第19話 チンパンジー
カノンは別れを決心してあきらに伝えるためにあきらの家に来た。
「ごめ」
あきらがそう言いかけるとカノンは遮った。
「謝らないで。悲しくなるから。もうこれ以上、私のこと傷付けないで」
「うん、、」
あきらは何と返したらいいか分からなかった。
「このまま連絡手段経って放置するってのも考えたんだけどさ、やっぱり最後くらい直接言おうって思ったの。私、あきらさんと別れることにしたから。もう決めてるの。提案じゃなくて決定!別れるから!私たち。」
「うん。俺もそっちの方がいいと思ってた」
「だってあきらさん最低だし浮気症だよね?ぶっちゃけ。そんな人と付き合ってても今後悲しい思いするだけじゃん?そう思ったらもう好きって気持ちがなくなったんだよね〜」
無理に笑顔を作りながらカノンは話す。今の笑顔が作り物だということくらい誰でも分かるくらい不自然な笑顔で。
「だから謝らないでね。私があきらさんに飽きて振ることにしたんだから」
そう言うとカノンはすぐに走り去った。あきらは返す言葉が全く出てこなかった。
カノンはしばらく走ると泣き出した。あきらと話してる間、無理に涙を我慢していたからか、大粒の涙がボロボロと出てきた。
(本当はもっと話したかった。話し合いして解決したかったよ、、 でもできなかった。それをすると余計悲しくなっちゃうから。
ああ、好きになんかならなければ良かったな。せめて次付き合う人には同じ思いをさせないでね。次付き合う人にはちゃんと幸せにしてあげてね)
カノンはそんなことを考えながら泣き続けた。
______________________
【山神あきらの視点】
あきらは部屋で独りで何度もカノンに「ごめん」と言っていた。
(恋をすると人は馬鹿になる、脳みそがチンパンジー以下となるとよく言われているが本当にそうだ。俺、チンパンジーになってたよ。それくらいナツミが忘れられなかったんだ。誰かを傷つけちゃいけない、浮気しちゃいけないって誰でも分かる当たり前の事なのに。チンパンジーの状態ではわからなかった。いや、今もチンパンジーだ。今でもナツミが好きだ。カノンを傷付けたことよりナツミに振られた事を後悔してるくらい、今でも俺はチンパンジーだ。)
______________________
春。別れの季節。
そんなシーズンに山神あきらという人間は二つの失恋をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます