第14話[ソロが3人揃えばパーティ]

 パーティー情報のインターフェースを開くとパーティーの情報が少しではあるが見る事ができる。そままちは謎の筒のような武器を背負っているが、どうやらアーチャーであることは間違いないようだ。


 ・ササガワ/ナイト/36レベル

 ・スウ/ウィザード/39レベル

 ・そままち/アーチャー/34レベル


 酒場でパーティーを組んだ俺たちは現在、フラリム北草原でダメージ反射と毒攻撃で敵を倒す地味な手法を紹介している所だ。今までの戦い方に加えてそままちのボウガンのような武器の性能をどう連携させるかを考える必要があったからだ。


「俺がヘイトを引きながら相手から受けたダメージをオートで反射。敵は攻撃すればするほど自滅する。それに加えて毒などの持続攻撃を入れていくんだ」

 そままちは興味があるのかないのか、眠たそうな目をして俺たちの持続ダメージで削れていく敵のHPを眺めていた。


「じゃーそままちさん、そこの『ウェアウルフ』に攻撃してみてくれるかな」

「あい」

 [ウェアウルフ]は二足歩行の狼と人間の半分ずつのようなビジュアルをしており、他のモンスターと同じようにウロウロしている。距離にして30m程度は離れているだろうか。こちらを感知してくる距離では無い。

 そままちは筒のような武器をウェアウルフに向けてトリガーを引く。


『ズドーン……』


 爆音と共に草原のウェアウルフが吹き飛ぶ。

 彼女のボウガン……正確に言えば『大砲』は結論から言えば制作品で、鍛冶屋系のスキルツリーを振っていくと現れたそうだ。他にもナイトの斧や短刀、槍なんてものもあるらしい。

 アイテム情報を見せてもらうと、その大砲は『イカロス』という武器名だった。なんだかかっこいい名前がついているな。俺の『ダガー』とは大違いだ。製作品とドロップ品で名称の雰囲気が違うみたいだな。


 大砲は魔法ほどではないが物理範囲攻撃で、連射速度は遅めだが一撃が重く、被弾した敵がノックバックするようだ。格下の敵なら自身が移動せず楽に狩っていけるだろうな。

 パーティーに参戦してくれることで、範囲攻撃不足だった俺たちにとってはまとめて殲滅する手段が足されるのは大きい存在だ。


 大砲を重そうに持ってのろのろと歩くそままちを見てスウがぼやく。

「あなた弓職なのに足が遅そうね、敏捷に振り足りてないんじゃ?」

 はい、お前が言うな。

 知能に振るところを敏捷に振ってるウィザードが言えた事じゃあない。そして体力バカの俺も言えた事じゃないが。


「スウさんや、君も言えたほど真っ当なステータスの振り方じゃないだろ」

「私は回避と連続詠唱の為に振ってるだけなの! ソロ向けの特殊仕様にしたいのよ!」

 ま、回避はソロに向いてるのは否定しないがね。俺もソロ活動する前提で体力を鬼振りしているわけだし……何だかんだずっとパーティーを組んでいるが。


 言い合いをしている俺たちをそままちは表情こそ変えなかったが、少し楽しそうに見ているように感じた。


「ササガワもスウも、よくそんな変な戦い方でよくやってこれたね」

「そのままそっくり言葉を返すよ」



 一通りお互いのスキルを理解し合った後、二度目のダンジョン攻略にフラリムの北側へ向かって3人で歩いている。もうすぐ入り口が見えてくるはずだ。

「それで? ササガワは何か試したい作戦とかはあるの?」

「それなんだが……」


 俺には思っていた事があった。


「これは非常に攻略をつまらなくするかもしれないが……」

 スウとそままちが不思議そうな顔をする。

「メタ読み、って奴だ。このMYOは昔のゲームをベースにAIが再構築してるのは知ってるだろ」

「当たり前よ。それが話題になってる部分だって公式が公言してたじゃない。何が言いたいの?」

 呆れた顔をしてスウが言う。俺は一瞬答えるのをためらったが、黙っていても仕方無いのではっきり言う事にした。


「俺はあのダンジョンとボスを見た事がある」

 え? と言った顔をする二人を前にそのまま続ける。

「最初に入った時にデジャヴを感じたんだ。いつしかのゲームに同じ入り口のものがあった。岩が崩れ落ちてその先に広場がある。そして雷を使う魔法使い。3つ現れる岩は3人パーティーじゃないと突破できないようにしてあるギミックだ、そしてその先は3人同時に……」

「待って……!」

 スウがちょっと待てと言った面持ちで俺の鎧を掴む。

「も、もちろん完全に同じかどうかはわからない。わからないけど、似てるんだ」


 やっぱりネタバレみたいになるのはよく無いか。ゲームを楽しむ者として最低の行為と言う人もいるしな。俺もそう思ってやってきたのに。

 でも、なんだか知ってる事を喋りたくなってしまったのだ。人が懐かしい思い出を意味もなく夢中に話してしまうように、昔のゲームの攻略方法は俺にとっての青春の思い出だ。

「あんた知ってたなら早く言いなさいよ! それならすぐに3人パーティーを揃えたわ!」

 スウが俺の鎧をガタガタ揺らす。

「……怒ってないのか?」

「怒ってるわよ! 情報を黙っておくなんてササガワはケチね!」


 俺が怒ってるか聞いたのはそっちじゃないんだが……スウはネタバレ歓迎のほうだったようだ。そういや以前も攻略サイトを頭に入れたとか言ってたっけ……。

「そままちさんもすまん。つい喋りすぎた」

「私は攻略できればいい。アイテムを手に入れる方が大事」

 何だぁこの子ら。温かいなぁ〜……いいや、ある意味冷たいか?


「結局3人揃ったしな。じゃあ、俺の『思い出の攻略情報』にしばし付き合ってくれ」


 ダンジョン入り口の青い渦にアクセスして、入場をタップした。

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