に乗らなければならない。


………きつい。きつすぎる、、………


星矢はヘトヘトになった。


「お疲れ!どうだった?体験入店」


「かなりきついっす、、こんなに厳しいんですねバーテンダーって」


「でもやりがいはあったでしょ?少なくとも家にいるよりは」


「そうですね。でも体力的に週1が限界かもしれません」


「おっ!続ける気なのね」


「はい。慣れるまで大変だと思いますが業務に慣れたら楽しいだろうしお客さんとたくさん話して色んな価値観を磨きたいですから!」


「いいわね。」


マスター健司は笑顔でそう言った。


思えば星矢は今日、春花の事を一度も考えなかった。考えたら考えるほど悩んでしまうので考える暇がないというのは星矢にとって貴重だった。そしてこうした忙しい日々を過ごしていたら自然にデートの日が近づいてくるはずだ。


………よし!明日も頑張るぞ!………


バーテンダーは始めたばかり。しかし、星矢の中で今まで知る事のなかった生活を知る事ができるというワクワクの方が勝っていた。

久しぶりに星矢は希望に満ちた良い顔をしていた。












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ここまで読んでくださり、ありがとうございます!主人公が誰と結ばれるのか等、予想を応援コメントとかに書いてくれるととても嬉しいです。



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