第34話 ろくな奴がいねぇ!!

「では、こちらの書類に必要事項をご記入下さい。」

「はい。」




「………あれか?」

「あれだねぇ。小田さんは誰か分かる?」

「うぅん……多分だが、魔法少女マトイ…だったかな。」

 魔法少女マトイ。今年で二十歳を迎える為、今後の身の振り方を考えた結果がここなのだろう。

「そっかぁ。」

「興味あるのか?」

「まぁ、ちょっとねぇ~。一緒にやる?」

「……面白そうだ。私と君で最高の相手を探そうではないか。」

「良いね!」







 私とJKはさっきの部屋に戻り、魔法少女マトイ記入した相手への条件を見る。JKが読み上げ、私が絞り込む係だ。

「えっと……希望年収は特に無し。」

「魔法少女で稼いでるからな。」

「年齢はプラマイ三歳。」

「ふむ。」

「居住地は関東。」

「次。」

「容姿は自分と同じ体格。」

「魔法少女マトイはどれくらいですか?」

「身長百六十三センチ、体重五十キロ前半。」

「了解。」

「仕事にこだわりは無し。将来は家族経営を希望。」

「はい。」

「喫煙禁止、飲酒は嗜む程度。」

「大分絞れたましたね。」

 皆、モテようとして喫煙してるのかな?一気に百人位が候補から消えたよ。

「趣味は読書やゲーム等のインドア系統。」

「フムフム。」

「学歴にもこだわりはない。」

「ほう。」

「その他として、時間や約束を守れる人。何かあっても優しく対応してくれる人、だって。」

「残ったのは五人ですが……」

 私はJKにその五人をビックアップして見せる。

「うぅーん、全員アウトだね。」

「へぇ、どうして?」

 無情にも、JKは否と決断した。わけを聞こうか。


 金髪でいかにもチャラそうな男を指差す。

「まずこの立花さん。登録の時に時間が掛かりすぎって怒鳴ってた。その時点で優しく対応出来ないからアウト。」

 あぁ、確かにそういうのってイライラするよなぁ。分かるわぁ。


 次に、トレンチコートを着た優しげな男。

「二番目の会田さん。この人は結婚詐欺師だからアウト。」

「え!?そんな奴登録させたままで良いのか?」

「問題ないわ。あっちはバレてるって気づいてないから、なるべく会田さんの行動パターンを探偵に調査してもらってるの。うちの会社は信頼第一だからね。会田さんもうちに登録した家にちゃんと住んでるか確認はとれてるから動きも含めて把握済みよ。金を巻き上げたらずらかるとか裏で言ってたみたいだけど、そろそろお縄に付かせる予定よ。」

 ……驚いた。やっぱりJKも優秀だ。

「どうしたの?」

「いえ、何も。続けてください。」


 にへら、といった顔で笑う男。

「三人目の町田さん。この人は問題ないんだけど、マザコンと言うか、この人の母親が過保護で円衣さんには向かないかもね。」

「確かに、魔法少女マトイは勝ち気なところがありますからね。衝突する可能性は捨てきれませんね。」


 少し筋肉質な男。

「四人目の高田さん。職業は家族との大衆食堂なんだけど、経営が悪化してるから円衣さんの条件には合わないかもね。」

「そう?大衆食堂のノウハウを結婚してからまた活かせば良いのでは?」

「登録に来た時、なんとなしにひもになりたい発言が出たそうよ。」

「………アウトですね。」


 銀縁メガネの男。

「最後の長谷川さん。この人はまだ未遂なんだけど、投資詐欺紛いの事をしてきたと、前にマッチングした方からタレコミがあったのよ。詐欺なのか、本当に投資話をしただけなのかは不明だから今は精査中。」

「…なるほど。」

 それは九割黒な気がするがな。

「まぁ、立花さん、町田さん、高田さんは合わせてみても良いかもしれないわね。」

「……いえ、高田さんはやめておいたほうが良いかと。魔法少女マトイとは他人に厳しく、自分はもっと厳しくがモットーの女性です。」

 働かずにひもになりたい願望がある人とはすぐに喧嘩をしそうだ。

「じゃあ、立花さんもアウトだね。大学を休んで遊んでばかりいるみたい。」

「確かに、それだと厳しいですね。」

 くぅ…見た目だけで判断できないとはいえ、見た目通りすぎるだろ!?

「じゃあ、とりあえず町田さんに連絡を…」

 町田さんか……まぁ、親が過保護、少しマザコン以外に非の打ち所がない。町田さん本人は外科医志望で医療系の大学院にいる。彼の将来設計に、医者を引退したら家族で小さな店を開きたいと書かれている。魔法少女マトイにピッタリではないか?

 それに、両親も不動産会社を営んでおり……っ!?

「待ってください。」

「どうしたん?」

「私に電話対応をさせていただきたい。」

「んー…いいよ。」

 私の予想が外れてると良いんだが………



「はい、もしもし?」

「お忙しいところ失礼いたします。町田様でよろしいでしょうか?」

「えぇ、そうですが。どちら様で?」

「申し遅れました。私は、株式会社ハイビとくれんの小田と申します。」

「まぁ、息子に良き方でも見つかったのですか!?」

「えぇ、まぁ。ですが、相手の条件と合致するか今の段階では判断が出来ず、お電話させていただきました。」

「なるほど、承知しました。今息子を呼んで参りますね。」

「お願いいたします。」




  

 数十分程の通話を終え、私は電話を切る。

「どうだったん?」

「やめたほうがいい。」

「え?」

「魔法少女マトイに紹介するのはやめたほうがいいだろう。」

「え?え?何が分かったの?」

「町田さんが悪いわけじゃない。悪いのはその両親だ。」

「ねぇ、ちゃんと教えてよ。」

 JKが年相応に、口を尖らせながら呟く。

「分かりました。

 少し前に、戦士が同業他社に嫌がらせを受けていると聞いたでしょう?」

「………あぁ!覚えてるよ!私の意見が採用された会議だね!」

「はい。その同業他社が町田さんのご両親の会社なのです。」

「えぇぇ!?マジ!?」

「マジです。しかも、裏で賄賂を使った取引や、どこで入手したのか知りませんが、我々ニューワールドとコンタクトを取ってきたこともありました。」

 コンタクトをとってきた時は驚いて保留にし、モニタールームで監視してみたら、出るわ出るわの悪行三昧。流石に引いたね。

「えぇ……それってすごい悪者ってことじゃん!」

 多分私達の方が悪者扱いを受けてるのだが、この子に自覚は無いのだろうか?

「えぇ、そこに元とはいえ魔法少女が嫁入りすれば色々と利用価値があるとあちらは思うのでは?」

「はえぇ~そうなんだ~。」

 おそらくピンと来てないな。私も予測のためここは深掘りしないでおこう。

「まぁそういうことです。魔法少女マトイの相手は保留にするべきですね。」

 私も知り合い(一方的)がダークサイドに行ってしまうのは後味が悪いからね。

「……いや、円衣さんの相手、良い人がいるよ。」

「?……一体どちらに?」

「うちの会社じゃないけど、知り合いにね。」

 へー、JKは顔が広いのだろうか。この条件の相手はなかなかいないと思うが。

「それは是非会ってみたいですね。」

「ふふ、もぉーなに言ってんのさ。軍師の方がその人のこと私より詳しいでしょ?」

「…………?」

「あれ?もしかして分かってない?」

「すみません。検討もつかないです。」 

「えへへ、岸晴太って言うんだけど?」

 WAO!ビックリ!

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