君と伝える吸血鬼譚

　吸血鬼ラツェナドは、人間の友を亡くした。
　それから、五百年。吸血鬼や他種族と人間が共存するようになった世界で、ラツェナドは人間社会に馴染んで生活をしている。コンビニバイトをしながら、夜の街を過ごすラツェナド。
　ある日、ラツェナドは一人のハンターと町の一角で遭遇した。そのハンター・伴は、かつての友とよく似た容姿をしている。吸血鬼などの伝説の生物がいる世界では、半端な噂ではあるものの生まれ変わりの伝えは常にある考えだった。ラツェナドは伴に対してその可能性を消せず、不思議な感覚を持ちながら交流を持っていく。
　気の置けない会話を難なくこなせるラツェナドの存在に、伴もまた不思議な感覚を持っていた。