【KAC20241】ゆちか、さよならの三分前。

へなちょこ

「バレバレだよ。ゆちか、最近廊下とかでよくキョロキョロしてる。門倉君探してない？　それ。で、門倉君と話してると思ったら、バイバイした後に背中をじっと見てるの気づいてないの？」

「うっそ！」

「ホント」

　うわー！

　うわー！

　何だそりゃ！

「ゆちか、門倉君の事好き？」

「……好きかどうかはわかんね。でも、ショックはショックかも」

「それ、本人に言った？」

「言えねえよ。ただの友達だし」

　それ言って、何になんだよ。

「何で？　そんなの、友達だって言うでしょ。私はもしゆちかが転校するってなったら泣くよ。寂しいって、やだって言うよ。駄々こねるよ」

「う」

「ゆちかにとって門倉君がどのポジションにいるのかはわからないけどさ。今のまま、ゆちかが気持ちを吐き出さないまま門倉君が転校したら、後悔しそう。だから、気合いを入れなおしたら？」

　さすが、あたしらの御意見番。

　こりゃアカン、本気も本気だ。

　とはいえ。

「なあ。今日じゃなくて今度じゃダメか？」

　心と体の準備がだな。

「ああ、別にいいんじゃない？」

「そっか、それなら助かる」

　涙目で鼻をかんでる店長さんには悪いけどな。

　てか泣くな。

　頷くな！

　何か恥ずかしいだろ！

「店長さん、今日はすみませんでした」

「さーせんっしたあ！」

「気にしないでいいですよ。準備万端で来てくださいね」

　店長さん、ガチいい人だ。

　よし、今度来る時は絶対頑張ったる……！」

「さ、帰るよ？　ほら」

　んあ？

　何だ？

「何なん、この手」

「へなちょこゆちかは私が手を繋いであげる」

「店長さんっ！　3倍ラーメンいっちょくれやあああ！」

「あ、私も私もー」

「3倍麺、２つ頂きましたー！」

「「「「応っ！」」」