第12話 心は嘘をつけない

【山神あきらの視点】

カノンと付き合って半年が経過した。この前、半年記念を一緒に祝ったばかりだし、この半年間で色んな事を一緒に楽しんだ。

もちろん身体も何度も重ねた。もうナツミの事を思い出すことはない。思い出の物も処分したし、カノンといて心から楽しいと思えるようになった。


…はずだった、、


それでもたまにナツミの夢を見てしまうのだ。あのまま付き合っていた世界線、復縁した世界線、ナツミが俺のことを好きになってくれた世界線、、


そんなifな世界の夢を見てしまう。最近はその夢の頻度も多くなって寝るのが怖いと思う自分がいた。


(何で。俺、今はカノンの事が好きなのに。ナツミに未練なんてないのに。たった二ヶ月付き合っただけの元カノ。セックスすらしてない元カノ。元カノと読んでいいのか分からないくらい何もしてない関係だったのに)


そんな自分が嫌だった。今が充実してるはずなのに過去にとらわれてる自分が嫌だった。だから必死にカノンの事を今以上に好きになろうとした。必死に「好き」と伝え続けた。


(もしかしてナツミもこんな感じだったのかな)


何故だか分からない。でもふとこんな事を考えてしまった。


(やっぱり俺とナツミは似ているのかもしれない、、)


そう思ってしまったら現実世界でもナツミと会いたくなってしまった。別れてからは一度も会ってない。サークルは引退したし、4年生だから授業もほとんどなかったからだ。


………会いたい………


会ったらまた好きになってしまう。向こうは俺の事、好きになってくれなかったのに。なのに何で。今が充実してるはずなのに何で。


そんなことを考えていたらカノンが家に来る時間が近づいてきた。


………来ないでくれ、、会いたくない………


そう思ってしまった。


俺はあの頃のナツミと本当に似ている。

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