何でバレた?
「らっしゃい! お二人様、こちらへどーぞ!」
紺の頭巾のにこやかなおっちゃんの声につられて、カウンターの奥へと進んでいく。
●
「そうだねえ。学生さん達なら食べたら無料までが多いかな。それで、麺3倍を20分で食べれなかったら料金はもちろん頂くし、作り始めてからやっぱりやめますっていうのも無しです。考え直すなら今のうちだよ」
奥のテーブル席に移動させられた。
撮影許可をちゃっかりと貰ってマシマシメニューの説明を店長さんから聞く佳奈に話しかける。
「な、なあ。麵3倍とか、食べきれる自信がないんだけど」
「あれ? いつもいっぱい食べてるでしょ? 元気出るよ」
「牛丼メガのマシマシをお替りするようなもんだっての。だいいち、佳奈にゃ絶対無理だろ」
「え? 大丈夫だよ。だって、ほら」
佳奈の指さした方向を追っていくと、壁に写真があった。写真の中では、苦笑いをした制服姿の女の子がガッツポーズをしている。
でも、佳奈じゃない。女の子の横のがっちりした店員さんと同じような体格だ。それにうちの制服でもない。
で、何?
「同じ学生だよ?」
おい。
「お前、それガチで言ってんの……?」
「うん」
「いやいやいや、無理無理無理! 店には悪いけど、今日は帰らせてもらおうぜ?」
「うちは大丈夫ですよ、無謀なチャレンジはしてほしくないですし。ちょっと語っちゃいますけど、食事って一日に五回も十回もできないじゃないですか。だから、食べる時は楽しく、嬉しくあってほしい」
いいこと言うなあ、店長さん。
「な。店長さんもこう言ってくれてんだし……」
「店長さん、もう一つ聞いていいですか?」
「あたしの話も聞いてくれえ~……」
「あ、はい。何なりと」
「みなさんはどんな時にチャレンジに来られるんですか?」
どんな時?
腹いっぱい食いたいからじゃねえの?
「あ~、なるほどですね。チャレンジの意味合いでは、例えば、普段と違うワクワク感を楽しみにしつつ、気合いを入れたい、絶対に頑張りたい事を控えてる方も多いですね。受験や試験とか」
「ほうほう、なるほどなるほど」
「そういったみなさまが、うちで完食してしばらくした後に『試験、受かりましたよ!』『完食したから頑張れました』と顔を出してくれたりすると私達も嬉しいですよ。何かしらのお役に立てたんだなあって」
へえ。
そういうのもあるんだ。
「で」
ん?
「ゆちか、タメ息つくくらい悩んでるんでしょ? 気合い、入れなくっていいの? いっぱい食べて元気出して、気合い入れなおしなよ」
「んー……でも、あたしの元気のない原因は、気合い必要かなあ」
「あのさ。ゆちかが元気ないのって、門倉君の転校の事?」
「げ。あ、いや……そんなこたあ……ねえよ?」
何でバレた?
あたし、寝言でも言ったんか?
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