第10話 次の恋へ

【山神あきらの視点】

あきらは家に帰り、ひたすらに泣いた。もちろん別れるつもりだったし、それを覚悟していた。なのに泣いた。心と身体は必ずしも同じ動きをするとは限らない。心では別れると決めていたのに身体は別れたくないと必死に思っていたのだろう。

ついさっき、別れたらカノンと付き合うと約束したばかりなのに…

身体は正直でいつの間にかナツミとのツーショや思い出の物を見ていた。

そして泣く。ずっと泣いてる。消したくても消せないツーショ。捨てたくても捨てれないお揃いで買った物。破りたくても破れないプリクラ。

何でだろう。自分の事を好きになってくれず、むしろ会うことを拒んできた相手なのに。自分の事を大切にしてくれるはずの後輩がいるのに。

ナツミとはもう別れた。今は元カノ。だから忘れなければいけないのに。心ではずっと分かっていた。でも身体が言うことを聞かない。

そして今でも見てしまう元カノ、ナツミのSNS。そこには新しい投稿がされていた。


゛彼氏と別れました。良い人だったけど好きになれなかった、、ごめんね。゛


その投稿の後に楽しそうに独り身を満喫している様子も投稿されていた。


(ああ、、引きずってるのは俺だけだ。むしろ向こうは俺と別れてせいせいしているまである。)


そう思うと余計落ち込んだ。それと同時に反骨心も出てきた。向こうがその気ならこっちも別れて何も気にしてない素振りを見せないと。ナツミと別れても充実しているんだって所をアピールしないと。


そう思ってカノンに連絡し、プリクラやお揃いの物を処分してもらうことにした。自分で処分できないなら他の人にやってもらうしかない。俺は前に進まなければならない。そう決心していた。


「カノン!こんな時に言うの、すっごい自分勝手だと思うけどさ、俺と付き合ってください。

俺、ナツミと付き合ってみて分かった。自分のこと好きになってくれない相手より自分のこと好きな相手を幸せにしたいって。

だから!お願いします!」


カノンは喜びに溢れた顔をしていた。


「もちろんです!こちらこそよろしくお願いします」


そう言って俺とカノンは手を握りあった。


こうやって新しい人と付き合っていけばいつか絶対忘れられる。それにカノンの事なら本当に愛することができるだろう。そんな気がしていた。

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