第37話 トラブルメーカー極まれり!

 JKの妹である佐奈さんはその後、医者の能力で回復するも、記憶が混濁しており、JKが言っていた連絡がつかなくなった日より後の記憶がハッキリと思い出せないようだった。

 第七十回目の会議で、元怪人の佐奈さんをJKの会社で匿うことになった。しかし、JKの提案で、農家のように付かず離れずを希望した。我々と怪人を結びつけたくはないとのことだ。

 私もニューワールドと怪人を結び付けられるのは嫌だった為、賛成した。


 話し合いの結果、怪人としてまた暴れないように、週一で医者に診察してもらうことになった。JKの会社も大分大きくなり、援助金は送らず連絡だけ取り合うと決まった。


 それにしても……減ったなぁ、幹部。

 なんかもう、別にいいかなって思ったよね。

 今回でJKもいなくなるため、残りは従者と医者と平民と有能の四人となった。

 







「それで、話しとは?」

 会議のあと、従者が二人で話したいと言ってきた。

「まずはこれを見てほしいですな。」

 従者は数十枚の紙を机の上に広げた。

 えぇと……ボディーガードとしての報告書?

 ……………………………なるほど。

「全部、怪人に襲われているケースだな。」

「その通り。最近のニュースでも怪人の増加が危ぶまれています。軍師は怪人をなんだと思いますか?」

 何、か……………

「そんな答えのない質問に答えるつもりはありません。我々ニューワールド日本支部はかの怪人と敵対する…………それだけです。」

 私は立ち上がり、執務室に向かう。

 怪人とは何……か。それはニュー……ノイが仕組んだものだが、態々言うつもりはない。言ったところで意味はないし、どうにもならないだろう。

 だが、会えて嬉しかったよ、ニュー。どこにいるか把握できたからね。

 まだ……私と将軍の計画は秘密にしておくべきだ。


「………そうですか、なら………ふっふっふ。」

 部屋一人

 笑う老人

 企むは












「ふーんふふふーん♪︎」

 誰もいない廊下で私は鼻唄を歌いながらスキップをしていた。何故かと言うと、来週将軍と私が実家に帰省するからだ。丁度休みが取れた為、二泊三日を堪能してくるのさ。

 私の仕事は誰でも出来るって?

 ……将軍は忙しいんだ。緑木農園の社長としてね。


「えーと、お土産持った、パジャマ持った、歯ブラシとバスタオルも持った………こんなもんか?」


 私が意外と少ないなと思っているとモニタールームから着信が入る。

「POか、どうした?」

『た、大変ですぅ!』

「どうした?また怪人が……」

『じゅ、従者様が…出奔されましたぁ!!』

「……なんて?」


 私はその言葉を咀嚼して理解した後、急いでモニタールームに走った。











「その情報はどこから!!」

 私がモニタールームで叫ぶと、一斉に三名、AQとPOとFZが振り向いた。

「軍師様!?」

「突然切れたと思いましたが……」

「こ、こちらですぅ………」


 POが恭しく差し出してきた紙を受けとる。

「えーと、何々………


 拝啓 緑木農園の皆々様

 私、従者こと佐藤優作は緑木農園を辞めさせていただきます。つきましては、この書状を辞表として扱っていただければ幸いです。

 理由といたしましては、自分探しの旅をしたいと思いしました。探しても良いですが、その場合、モニタールームのドローンを買い直すことになるでしょう。


 ……………。


 あんの、クソジジイィィィ!!!

 勝手なことを次から次にィィ!!!」 


「ひえ!?」

 AQが情けない声を出したが私は気にならないくらいムカムカしていた。

「ハァー…ハァー………

 すまない、取り乱してしまった。」

「いえ、大丈夫です。さっきのAQの方が子供の癇癪並みにうるさかったですから。」

「はえ!?」

 FZが澄ました顔で呟いたことで、私は少し落ち着いたが、AQは逆に真っ赤になっていた。


「フゥー………ドローンは?」

「…それは私から。」

 本来はAQが報告すべきなのだろうが、FZがAQを一瞥した後、ため息を吐きながら挙手をした。

「事が発覚した後、急いでドローンを飛ばしました。その結果、従者様を探すために飛ばしたドローン三機が帰らぬ人となりました。」

「なっ……」

 いったい、一機に何円かかると思ってるんだ!

 あと、FZはまだドローン一機一機に名前をつけてるのか………

「ど、どうしましょうぅ………?」

 POが少し怯えた様子で質問をしてきた。

「この件は私が預かる。もし仮に、業務中に従者を見つけたとしても決して近付かず、遠ざかるように。」

「了解しました。」

「りょ、了解ですぅ!」

「りょうかい~」

 AQはまだ恥ずかしがっているようで、モニタールーム24時の時に使用した毛布に顔を埋めながら返事をした。そのせいで声がくぐもっていたが不問にしておこう。 


 正直に言うと、従者がいなくなったことで、清々した気持ち半分と、ニューワールド日本支部が荒れていた頃から将軍と共に歩んだ人がいなくなるのは寂しいという気持ちが半分だ。

 緑木農園に変わる時も将軍についていくと言い切った唯一の人物だからこそ、今回でさらに将軍は枕を涙で濡らすことだろう。


 ……待てよ?従者は緑木農園を辞めると言ったが、ニュアンス的にニューワールドは辞めてないのか?

 もしかして、怪人狩りでもするのだろうか?前回の二人で会話した時の感触はそれっぽい気がする……

 いや、そんな気がしてきたぞ?

 ………ちょっと感動していた気持ちを返してくれ…

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