第16話[レベルと装備とステ調整]

 ダンジョンの攻略が終わって数日後。俺がMYO(みょー)の世界に来てから数ヶ月が経った。現在のレベルカンスト最大値は55レベルで一旦止まるそうだ。そこからはスキルツリーのポイントが貰えるEXPゲージだけが別であがっていくということらしい。

 つまり、力や敏捷のステータスは55レベルまでの幅分でしか基本的に調整できない事になる。物凄く強い武器がドロップしたとしても、装備できる人がいるかどうかはわからないということだ。

 俺のステータスと装備も随分揃い、相変わらずの体力バカ振りダメージ反射装備は突き詰めつつある。自慢のインベントリは、72枠まで増えていた。


・ササガワ LV42 ナイト 

・HP5540 MP104

・近接攻撃力287 物理防御力452 魔法抵抗力367(他省略)

・特記事項[ダメージ反射64%][オートヒーリング9%/3秒]

・スキル [所持重量限界上昇]

     [インベントリ最大所持量上昇]

     [インベントリ最大所持量上昇2]


・[EX][ダガー][+3][クリティカルダメージ発生確率5%増加]

・[EX][レザーバックラー][+1][ダメージ反射8%]

・[EX][鉄の兜][+1][ダメージ反射8%]

・[EX][鉄の鎧][+0][ダメージ反射8%]

・[EX][鉄のガーダー][+0][ダメージ反射8%]

・[EX][鉄のグラブ][+2][ダメージ反射8%]

・[EX][鉄のブーツ][+1][ダメージ反射8%]

・[稲妻のネックレス][稲妻属性ダメージ上昇3][オートヒーリング3%]

・[EX][水のリング][ダメージ反射8%][水属性ダメージ上昇2][オートヒーリング3%]

・[EX][風のリング][ダメージ反射8%][風属性ダメージ上昇3][オートヒーリング3%]

 

 相変わらずの全身甲冑装備である。

 エクセレント装備のオプションは、レベルの高い鍛治師がいれば確率で2つ目のオプションを足す事ができるそうだ。ただし高級素材を複数消費するのと、成功確率が低い事が問題だ。この素材は今のところ稀に狩りでドロップしたという話程度しか聞かない。

 とはいえ、全身にダメージ反射と、[HP最大値上昇]をつけることができれば、俺の体力お化けとしての安定性は増すだろう。


 現在最も優先の課題は、どうやって火力のほうを伸ばすかだ。

 力や敏捷に振って強い装備をつけるのはもはや諦めているが、低いステータスで持てる中で何か今よりもダメージが入る方法を探している。

 スウのように、毒などを相手に確立で与えて持続ダメージを与えるなどが現実的だろうか。武器に属性をつけるのも、鍛治のスキルをあげた人に依頼すれば可能だろう。問題は素材と、そもそも何をつけるかである。


 悩んでいた俺は、酒場でとある人物と待ち合わせをしていた。

「おひさ〜ですね、ササガワさん」

 エルフのようなビジュアルをしたアーチャー、むちょである。

 彼女とはゲーム駆け出しの時に一回パーティーを組んだっきりだったが、送ったメッセージをきっかけにまた会う事ができた。

「メッセージ返したのにササガワさん返してこないんですもん、一体何かと思いましたよ?」

「すまない、ダンジョンとかに夢中になってたんだ」

 むちょはギルドに入ったようだ。

・むちょ[放送完全版]

 と表記されている。一体なんのネタギルドなんだろう。


「むちょさん、あれからも突っ走ってプレイしてたんです? 今何レベルですか?」

「カンストしましたよ! 55です」

 ……まじかよ! 思わず口があんぐりと開いていた。

「レベルあげだけならいいですけどね、装備が揃ってないんですよね……ドロップ品をベースにするか、製作品をベースにするかで迷いますし、付くオプションも違うみたいで……」

 相変わらず廃人感が抜けないむちょさんに好感だ。

「そうそう、装備の相談をしたくてむちょさんを呼んだんですよ」

「私? アドバイスできるほどかなあ〜?」

 この人は現在のMYOの仕様をかなり細かく把握していると思う。出てくる一つ一つの単語や要素が他の人よりも具体的に出てくるからだ。



「――ってな感じで悩んでるんですよ」

 むちょは俺の相談をまじめに聞いて考えてくれる様子だった。


「そうですねーまず右手の[EX][ダガー]をもっと軽く、早く振れる武器に変えるべきですかね。リーチは短くなりますけど[ダガーナイフ]とか、[クリスナイフ]とか。[EX]が手に入るなら、攻撃速度が上がるオプションが良いと思います」


「なるほど……それに属性攻撃を乗せて、持続ダメージを付与する確立を攻撃回数で稼ぐってところですか?」


「その通りです!」

 

 確かに理にかなっている。例えば確立で毒を付与した場合、そこから数秒間は毒状態が続くわけだから、とにかく何回も攻撃して毒状態を発生させ続ける事が大事だ。

「ちなみに属性は[EX]のオプションをつけるんですよね? 何の属性がいいんでしょう……やはり[毒付与率上昇]……?」

 むちょは間髪入れずに返答してくる。

「おそらく炎の着火ダメージか、雷系の感電のどちらかですね。今のところ、その二つだけはボス級のモンスターにも付与できますし、PVPでの付与率も高いそうですから」


 時々毒状態にならないネームドモンスターがいたが、やはりバグではなかったようだ。 


「着火か感電ですか。持続ダメージの威力は低いけれど安定して付与されるなら良さそうですね。それにPVPか……考えた事もなかったな。このゲームにプレイヤー同士のバトルなんて存在していたんですね」


「今は遊びの決闘モードしか無いですけどね。インターフェースから相手に申請すればできますよ。今後PVPコンテンツも出てくるみたいでしたけど、先のアップデートのロードマップがそろそろ発表されてほしいですね……」


「確かに。オープンβ終了までのアップデート情報は随時更新されるって言ってたしね」

 プレイヤーの攻撃で自分のダメージ反射装備がどの程度通じるのか、試してみたくはあるな……。


「とりあえず優先したほうがいいやる事ってあるかな?」

「レベルあげですね! さっさとカンストしちゃいましょう!」


 なるほど。やはりレベルか。


 むちょと装備の話や攻略の情報交換などで数時間盛り上がったあと、必要な物や情報を纏めてから俺は日常の狩りに戻っていった。


 そこから数日、各地を探索しつつレベルカンスト最大値まで日々狩りを続けたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る