第6話 かつおぶしととろろ昆布

なあなあ

声が聞こえる。

遠い……。


かりかり

窓をひっかく音。

これも遠い。


「寝てるのか。珍しい」


耳元で声が聞こえた。


なあさんは、

部屋の中にいた。

というか枕元にいた。


「二日酔いだから……」

「よっぱらいか」


そんなに飲んでない。

飲めないのに飲んだだけ。

先輩が飲んでいるのを見てただけ。


なあさんは

どっから入ってきたのだろう。


「おれの前では壁などないに等しい」


いや、あるよね壁

いくら軟体動物でも。


のそのそ

起き上がってカーテンを開けた。

目が痛いくらい眩しい。


「だしはね、昆布を水に浸けてから寝たから、出てると思う」


ご飯もタイマーだから炊けている。


「今日かつおぶしにしよう」

「かつおぶし」


なあさんの方が酔っ払ったみたいな嬉しい顔で

台所についてきた。


昆布水をあっためて

フードボウルにごはんと

たっぷりかつおぶし。


「ゆきおは、何を乗せてる」

「うめぼし」

「うめぼし!」


すっごいびっくりしたなーさんの

飛び上がり方にすっごいびっくりした。

きゅうりの時のやつでしょそれ。


「それはなんだ」

「とろろこんぶ」


ごはん、かつおぶし、うめぼし、とろろこんぶ

なあさんよりも豪華盛り。


「かつおぶし盛りの方が、いいぞ」


負け惜しみじゃなくて、真摯なアドバイスでした。






……とろろ昆布はおぼろ昆布と言った方がかっこいい。(雪緒)

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