第9話:たとえ一級天使になれなくても。

次の朝、もちろんリボンちゃんが甘〜い声で起こしてくれた。

僕は目覚めると同時に僕は一番気になってることを彼女に確かめてみた。


僕は自分の唇を指差して言った。


「リボンちゃんあのさ、ここにできる?チュー?」


「はい、できますよ」


そう言ってリボンちゃんは僕のクチビルにチュってした。

なんの躊躇もなく、なんの抵抗もなく・・・あっさりと・・・そんなお試しみ

たいな初キスってある?


だけど、ロマンチックなキスじゃなくても、僕の胸はときめいた。

リボンちゃんのクチビルはプニってしてて柔らかかった。

僕にとっては、クチビルにキスは愛情の証だと思ってるから・・・。


「チューしてほしかったんですか?」


「そりゃ恋人同士だもん・・・してあたりまえだろ?」

「もう僕たちは人間と天使って隔たりはなくなったんだから」

「リボンちゃんがそばにいないと僕は幸せにはなれないよ」


「恋人同士っていいですね、さ朝食にしましょ?」


それからは僕が大学へ行く時、リボンちゃんがいつものおまじないみたいに

僕にいってらっしゃいのハグとチューをくれた。

ほっぺじゃなく、ちゃんとクチビルにチュって。


そこは大きな進歩だって思う。


リボンちゃんはエボンリルの生活と違って、ただ圭介のそばにいることが幸せ

だって思っていた。


だけど圭介が会社へ言ってしまうとたちまち退屈になるリボンちゃん。

一応、掃除に洗濯を済ませたらヒマでテレビでも見るしかなかった。

ご近所の状況をちゃんと把握しきれてなかったからお買い物にスーパーに行く

にはまだ少し抵抗があった。


だからダメだよって言われてたのに・・・やっちゃったリボンちゃん。


《圭ちゃん・・・今、なにしてるの?》


(え?・・・リボン?・・・あ、そうかテレパシーか?)


《ヒマだからお話しようと思って》


《思ってじゃなくて、今授業中だから・・・》

《つうか、こんなにはっきり言葉が届くの?》


《私のテレパシーは地球の裏側にだって届くよ》


《そうなんだ》

《てか、それより今、講義うけてるから、ちょっとマズいよ》


《いつ帰ってくるの?》


《ん〜授業が終わったら帰るから》


《待てない・・・そっちへ行っていい?》


《だめ、だめ・・・来るな、来るな・・・》


《なんで?》


《だから、リボンちゃんが来たら、みんなに紹介しなきゃいけなくなるから》


《窓の外からそっと見るから》


《ストーカーか?》


《ストーカーって?》


《しつこく付きまとうやつのことだよ、変態のこと》


《まあ、私、変態じゃありません》


《う〜頭にガンガン来る・・・リボン、声がデカイよ》


《あ、ごめんなさい、つい興奮しちゃって》


《なんかさ、これいつまで続けるつもり?》

《あのさ、帰ったらちゃんと構ってあげるから》

《おとなしくテレビでも見て待てって、いい?》


《分かった・・・つまんないの》


この先も大学までテレパシーでこんな会話が続くのはごめんだからアパートに

帰ると会話は昼休みだけってことにしてもらった。


退屈してるリボンちゃんに埋め合わせをするために僕は仕事から帰ると片時も

リボンちゃんから離れなかった。


仲良く晩ご飯を食べて、仲良くお風呂に入って・・・。

そうなんだよ・・・なんだかいつの間にか一緒に風呂にまで入るようになっ

ちゃって・・・。

で、風呂から出るとふたりでベランダに座って星を眺めて、どうでもいい話で

盛り上がっって気が向いたら時々ハグしてチューして・・・。


あとはね、男と女がすること・・・だけどそのことをリボンちゃんにお願いする

勇気は僕にはまだなかった。

そなるのは最後の最後なんだろう。


で、いつものように朝はリボンちゃんのラブラブで起こされていい気持ちで

僕は大学へ行った。


リボンちゃんの救済はたぶん僕があの世にいくまで続くことになるのかもしれない。

だってリボンちゃんがエボンリルに帰っちゃったら僕はたちまち悲しみにくれて

生きる気力を失うから・・・。


だからリボンちゃんはずっと僕のそばから離れることは生涯ないんだ。

僕を救済し続けなくちゃいけないからね。


たとえ一級天使になれなくても・・・。


とぅ〜び〜こんて乳。

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