第13話:こんにちは、お鍋ちゃん。

圭介が交通事故に遭遇したにも関わらず、学校どころかクラスの連中は誰も

見舞いに来なかった。


何人もの生徒が見舞いになんか来られたら、それは瀕死の息子が可哀想と、

おふくろが学校にも誰にも報告してなかったからだった。


まあ、圭介からしたらそのほうがありがたかったんだけど・・・。

元気になってからもリボンちゃんといられたし。


学校を休んでる理由はよくある一身上の都合ってやつ。


親父は出張で家を留守にしていたので忙しかったらしく、結局病院へ

見舞いに一度も来なかったけど出張から帰ったあと僕のマンションに尋ねて

きてくれて元気そうな僕の顔を見て喜んでくれた。

男の父親なんてそんなもん・・・気持ちの上では心配してくれているんだろう。


さて圭介のことはクラスの生徒には知られないで済んだが、それでも圭介が

学校を休んでるっていうんで、若干一名、様子を見に彼のアパートにやってくる

物好きもいたりする。


「水炊 鍋夫 《みずたき なべお》」って牛乳瓶の底みたいなメガネをかけた

圭介とは正反対でひょろ〜っとした頼りなさそうな男だった。


それでも圭介とはなにかと気が合って仲がいいほうの友人のひとりだった。

わざわざ来なくていいのに迷惑にも彼はやってきた。


玄関のドアホンなんか丁寧に鳴らすわけがない。

勝手知ったる他人の家、水炊君は、声すらかけずにズケズケと家の中に

上がってきた。


「圭介・・・いる?」


そう言って水炊君は図々しくリビングにやってきた。


「いや〜、おまえがさ、ずっと学校休んでるからさ・・・どうしてる・・・」


そこで水炊君が見たもの・・・いや人物、いや女性、しかもふたりも・・・ 


「え?・・・あ、ごめんなさい」


水炊君は目に前の状況を把握できず、ちょっとパニクった。


「これは・・え〜と、マズかったですかね」


「どちら様ですか?」


リボンちゃんが言った。


バレッタは私は関係ないよねって顔をしていた。


「あのバカな質問って思うかもしれませんけど、ここ圭介の家ですよね」


「そうですよ・・・もしかして圭介さんのお友達?」


「はあ・・・あの僕、水炊 鍋夫みずたき なべおっていいます、圭介の友人の・・・」


「みずた・・・なべ?」

「まあ・・・こんにちは、おナベちゃん」


「はい、え?おナベちゃん?・・・あはは、おろしくです、おネエさん・・・」


「おナベちゃんは圭介さんのお見舞いにいらっしゃったんですか?」


「お見舞い?・・・お見舞いって圭介なんかあったんですか?」


「ああ・・・本人のクチからお聞きになってください、今呼んできますから」

「どうぞ、ソファにでもお掛けになって、おナベちゃん」

「あ、私、天使やってるリボン・ヘブンドールって言います、よろしく」


そう言ってリボンちゃんは圭介の部屋に彼を呼びに行った。


「今、天使って言った?」


二人だけ取り残されたバレッタと水炊は気まずい空気に、どうしたらいいもの

か戸惑っていた。


「あの・・・水炊です、どうも」


「どうも、私バレッタ・・・よろしくね、おナベちゃん」


「おナベちゃんって、あなたもですか?・・・まあ、いいですけど・・・

間違ってないから・・・」


「あたなも天使さんなんですか?」


「そうだよ、おナ〜ベちゃん」


バレッタは満面の笑顔を芳香剤みたいにそこらじゅうに振りました。


(わお〜〜〜〜〜天使ってメッチャ可愛い・・・って)


「お〜い、おナベちゃんって人が来てるって?」


リボンちゃんと一緒に圭介がリビングにやって来た。


「あ、圭介・・・よかった・・・おまえが学校休んでるから・・・」


「それで様子を見に来たのか、ナベ」


圭介は水炊君を見たら、鍋料理が食べたくなった。


「悪い悪い・・・それよりなんで僕の家に可愛げな女の子がふたりもいるんだって、おまえの顔に書いてあるぞ」


「おお〜それだよ、このさいおまえのことはどうでもいいわ」

「ここにいる、可愛い女の子たちは誰?・・・おまえとどう言う関係・・

従兄弟とか?家政婦さんとか・・・メイドさん雇ったってのはなしでな」


「従兄弟は使えるけど家政婦雇う金なんかないよ」

「言っても信じないだろうけど・・・話してやるよ」


そこで圭介は今までの一切を水炊に話してやった。

水炊君はしばらく何も言わんかった・・・一生懸命ありえないようなことを

理解しようとしていた。


「よくできた話だな・・・圭介・・・ファンタジーが書けるぞ、おまえ」


「ほらな、信じないだろ?」

「まあ、僕も最初はリボンちゃんを見たとき信じられなかったけどな」


「天使って・・・まじでいるんだ?、それもこんなアイドルみたに可愛い

天使が・・・」

「もしかして天使って、みんなこんなに可愛いのか?」


「いや〜、僕はリボンちゃんとバレッタちゃんしか知らないからな・・・」


「お鍋ちゃん、あなたの目の前にいるのは紛れもなく天使ですよ」

「そして私は圭介さんの彼女で〜す」


リボンちゃんはお鍋ちゃんに向かってピースサインをした。


「え〜え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜???」


とぅ〜び〜こんて乳。





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