何でバレた?

「らっしゃい! お二人様、こちらへどーぞ!」


 紺の頭巾のにこやかなおっちゃんの声につられて、カウンターの奥へと進んでいく。



「そうだねえ。学生さん達なら食べたら無料までが多いかな。それで、麺3倍を20分で食べれなかったら料金はもちろん頂くし、作り始めてからやっぱりやめますっていうのも無しです。考え直すなら今のうちだよ」


 奥のテーブル席に移動させられた。


 撮影許可をちゃっかりと貰ってマシマシメニューの説明を店長さんから聞く佳奈に話しかける。


「な、なあ。麵3倍とか、食べきれる自信がないんだけど」

「あれ? いつもいっぱい食べてるでしょ? 元気出るよ」

「牛丼メガのマシマシをお替りするようなもんだっての。だいいち、佳奈にゃ絶対無理だろ」

「え? 大丈夫だよ。だって、ほら」


 佳奈の指さした方向を追っていくと、壁に写真があった。写真の中では、苦笑いをした制服姿の女の子がガッツポーズをしている。


 でも、佳奈じゃない。女の子の横のがっちりした店員さんと同じような体格だ。それにうちの制服でもない。


 で、何?


「同じ学生だよ?」


 おい。 


「お前、それガチで言ってんの……?」

「うん」

「いやいやいや、無理無理無理! 店には悪いけど、今日は帰らせてもらおうぜ?」

「うちは大丈夫ですよ、無謀なチャレンジはしてほしくないですし。ちょっと語っちゃいますけど、食事って一日に五回も十回もできないじゃないですか。だから、食べる時は楽しく、嬉しくあってほしい」


 いいこと言うなあ、店長さん。


「な。店長さんもこう言ってくれてんだし……」

「店長さん、もう一つ聞いていいですか?」

「あたしの話も聞いてくれえ~……」

「あ、はい。何なりと」

「みなさんはどんな時にチャレンジに来られるんですか?」


 どんな時?

 腹いっぱい食いたいからじゃねえの?


「あ~、なるほどですね。チャレンジの意味合いでは、例えば、普段と違うワクワク感を楽しみにしつつ、気合いを入れたい、絶対に頑張りたい事を控えてる方も多いですね。受験や試験とか」

「ほうほう、なるほどなるほど」

「そういったみなさまが、うちで完食してしばらくした後に『試験、受かりましたよ!』『完食したから頑張れました』と顔を出してくれたりすると私達も嬉しいですよ。何かしらのお役に立てたんだなあって」


 へえ。

 そういうのもあるんだ。


「で」


 ん?


「ゆちか、タメ息つくくらい悩んでるんでしょ? 気合い、入れなくっていいの? いっぱい食べて元気出して、気合い入れなおしなよ」

「んー……でも、あたしの元気のない原因は、気合い必要かなあ」

「あのさ。ゆちかが元気ないのって、門倉君の転校の事?」

「げ。あ、いや……そんなこたあ……ねえよ?」


 何でバレた?

 あたし、寝言でも言ったんか?


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