最終話:君を一級天使にしてあげたい。

僕の家にリボンちゃんとバレッタちゃんがいることを知った水炊みずたきは、

なにかにつけて僕のアパートに足しげく通って来るようになった。


リボンちゃんは僕の彼女だから、アタックしても無駄だってわかってるから

水炊の目当てはバレッタちゃん。


バレッタちゃん狙いの水炊は、足が痛いだの、腰が痛いだの、指を怪我しただの、

あれこれ理由をつけてやってくる。

そのたびバレッタちゃんは献身的に治療したりしている。


水炊が好きだからってわけじゃなく治癒天使としての職務を全うしてるだけ・・・。

水炊はなんとかしてバレッタゃんと仲良くなりたくてしょうがないみたいだ・・・

なんせ天使の彼女なんてレアだからね・・・。


まあ、いいけど・・・。


水炊のことをバレッタちゃんに聞くと、おナベちゃんみたいな頼りなくて

面倒見てあげないとダメになりそうな男が意外と好みなんだって。


タデ食う虫も好きずき。

人の、天使の好みって分かんないもんだ。


そんなことなら、それはそれでうまくいけばいいけど・・・でも思うけど

たぶん水炊はバレッタちゃんにフラれると思うな、そんな予感がする。


それまで向こうは向こうで好きにやればいいんじゃないか?

問題は僕に、もうリボンちゃんに救済してもらわまくちゃいけないような

ことがないってこと。

なにも悩みごとも心配事もないわけ。


さてどうしたもんだろう、ってそれが悩みだったりする。


「リボンちゃんは僕を救済しないとエボンリルに帰れないし一級天使にも

なれないんだ 」

「だけどそれも曖昧になって来てる」

「何が救済なのか分からなくなってる」

「いったいどれだけの数を救済すれば課題クリアできるかも分からない」


「救済者が幸せを勝ち取るまでです」


ってリボンちゃんは言った。


「だけどそれじゃキリがないじゃん、どこかでっピリオド打たきゃ」

「俺はもうリボンちゃんによって充分満たされてるし・・・」


「僕は君を一級天使にしてあげたい」

「だけど、まじで君がいてくれるから俺は幸せでいられるんだ」


「なにかないんですか?・・・勉強がはかどらないくて困ってるとか

・・・頭とかお腹が痛くてたまらないとか ・・・」


「外科的なことはバレッタちゃんの出番だろ?」

「あ、そうか・・・原点に返ればいいんだ・・・」


「原点?


リボンちゃんは不思議そうな眼差しで僕を見た 。


「あのね、君がエボンリルに帰っちゃったら、きっと俺はショックで

寝込んじゃうと思うんだ・・・君を失ったら生きていけないと思うからね」


「それを救済してほしい」


「意味が分かりません」


「つまり俺のために、君はエボンリルに一度帰っちゃえばいいんだ」

「君がいなくなることそれが俺の不幸だし望まないことだし」


「だから一度エボンリルに帰って、救済者を救いましたって報告して、

でさ、一級天使に昇格したら、僕のところにまた帰っておいでよ」


「僕はさ、君がいない毎日に悲しみに暮れて待ってるから、リボンちゃんは

改めて僕を救済に来て・・・」

「でさ、僕が干しぶどうみたいに干からびて、この世を去るまでずっと僕の

そばにいてよ」

「僕から離れずにいてほしい」


「それが最後の救済だよ」


「そうですね・・・なるほどですね」

「とってもいい考え」


「でも今度圭ちゃんのところに帰ってきたらもう救済とかそういうことじゃなく

て、愛でもって一生圭ちゃんのそばにいます」

「圭ちゃんがもういいって言っても私、離れません」


「だって、私、生き甲斐は圭ちゃんだけだし圭ちゃんがいないと生きていけない」

「圭ちゃんのこと愛してるんだもん」


そう言ってリボンちゃんは僕にハグした。


ってことでリボンちゃんは、予定通り一度エボンルルに帰ることになって

めでたく一級天使に昇格した。

で、エボンリルから帰ったリボンちゃんは今も僕と一緒にラブラブで暮らしている。


マルチバースって異世界から来た天使の中でこの世界に残ったのは後にも

先にもリボン・ヘブンドールだけかもしれない。


バレッタちゃんとおナベちゃんは案外うまくいってるみたいで、時々人間界と

エボンリル行き来していて僕のアパートにも遊びにやってくる。


さてさて、僕と救済天使リボンちゃんとの愛の暮らしが本格的にはじまった。

考えただけでワクワクする・・・できたらハグとチューから一歩進んでみたい。


でも、自分の好物は最後まで取っておきたいよね。


END.




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エボンリルの天使。♡ あなたを救済に来ました ♡ 猫野 尻尾 @amanotenshi

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