-postlude-
「ただいま、お父様」
ダリアはぎゅっと
「
褒めて褒めて、と無邪気にねだるダリアを館長は「よくできました」と穏やかな声で讃えた。
「対となる絵は、まだ時期じゃないから残して来たわ。これからもっとあの子は愛されて満たされなくてはね……そのときまではお別れよ。でもすぐに会えるわ、きっとね」
新しく収蔵されることになった「泡沫乙女」は、悲しそうに俯いていたがダリアの言葉に顔を上げた。大きな額縁の前まで導くと、人魚の娘は真っ白な水面に勢いよく跳びこんだ。
すると白いキャンバスが一瞬で夜の海へと変質する。その中を自由に泳ぎ回る人魚の少女が見てとれた。
星々のライトを浴びて、少女は優雅に泳ぎ歌を紡ぐ。詞はなくともその澄んだ響きは美しく、心を溶かす甘さを孕んでいた。
穏やかで柔らかな夜にふさわしい歌声がミュージアムに響いていた。
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