第33話 上がってきたぁ!
カフェに戻って魔法少女サクラと二、三言会話をして帰らせてもらった。久し振りに気分が悪い。理由は押して図るべし。
今日であれと会ったのは三回目だ。一回目は将軍と二人で、二回目はニューワールドの各国親睦会で。今思い返せば更に気分が悪い。二回目の親睦会の時、奴は魔法少女と呼ばれるであろう敵の存在を確認した、とかほざいたクセに結果は自分がけしかけている。最悪の自作自演だ。あとは………………………
やめよう。これ以上あれについて考えても何の価値もない、時間の無駄だ。
思考を切り替え、別の事を思案する。
……そういえば、JKが作ったマッチングアプリによる婚約関係を結んだ人が百組目を突破したようだ。一度様子を見に行ってみよう。
「ここが、JKの会社か………」
場所自体は聞いていたが来たのはサービス開始以来だった。当時はデスクワークのためだけの簡素な場所だったが、今は内装が清潔的で、婚約したであろう何組もの人々の写真が入り口のすぐ目の前に飾られている。
「こんにちは、新規の方ですね?ご登録ですか?」
この人は……いや私の記憶にはないな。この会社で雇った人材か。笑顔も素敵で物腰も柔らかい、嫌な圧も感じないし、高評価の理由はこれも要因かな。
「いや、こちらの会社の石倉社長にアポイントをしています。」
「それは、失礼しました。お名前をお伺いしても?」
私の言葉に動揺せず、瞬時の対応。……すごいな。この社員の資質か、それともJKの指導によるものか。どちらにせよ、これだけでも多くの人に利用されるのは良く分かる。
「小田です。小さいに田んぼで。」
「小田………確認いたしました。少々お待ちください。」
受付の女性は電話をかけ、すぐにこちらに戻ってきた。
「あちらのエレベーターで四階に上がっていただいて、そこから右手に曲がって、四つ目のドアで社長がお待ちです。」
「あぁ、ありがとう。」
私のお礼に女性はとても綺麗なお辞儀をする。クチコミを見たところ全ての社員が丁寧な対応をしてくれると評判だったが、ここまでとは。
……ここか。
コンコンコン
「どうぞ。」
「失礼します。」
「あぁ!軍師じゃーん!」
「おま!?」
そんなでかい声で言うんじゃねぇーよ!
「あ、ごめんごめん。」
私の睨みが効いたのか、気づいたように訂正する。
「………気を付けてくれよ。」
私はため息を吐きながらソファに座る。
「んで、何聞きたいんだっけ?」
「いや、情報としては知っているが、現場に行かないと分からないこともあるからな。」
「へぇ~偉~い。」
興味なさそ~。
「実際、報告ではカップル成立は百組を突破したと聞きました。これはとても素晴らしい事だと思います。」
「ふっふー、ですよね!」
「JKナナ、何故ここまで好調なのか分かっていますか?」
「はえ?……さぁ?」
……これが、社長で良いのだろうか…。もしかしてフィーリングで考えるタイプか?ある意味才能があるとも言えるが。
「まず第一に、高校を中退して起業したという注目度。これは最高に目を引きます。ニュースや新聞の見出しとしても使いやすいし、記憶にも残りやすい。」
「でもさ?起業っていっても将軍とか軍師にお金と社員もらって、自分に出来ることを考えて出来ることやってただけだよ?」
JKが不思議そうに呟く。
「そもそも、表向きはあなたが一人でやったことですし、あなたが考えて行動した結果、満足いただいてるのでしょう?」
「…納得はしてないけどね。」
「それが最善だからそうしたのです。」
「…………。」
JKも決して頭が悪いわけではない。私が言ったことはすぐに把握できてるだろう。
「続けますね?次の理由としては、会社の対応です。」
「対応?」
「ここに来るまでの受付の方です。」
「ん~?今日はツノっちだったかな。」
確か、社員カードには津野田と書かれていた。
「あの対応はJK自らが?」
「もちろん!人へのおもてなしは最善を尽くすのが我が家の家訓なんだ。だからそういうのはビシバシ、厳しくしたよ!」
「それも素晴らしい。ホームページでのアカウント登録も、個人情報は最低限に、より深く詳細な情報を知りたい時は本社で話し合うだけでなく電話対応も可。
さらに、本社に来れば手厚い対応。これで、月額五百円のワンコイン。起業したばかりかつ、安すぎる値段で怪しまれるも、高校中退して起業ということでニュースに取り上げられて、そこそこ不安は払拭。今では実績もある有名企業の仲間入り。
いやはや、このストーリーには恐れ入ります。」
「っ……たまたま、だよ。」
JKが恥ずかしそうにモジモジとしている。この年頃は真正面から褒められるとよく照れる子がいるが、JKもその一人らしい。
…言っておくが、まだまだ褒める点は尽きないが、これ以上はやめておこう。すでにJKの顔が真っ赤だ。
私が机のペットボトルに手を出すと、JKも我に返って水をがぶ飲みする。
少し落ち着いたかな?
「本題はここからだ。いいかな?」
「は、はい!」
「単刀直入に聞こう。百組突破と聞きましたが、その後何人が離婚しましたか?」
この話は全く報告が無かった為、直接聞くことにした。
「………三組…です。」
おや?思ったより少なかったな。それくらいなら…もしかして。
「それについてどう思いましたか?」
「三組も離婚されてしまい、申し訳ありません。」
やっぱり、認識の違いか。
「謝罪は不要です。あなたは十分やれています。胸を張りなさい。」
「そう…ですか?」
「えぇ。」
「そっか……ありがとうございます。」
これからも頑張ってくれると嬉しいね。
「そういえば、本来の目的は達成できたのですか?」
「いえ…まだですね。」
JKが少し悲しそうに話す。
本来の目的…それはJKが起業した理由だ。それは面接の時に聞いた。
「探し人?」
「はい。私の双子の妹です。」
「行方不明?」
「…そんなところです。電話も繋がらなくて。」
「そう……ならいい仕事があるんだけど。」
「え?その為の面接では?」
「別の…もっと効率よく探せる方法だよ。」
自分の双子の姉が話題性のある人物になれば、連絡はとれなくても接触はしてくると考えていたが、見積もりが甘かったか?
「聞きたかったんですが、私の提案でこういう会社にしましたが妹さんは結婚に興味があるのですか?」
「んー、あると思う。私も両親も緩い感じだったんだけど、妹は意識高い系で目標とか将来の人生設計とかちゃんと作ってましたよ。その中に、二十代前半までには理想の彼氏を作るってありました。」
言っておくが、未成年は登録出来ないからね?未成年には、恋愛アドバイザーや心理カウンセラーとして対応している。
だが、聞いた感じではJKの妹はここを利用するだろうか?中学卒業と共に家を出たという妹さんがどんな状況かは知らないが、そこまで計画してるなら利用しないのではと思った。一卵性と聞いてるし、JKとそっくりなのだろうから、相手に困らないルックスをしているのは確かだ。
「来ると思いますか?」
「んー、微妙ですね。心配ではあるけど、今が充実していて考える暇がなくなりそうです。」
「良いのか悪いのか分からないですね。」
「ふふ、そうかもしれません。」
プルルルルル………
「電話出ますね?」
「どうぞ。」
「もしもし、石倉ぁ。はい、はい、はい?えっと……とりあえずいつも通りで。よろしく~。」
「どうしたんだ?」
「受付から電話来たんだけど、現役魔法少女が登録に来たって。」
うっわ………
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