※12話 私達の結末(終)

「んぅ……?」


「おはよう、ひな子ちゃん」


「……⁉︎」



目覚めて早々女郎蜘蛛に話しかけられて起き上が……ろうとしたけど、それは四肢に繋がれた鎖で叶わなかった。

私は全裸でベッドにXの字型に磔にされている。



「……私をどうするつもりですか?」


「取り敢えず高嶺ちゃん分の利益が無くなっちゃったから貴女で補填するわね。調教して売り物にしないと」


「ちょう、きょう……?」


「心配しないで。気持ち良い事よ」



女郎蜘蛛は……お香に火を付けた?

それと軟膏を私の身体中に塗っていく。



「それは、何を……?」


「気持ち良くなるお香と薬」


「そ、そんな物現実に……」


「あるのよ、特殊な伝手があってね。すぐに効くわよ」


「んん……っ⁉︎」



な、何コレ……⁉︎ 身体が熱い……! お腹の下辺りが、じんじんする……っ



「ほーら」


「ふぁああぁっ⁉︎」


「どう? 気持ち良いでしょ?」


「か、身体が、あつ……っ!」



女郎蜘蛛の細い指がお腹を撫でる。

それだけでゾワゾワして声が……!



「んぅ……く、ぁあっ……!」


「ふふ、辛いでしょう? もどかしいでしょう?

……ひな子は赤夏様の奴隷ですって宣言すれば思いっきり気持ち良くしてあげるわよ?」


「だ、誰が……っ、私のご主人様は高嶺様、です……!」


「ふふ、残念♪」


「あぁ……っ」



それから私は何時間……いや、何日?

時間の感覚が曖昧……女郎蜘蛛やその部下達が代わる代わるで責めたててくるから日を跨いでるのかもしれない……


 

「今日は私。白だよー」


「しろさん……」


「そ。貴女も頑張るねー? さっさと諦めれば楽になるのに」


「んあぁ……っ」



そう言って白さんは私の身体を優しく、残酷に撫で回す。

あぁ、でも何でだろう。何処か私と似ている気がする……



「あなたは、美咲さんですか……?」


「……さぁ? 人間だった頃の名前なんて忘れちゃった。

今は赤夏様の奴隷の白だもん。それよりぃ……もっと強い刺激が欲しいんじゃない?」


「んんん……っ!」



※※※※※



それからも私は、身体中をとろ火で炙られているような快楽に苛まられる。

何時間も、何日間も……



「貴女の主人は?」


「高嶺様です……!」



「貴女の主人は?」


「高嶺様、ですっ」



「貴女の主人は?」


「たかねさま、れす……」



あぁ、あたまのなかがぐちゃぐちゃになっていく。

なにを言われてるのかわからないけど、たかねさまと言いつづけなければいけない気がする……


たかねさま

たかねさま

たかね、さま……







「ひな子!」



からだをゆすられて目がさめる。

たかねさまだ。

かおも、こえも、においも、わたしのしってるたかねさまだ。



「ひな子、無事で良かった……!」



あぁ、さわられてるところがあつい。

といきがぞわぞわする……

たかねさま

たかねさま

たかねさま



「どうしました? 何か言いたい事があるんですか⁉︎」


「き、す……」


「はい?」


「きす、して、ください……」


「こんな状況で……特別ですよ」



たかねさまのくちびるがかさなる。

あまい。きもちいい。びりびりする。あたまのなかが、ばちばちとすぱーくして……




※※※※※



気が付いたら私は病院のベッドの上に居た。

後から聞いた話に依ると……


あの日、約束通り逃げられた高嶺様により事件が発覚。

激怒したお父様とお兄様が徹底抗戦の構えを取って玄武会と対立。

当初は圧倒的に不利だと思われていた鳳組だったけど……そこで大杉親分が鳳組に付くと宣言。

あの人が言うなら……と、鳳組に寝返る組が続出。


また玄武会会長の澤田は高嶺様の確保に失敗した女郎蜘蛛にも制裁を加えようとして……手酷い反撃を受けた。

正確に言うと……彼女が握っている“弱み”を使って、更に玄武会側の組織を寝返らせた。

遂には数で逆転し、これは堪らんとギリギリまで玄武会に残っていた組も撤退。

結果、大した抗争も起きる事無く鳳組の大勝利。

澤田は失脚(恐らく始末されたとの事)し、後任の人が新しく会長に就任した。


その後、奴隷が頑張ったご褒美と称して高嶺様のスマホに私が居る住所が送られて……というのが事の顛末。


 


「騙していてごめんなさい……ひな子の借金は無くて、私の奴隷で居る義務は既に無かったというのは……事実です」


「そう、ですか……」


「奴隷業務は今日を持って終了。働きによる給金の支払いや、就職のサポートも全力で行います。

貴女の人生を壊してしまい……本当に申し訳ありませんでした」


「そんな、頭を上げてください……!」


「ひな子は優しいのですね。でも……私は貴女を裏切りました。

ごめんなさいの一言で済む問題では無いのですよ」


「ですが……! 私は高嶺様と過ごす日々は幸せでした! 私は、奴隷のままでも良いんですっ」


「ひな子、私はもう貴女と居られません。私はこれ以上貴女が極道と関わり続ける事を望みません……分かってくれますね?」


「……っ」



そう言って私の手を握る高嶺様は凄く辛そうで、寂しそうで……

本当に私の事を思ってくれているのだと……理解した。




※※※※※



「高嶺様、朝ですよ。起きてください」


「うぅん……」



まぁそうは言っても私が従う義理は無いんだけどね!

あの日、それでも私は強引に押し切ってどうにか高嶺様の秘書としての仕事をもぎ取った。

何しろ高嶺様は私に弱みがある立場だ。

ここで離れ離れになるつもりなら、自分の足で鳳組の門を叩いて極道になる、と脅したら呆れ顔で……だけど少しだけ嬉しそうに秘書の仕事を提案してくれた。



「あふ……」


「私は朝食を作ってきますから、ちゃんとに起きてきてくださいね」


「分かってます……」



確かに高嶺様は私を騙していた。

けれどそれ以上に灰色だった人生に彩りを与えてくれた。

そして何より……



「頂きます」


「頂きます……ん、良い焼き加減ですね」


「ありがとうございます。……あの、美咲さんの事は何か分かりましたか?」


「変わらずです。ひな子の言う通り女郎蜘蛛の部下であるのは確かなようですが」


「そうですか……早く取り戻せると良いですね」


「まったくです」



そう、何より……美咲さんの存在を知らせてしまった。

美咲さんを女郎蜘蛛から取り戻すという明確な目標を与えてしまった。

……高嶺様の隣に立つのが美咲さんになる可能性を生んでしまった。



そんな事させない。

別に美咲さんの救出を邪魔をしようとは思わない。


けれど……高嶺様の信頼を、好意を、寵愛を得るの私だ。

だって名目上の立場が変われど、私は高嶺様の奴隷なのだから。


例え美咲さんであったとしても……この立場だけは絶対に譲れない。



fin

 

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26歳OL、美少女JKヤクザの情婦になる 生獣(ナマ・ケモノ) @lifebeast

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