第18話 別れの季節
【中村カノンの視点】
カノンは公園で泣いていた。あきらからの返信はなかったがあきらの気持ちが分かったからだ。いや、気にしないようにしてただけで本当はずっと前から気付いていたのだ。傷付きたくないから考えないようにしていた。それが目に見える形で溢れてきたのだ。
公園で泣いているとバイト先の先輩が通りかかる。
カノンはあきらの評価が下がらないように最初は頑なに話さなかったが先輩が何度も何度もカノンをなだめたため、ようやく話し始めた。
先輩は怒った。今すぐにあきらを殴りたいと言っていた。カノンはあきらを責めないで欲しいと頼んだ。
「何で?あきらに傷つけられたんでしょ?怒って当然じゃん」
「私がもっとあきらを好きにさせていれば。あきらの拠り所になってあげてれば。違ったと思うんです。だから私の責任でもあるので」
「なんでそんな良い子なの?自分ばっか責めても病んじゃうだけだよ?良い子でいるのは大事だけど全部自分のせいだと思うのはダメだよ。時には相手に対して怒ったり意見を言うことも大事だと思うよ!」
先輩はそう言うとカノンの肩をたたいて去った。
カノンはしばらく公園で泣いた後、あきらに「話があるから会いたい」とラインした。
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【山神あきらの視点】
ナツミに拒絶され、茫然自失となったあきらはネットカフェで寝ていた。家に帰るとカノンの約束を無断で放棄した事を責められてる気がして帰れなかった。もちろんカノンからのラインも無視していた。
バイト先でカノンに会うのも気まずかったため、バイト先の店長に辞めると連絡した。
そのまま1ヶ月が経過し、卒業式となった。あきらは卒業式に出る気力がなく式には出なかったが、就職も決まっていたし単位も全て取っていたため形式上、卒業扱いとなった。
そして卒業式から数日が経過した頃。家のチャイムが鳴った。
空けるとそこにはカノンがいた。ずっとラインを無視していたため、凄く気まずかった。目線すら合わせないあきらにカノンは言った。
「今日はちゃんと私の気持ちを伝えに来たの。今日は聞いてもらうからね。最後なんだから」
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