第3話:亡くなった藤井さんの代わり。

「藤井さん、どうしたらいいでしょう、私・・・」


「なこと言われても・・・って言うか俺、大学遅れるんですけど・・・」


「大学なんか遅れても藤井さんが先生に怒られるだけでしょ?」

「救済できないと私が困るんです」

「私はエボンリルに帰れないんですよ」


「優しそうな顔して案外、自己中なんだな・・・」


「どうしよう、もうひとりの藤井さん亡くなっちゃってるし・・・・」

「救済もできなくなっちゃったし・・」


「被験体が亡くなってるから救済できませんってなんとかリルに報告すりゃ

いいじゃん」


「エボンリルです・・・これから時々出てくる名前ですから、ちゃんと

覚えてくださいね」


「いいじゃん、そんな小さなこと」


「ダメですよ・・・そんなふうに思ってるから、私のことなんか考えてくれ

ないんです」


「わがままな天使だな・・・」

「いちいち、絡んでくるね・・・言いがかりだよ?リボンちゃん」

「君、ここになにしに来たの?」


「そうでした・・・藤井さん救済しなきゃ・・・」


「だから、もうひとりの藤井さんとっくに死んでるんでしょうが」


「そうですよ・・・」

「ですけど〜、そう簡単にはいかないんです・・・一度エボンリルに帰って

古いデータ削除して新しいデータ作成しなきゃいけないし」

「管理不行き届きだってお怒られるし・・・マイナスポイント増えます」

「ますます一級天使なんて程遠いです・・・どうしよう・・・」


「けっこう面倒くさいんだね」


「あっそうだ・・・藤井さん、圭介さん、あなたが亡くなった藤井さんの

代わりに救済受けてくれませんか?」


「え?俺が?」


「いい考えだと思いません? 私頭良くないですか?」


「俺を替え玉にしようって訳?・・・そんな勝手なことして大丈夫なの?」

「だいいち俺は救済してもらわなきゃいけないようなことな〜んにもない

んですけど・・・分かんないだろうけど? 」


「いやいや何かあるでしょ?」

「気がかりなことがあるとか、眠れないとか・・・彼女にフられて落ち

込んでるとか・・・」


「悩み事があるように見える?」

「彼女にフられたように見える?・・・しかも彼女なんて欲しいけど今いないし・・・フラれる要素ゼロだし・・・」


「見えませんね」

「悩み事がないってのが悩みじゃないですか?」


「あのさ、ひとつの提案だけど・・・」

「例えばだよ、俺が君を好きになっていいなら、その時点で僕に悩みって

発生すると思うんだけど?」


「私を好きに?・・・それが悩み事なんですか?」


「男が女性を好きになるとさ・・・・胸が苦しくなるだろ?切なくなる

じゃん・・・寝ても覚めてもその人のことばかり考えてさ」


「ましてや想いが・・・たとえば相手が君だったとして君に俺の想いが

届かないってなったらもう俺は悲しくて死にたいって思うでしょうが ・・・」

「俺の人生終わったって思うだろ?」

「そういうのが悩みだし、なんとか満たされない心を救って欲しいって

思うんだよ」


「なるほど・・・深いですね」


「じゃ〜私は失恋して落ち込んでる圭介さんを救済すればいいんですね?」


「あのさ、分かってる?、どういう意味か?」


「要するに圭介さんは私に惚れて私が圭介さんをフっちゃえばいいんですよね」


「おお〜分かってるじゃん」


「で私にフられて意気消沈してる圭介さんを私が救済すればいいんですよね」


「そうだけど、どうやったら僕を救えるって思う?」


「う〜ん・・・それは」


「答えは簡単、フったあと君が俺を好きになってくれて愛してくれたらいいんだよ」

「俺の彼女になってくれたらいいんだ」

「だったら俺の悩みは解消されるだろ?」


「ややこしい理屈ですね」

「そんなまどろっこしいことしないで最初っから恋人同士になればいいじゃ

ないですか?・・・なんで無理くり悩み事作らなきゃいけないんですか?」


「うん・・・まあ、たしかに、そうだね・・・」

「でもさ、救済しなきゃいいけないんだろ?」


「そうですけどぉ」

「まあいいです・・・どうせエボンリルには帰れませんから、ここに残ることに

します」

「残って、圭介さんの他の悩みを見つけます」


「他の悩みって・・・さっき言ったパターンで行こうよ・・・面白そうじゃん」

「って言うか、もう俺、君のこと好きになってるし・・・」


「真面目にやってくださいね・・・」


「真面目だよ」


(リボンちゃん、とりあえず残ってくれるんだ、ラッキー)


「あ〜あ・・・完全に大学遅刻だ 」


とぅ〜び〜こんて乳。



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