第40話 頭上から腕

直樹なおき、どっちを通る?」

 と亮平りょうへいが尋ねた。


「スマホを探しにを向こうを通りたいが、起伏が激しくて俺の脚が持つか分からない」


「じゃあ、俺がそっちを通る。スマホを見つけたら拾って……、そうだな……」


「とりあえずスマホを持ったまま山を下りてくれ。バス通りに出られたら、山荘へ向かう私道に投げ入れてくれないか? 間違っても道に足を踏み入れるなよ。また出られなくなるから」


「じゃあ、タオルにでも包んで投げ入れる。それなら、スマホが壊れる心配もないだろ?」


 亮平はそう言うと、自身のバッグからフェイスタオルを取り出し、獣道へと向かった。



『にぃぃぃぃぃっ! フフ、フフフッ』



「よし、行くぞ!」

 亮平が駆け出したのを確認すると、直樹もまた私道を全力疾走した。


 あの子には二度出くわしている。

 どこからどう現れようと心の準備はできている。

 などと意気込んではみたものの、突如、直樹の両肩から二本の白い腕が現れた時には、やはり叫び声を上げずにはいられなかった。


「どこから出てきてるんだよっ!」


 直樹の苛立ちとは裏腹に、あの子は「ひゃあ、ひゃあ」と奇怪な笑い声を上げ、ふわりと地面に降り立つ。



『みぃつけた』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る