第8話 半年ぶりの青空

☆住山紅葉(すみやまもみじ)サイド☆


お兄と一緒に行動する事になった。

当面は白馬の王子様だ。

それは私の引き籠りの修正をする為にだ。

でも正直言って私はお兄と...その。

行動しても良いのだろうか。


心臓が何だかドキドキする。

これは一体なんだろうか。

そんな事を思いながら私はスマホで連絡先を交換したお兄に慣れない感じでメッセージを打つ。


(お兄。今日は有難う)

(紅葉ちゃん。今日は大変だったね)

(うん。だけどお兄が助けてくれた。だから何か笑顔で居られる)

(まあ。おじさんもきっとお前を本気でとっちめたりはしないよ)

(そうかな)

(そうだ。おじさんもカッとなって悪かったって感じだったから)


私はその言葉に支えられながら赤くなる。

それから(有難う。お兄。説得してくれて)と柔和になる。

お兄はその言葉にこんな返事を書いてきた。


(そうだな。頑張ろうな。明日)

(コンビニぐらいだったら大丈夫だって思うから。頑張る)

(無理はしてほしくないから...俺も頑張る)

(うん。...私、髪に自信を持つ)

(ああ。だけどお前の髪の毛は気にしないで良いんじゃないか。素晴らしい髪色だぞ)

(お兄が言うんだったらきっとそうなんだって思うよ。だけどまだ自信がない)

(そうだな。お前が自信無いのも...うん)


私はその言葉を見ながら考える。

そして髪の毛を触りながら(お兄はこの髪の毛は好き?)と聞いてみる。

すると(俺はお前の髪の毛は好きだぞ。色とか全部)と書いてきた。

その言葉に何だかカァッとなってしまう。


(お兄...セクハラ)

(はぁ!?)

(だって髪の毛が好きとか)

(お前が言ったんだろ!!!!?)

(アハハ。お兄は面白いね)


私は揶揄う様にお兄と会話をする。

するとお兄は口をへの字にした様な感じでメッセージを送ってきた。

怒った様なスタンプと一緒にだ。

私はクスクスと笑いながらその文章を読む。


(ねえ。お兄)

(何だよ)

(...お兄は...銀髪の女の子と付き合える?)

(現に付き合っているじゃないか。どういう意味だ)

(違う。...そ、その)

(...?)


続きの言葉を書きたかったが書けない。

恥ずかしい。

正直踏み込み過ぎたと思う。

それを思いながら私は考える。

そして代わりに(お兄。明日も宜しくね)と話をスルーする様な感じで送った。


(あ?ああ...)

(今日はもう寝るから。お休みだね)

(ああ。そうなのか。じゃあお休みだな)

(そうそう。じゃあお休みなさい)


それから私はスマホを置く。

そして急速に赤くなる。

馬鹿じゃ無いのか私は...踏み込み過ぎだ。

でもそうか。

良く考えてみたら私が頑張りたいのはきっと(お兄に認められたいんだな)って思えたのだ。


「私もどうかしている」


そんな事を呟きながら私は机の中に入っているお兄との思い出の品を取り出す。

それは...お兄から貰ったおもちゃの指輪。

当時は何だろうかって思ったけど。

今では分かる。


「...お兄も大概だよね」


私はそう考えながらおもちゃの指輪を見る。

それから私はそれを透かす様な感じで電灯に晒した。

私は...お兄をどう思っているのか。

だけどこの感情はきっと。


「私も大概だね」


そんな事を呟きながら私はそのおもちゃの指輪を大切に机に仕舞う。

それから俺はお兄の事を想った。

これがきっと良い機会になったと思う。

そう思いながら私はそのまま電気を消してから寝る事にした。



翌日になってから私は午前9時に起きた。

そして約束の時間に私は玄関の前で待っているとお兄が「よお」と声を掛けてきた。

私はその言葉に少しだけ不安げに思いながらおずおずとお兄を見る。

正直...外に出たのは半年ぶりだ。

だからこそ不安がある。


「...お兄。私は...」

「大丈夫だ。お前の不安は知っているから。一緒に頑張ろう。きっと大丈夫だ」

「...本当に大丈夫かな。私...半年ぶりに外に出たから」


するとお兄は私の頭に手を添える。

それから笑みを浮かべて頭を撫でてきた。

私は恥じらいながら「何をするの」と言う。

お兄は肩を竦めた。


「元気になる魔法だ。効いたんじゃないか?」

「不安を取り除く魔法って事?もうお兄のアホ。逆に...」

「...逆に?」

「...ぎゃ、く、に」

「...???」


真っ赤になっていく私。

耳まで真っ赤になってしまう。

私はお兄をまともに見れなくなった。

だけど不思議だ。

そんな感情を思い浮かべると全ての外への不安の強迫観念が吹っ飛んだ。


「...お兄。有難うね」

「...何がだ?」

「私の知り合いで居てくれて」

「...正直、付き合い長いしな」

「...そうだね。だけどお礼は言うよ」


お兄は「そうか。じゃあ有難く受け取るよ」と口角を上げた。

私はその爽やかな笑顔にまた赤面する。

ずるい...私が真っ赤になっているのにそんな顔をするのが。

そう思いながらの最中で私達は移動を開始した。

それから近所のコンビニに向かう。

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