天童君には秘密がある 1〈KAC2024〉
ミコト楚良
いろいろあって、敵同士のふたりは閉じ込められてしまったの回
この地下深くの
「全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れめ!」
長い重めの前髪、肩までの黒髪、その涙袋のある涼やかな目。グレーのセーラー襟の制服の少女は怒りのあまり、右手で握りしめた八寸(約24センチ)の
「仲間である、わたしを裏切るなんて! 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れめ!」
「ごめん。今、言うところじゃないってわかってるんだけど、オレたちを陥れた、君の仲間のコードネームが長すぎるんだけど」
天童は黙っていることができなかった。
「長いほど、セキュリティがあがるからって」
組織の決まりらしい。
「
いけねぇ。こうしているうちにも時間が過ぎる。
オレたちの足元に、ひたひたと地下水が流れ込んでいた。
「三分で、この黒曜石の牢獄に水が溜まるんだっけ?」と、オレ。
「三分で、空気がなくなるんじゃなかった⁉」と、
彼女は、——重め前髪ボブ少女の名は
「どっちだよ! よく聞いとけよ!」
「わたしは閉じ込められる予定なんてなかったから! 知らないもん!」
あー。逆切れだよ。これだから女子は。
そのとき、オレの携帯が鳴った。
『もしもしー。
見た目、牛若丸のコスプレーヤーにまちがわれる、オレの参謀!
「携帯、通じるんだ! 助かった!」
それを見ていた
「もしもし、パパ?
いちいち、コードネーム言わなきゃいけないんかい。
「パパがシステムを止める解除キーを設定したんだよね。教えて。パパ。うん、うん——」
そういえば、天井には、いろは歌の
「そこか!」
牢獄はミニマムな作りで、何一つ設備が置いていなかった。
「椅子くらい置いとけよ!」
「うっさい!
時間がない。オレは姿勢を低くした。
「よたってんじゃない!」
叱責された。
「い、と、う、つ、く、し。ま、な。お、ん、り、い、わ、ん。き、み、の、ひ、と、み、に、こ、い、し、て、る——」
「
結局、
ぬれた制服で歩いて学校寮に帰ろうとすると、
「うちの車で送る」
黒塗りのクラシックカーが、いつの間にか留まっていた。
「いやー、座席ぬらしたら悪いし」
「わたしも、びしょぬれなんだし!」
怒っているみたいだった。巻き込んで悪かったな。いや、巻き込まれたの、オレだったかな。
「今日は、休戦だよ。みんな、わかってるよ。
「いやー、やめとく」
オレは断った。
「あ。だけど、バスタオルは貸して? 洗って返す」
そう言って、その場から背を向けて、急いで離れた。
「
深町が追っかけてきて、いやな笑い方をした。
「敵、だからな」
そこは、線引きしなくてはいけないところだ。
たとえ、
〈
天童君には秘密がある 1〈KAC2024〉 ミコト楚良 @mm_sora_mm
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