第20話 また恋人のフリできない?

【登場人物紹介】

ここまでのあらすじを踏まえた人物紹介です。




真鍋星矢(せいや)…社会人二年目。優柔不断。愛未と春花のどっちが好きなのか分からず悩んでいたが、健司にアドバイスを貰い、まずは愛未にアプローチすることにした。愛未の家に泊まり、振られてしまった。



多田愛未(まなみ)…社会人一年目。あざと系女子。一応彼氏と別れるまで待つように星矢に頼んだ事があるが本人は忘れているらしい。自分の家で告白してきた星矢を振ったが、その後、星矢と添い寝をした。



中野春花(はるか)…社会人一年目。星矢とはストーカー対策として恋人のフリをしていたが最近はストーカー被害に合わなくなり、その関係も解消された。



春日部博(ひろし)…星矢の良き相談相手。周りから好かれているが愛されキャラ的存在で恋愛関係は疎い。



内間君恵(きみえ)…星矢の上司。飴と鞭が激しく、星矢に厳しい時は厳しい。大阪出張で星矢にいきなり告白するが、すぐに振られてしまった。現在は今まで通り星矢と接している。



堤健司(けんじ)…バーのマスター。オネェ。人生経験が豊富故に星矢にアドバイスをくれる。



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 翌日。何事もなかったかのように星矢と愛未は出勤した。星矢は全然頭の整理が追いついてなかったが。

博に心配されたが、昨日の事を話すわけにもいかなかった。


「真鍋さん!」


いつも通り笑顔で話しかけてくる春花。春花には昨日の事話して楽になりたい!聞いてほしい!そう思ったが愛未が親切心で終電なくした自分を泊めてくれたのだと思うと言うに言えなかった。


結局仕事帰りにバーに行き、健司さんに話を聞いてもらうことにした。星矢は昨日の出来事を全部話した。


「なるほどねぇ〜。なかなか面白いわねその子」


「どこがですか!振り回されただけですよ?」


「そう思ってるならもうその子の事諦めてこの前、言ってたもう一人の子にアタックすればいいんじゃないの?」


「え、」


「だって振り回されたのが嫌なわけでしょ?アナタはその子の全部受け入れるって言っといてその子の男を振り回す性格を受け入れてないじゃない」


「あ、、」


「じゃあ合わなかったって事なんじゃないの?」


的を得ていた。しかし、添い寝したという事実が簡単に諦らめられなくもなっていた。


「もう少しその子と関わってみてさ、やっぱ受け入れられないってなったら諦めればいいじゃない!」


本当に健司さんと話してるとスッキリする。博と話すのとはまた違った良さがあった。

その時、バーに内間さんが来た。


「え、何でアンタいんの?」


「内間さんこそ」


「私、ここの常連なのよ。」


「え、そうだったんですか!」


「ええ。そうよ。このマスターにアンタの事で恋愛相談してたんだから」


………この人、はっきり言うようになったなぁ………


内間さんはカクテルを頼んだ。星矢はマスターの健司さんに今日の話は内間さんに内緒にするように頼んで店を出た。


 星矢はもう少し考えて愛未の事をきっぱり忘れられたら次の恋に進もうと決心した。それは春花かもしれないし違うかもしれない。でも少なくとも今の星矢には考えるだけの時間が必要なのは確かだった。



 そんなことを考えていたのも束の間。会社で定期的に行われる飲み会が開催された。星矢は愛未の事を整理するため、自分からは近づかないようにしていたが愛未は周りに最近、バーで知り合った男の人から告白された話やお持ち帰りされそうになった話をしていた。


「私、今、恋愛はストップしてるんですけどね〜。また私、天然で思わせぶりな事しちゃってたのかな?てへ!」


一言一句そのままの言葉で星矢まで聞こえてきた。


………リアルに「てへ」って言う人いるんだ………


そう思ったのと同時に自分の事も思わせぶりなだけだったのかもしれない、もしかしたら別の場所では自分の事を今みたいに語っているのかもしれないと思うようになったら次第に腹が立ってきてその場から離れたくもなった。


「真鍋さん、大丈夫ですか?」


春花が心配してくれた。いつもと様子が違うのに気づいてくれたみたいだ。こういう気遣いができるところも春花の良い所である。


「うん。大丈夫。普通に話そ!」


星矢は春花と話して気を紛らわせたかったため、春花に話をふった。それに社員旅行の経験から愛未の事で悩んだ時は春花と話すといいと身に沁みていた。


しばらく春花と話していると愛未が嫉妬したかのように近づいてきて耳元で「ねぇ。何か今日冷たくない?」と囁いて膝をこちょこちょされた。他の人には見えないように誘惑するのも愛未の手口だ。


………こいつ、この前振ったばっかなのによくこんな事できるな………


戸惑いと怒りがピークに達し、星矢は「こういうの、やめてくれない?」と真顔で言い、席を離れた。

その日は博や春花と同じ卓で話していて愛未とは意図的に話さなかった。




 翌日。仕事に行ったら周りがソワソワしていた。星矢は気になったため、春花に何があったか聞いてみた。

「えーと。知らない方がいいと思いますよ?」


「ごめん。そう言われると余計気になっちゃう。教えて」


「星矢さんから告白されたーって愛未が数人に自慢みたいに話してたんですよ。それが広まってて」


………はぁ?………


星矢は驚きと同時に怒りも湧いてきた。


「私はその話が嘘だろうが本当だろうが真鍋さんは良い先輩だし愛未は仲良い同期なんで何とも思わないですよ。プライベートの事ですし。でも前に真鍋さんから色々話を聞いてたので愛未がまた誘惑したのかなーとは勘ぐっちゃいましたけど」


………てかその話が春花に伝わるのはまずい。春花にアタックできなくなるやんけ。………


星矢にとってそっちの方が大事だった。本当に優柔不断でチョロい男だ。


「また何かあるならいつでも話聞きますよ?」


そう言って立ち去ろうとする春花の腕を掴んで星矢は言った。


「あのさ、また恋人のフリできない?」









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ここまで読んでくださり、ありがとうございます!主人公が誰と結ばれるのか等、予想を応援コメントとかに書いてくれるととても嬉しいです。


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