第4話:愛のないハグやチューはいらない。

俺を救済するために人間界に留まったリボンちゃん。

救済のみならず俺の生活のお世話をすることも天使の務めらしい。

家事代行でもないのに?・・・。


「圭介さん・・・朝ですよ〜・・・お願い、お〜き〜て〜」


だから朝は、リボンちゃんの甘い猫なで声で僕は起こされる。

朝から、これか・・・なんか下半身だけ元気になりそう。


そんな俺の彼女みたいな起こし方されたら、俺に気があるんじゃないかって

めちゃ勘違いするだろ?

朝からテンションあげて興奮してどうすんだよ、俺。

しかもリボンちゃんは僕が喜んだり幸せって思うようなことが救済に繋がる

って思い込んでる節がある。


だから、なにかあるごとにリボンちゃんはハグしたがる。

・・・まあ、ハグはないよりはあったほうがいい。

悪い気はしないし・・・リボンちゃんにハグされると気持ちがいいからね・・・

だから文句を言うと贅沢だけど、できればそこに愛が欲しい。

チューはさすがに、まだ抵抗があるのか、おでこかほっぺにしかしてくれない。


クチビルにチュってしてくれたらめっちゃ嬉しくて幸せな気分になるんだけど。


でもさ、そのリボンちゃんのサービスって義務感から来る行動だよね。

愛情があってやってくれてることじゃないじゃん。

奉仕すれば、そうすれば救済につながって早くエボンリルに帰れるって思ってる

からだろ?


それって、ただ気持ちが空回りしてるだけだよリボンちゃん。

そこに愛はあるんかい?って言いたくなる。


「今日は大学へ行くから、家でおとなしくしててね」


「私、ついて行ったほうがいいんじゃないですか?」


「いやいや、大学について来られちゃ困るし・・・」


「なんでですか?」


「リボンちゃんが来たら他の生徒の注目の的だよ、そしたら、あの子は

誰だってことになっちゃうだろ?」

「じゃ〜紹介しなきゃいけなくなるし、なんて言えばいいんだよ」

「この子は実はエボンリルってところから俺を救済にやって来た天使だって

言うの?」

「誰も信じないし・・・俺がイカれた男のレッテル貼られるだけだよ」


「本当のこと言わなきゃいいじゃないですか」

「たとえば親戚の子とか・・・そうだイトコってことでいいんじやないですか?」


「イトコねえ・・・嘘くさ〜」

「なんでイトコをわざわざ大学まで連れていく理由があるの?」

「絶対、誰も信じないよ」


「そうなんですか・・・コミュニケーションって難しいですね」


「じゃ〜圭介さんがお勉強してる最中、様子を知りたいですから時々話し

かけてもいいですか?」


「は?・・・なに言ってんの?」


「私テレパシーも使えますから離れていてもお話できるんですよ」


「まじで?・・・天使ってそんなXメンみたいなこともできるわけ?」


「はい・・・だからスマホとかいらないんです」


「へ〜便利だね・・・けど・・・それでも講義中はまずいよ」

「集中できないし・・・」


「え〜それじゃ、私ヒマすぎますぅ」


「あっ、そうだ、圭介さんもしかして通学中に事故にでもあって巻き添え食って

死んじゃったら、そしたら私エボンリルに帰れなくなります」

「心配だからやっぱりついて行きます」

「私、圭介さんの少し先の未来だって予知できますし・・・」

「あ、危ないって思ったら事故回避できますからね」


「なんでもできちゃう子だね、リボンちゃん・・・感心」

「天使って言うよりもう超能力者じゃん」


「お任せください・・・そのくらいできないと困ってる人、救済できませんから」


「あのさ、俺が事故に遭遇することなんか心配してたらキリがないでしょ」

「家から一歩も出られないよ?」

「家の中にいたって、どんなアクシデントに見舞われるかもしれないじゃん」

「階段踏み外して下まで落っこちで頭打って死んじゃう場合さってあるし・・」


「あのさ、リボンちゃん・・・救済天使なんだよね」

「回避って言ったけど、リボンちゃんって守護天使も兼任してるの?」


「いいえ、私、救済専門の天使です」

「守護天使じゃないですけど・・・私の親友に「「バレッタ」って子が

治癒天使やってます」

「私たちは地下天使ですから・・・アンダーエンジェルとも呼ばれてるんです」


「地下アイドルみたいに言うんだね」

「あのさ、俺にかまって過保護すぎるのも逆効果になるよ、ほどほどに

しないと・・・」


「迷惑なんですか?」


「迷惑とかそう言うんじゃなくて・・・義務感で優しくしてくれても嬉しく

ないなって・・・」


「義務感?・・・優しくすることがいけないことなんですか?」


「リボンちゃんには俺の心理なんて分かんないかもしれないけど、愛情も

ないのに無理して優しくされたら、かえって切なくなるって言ってるの」


「愛情?・・・私の愛が欲しいんですか?」


「当たり前だろ?・・・ほんとの優しさや思いやりって愛情の上に成り立ってる

もんだろ? 」


「愛のない、ハグやチューはいらないよ」


とぅ〜び〜こんて乳。




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