第38話 【陽奈】私だけの秘密

大変なことになった。


まさかコータとハルトが親しかったなんて。


コータとの初デートを待ち侘びながら、ハルトの家にとまってイチャイチャした。


ハルトのことも気になりながら、コータと付き合った。


2人の関係なんてしらなかったから、コータと付き合ったあとも、こっそりハルトとデートした。



‥‥私は最低だ。




今だって、2人を傷つけてしまうかもとかそんな事じゃなくて、コータが知ったらキレるんじゃないかとか、2人がそれを知ったら私を見下すんじゃないかとか、社内にバレたら終わりだとか、そんなことばかりが頭をよぎる。



なんでもっとちゃんと考えて行動しなかったんだろう。

社内なんだから、こういう展開だって予測できたはずだ。


自分の不甲斐なさと、これからの不安で頭の中がぐちゃぐちゃになって、涙が出てきた。


誰かに話したい。


でも、こんな話、、、、



その時、私はふと思い出した。


奏多さん、今週、何回も連絡してきて、暇そうだったな。しかも、悩み相談のってくれるっていってたし。

奏多さんと遊んだことあるのはコータに話したけど、別に気にしてなさそうだったし、奏多さんなら変なことも起こらなそうだ。



私は奏多さんに話を聞いてもらおうと、LINEを送った。

意外と忙しかったのか、だいぶたってから返事が来て、金曜日も忙しいって書いてあったけど、奏多さんなら、ちゃんと都合をつけてくれるだろう。



悩みの相談先を見つけて、少しだけ安心した私は、ベッドに横になって落ち着きを取り戻した。



コータが好き。

でも、ハルトも好き。


ふたりとも、全然違うタイプ。


コータは、芸術家肌で、繊細。私の知らない私をどんどん引き出してくれる。年も上だし、頼りない私を引っ張ってくれるだろう。


ハルトは、チャラそうだけど、根はすごく優しくて、家庭的。年下で頼りない感じもあるけど、ハルトとなら幸せな家庭が築けそう。




私は、どっちが好きなんだろう。

ずるいな、私。

どっちもいいな、なんて贅沢すぎる。




私のことを、ずっと好きでいてくれそうなのは、どっちだろう。



あのあと、レストランで私は、またハルトを心配させるわけにはいかないから、笑顔を作って席に戻り、楽しく食事をしてハルトと別れた。


あの話を食事の序盤で聞いておけてよかった。

おかげで、ハルトに気をもたせるような態度をせずに普通に食事ができた。

知らないままでいたら、私はついハルトに好意を向けてしまって、上目遣いの可愛いハルトのおねだりを断りきれずに、またついていってしまったかもしれない。




もう、ハルトとは会わない。

好きだけど、リスクが高すぎる。



ハルトはモテるから、私がいなくなってもまたすぐに他の女をみつけるだろう。


そうしたら、もう私とハルトのことが噂になることもない。



コータには、付き合う前のこと、ちゃんと話そう。

あとからバレたほうが、面倒だし。



シャワーからあがってスマホを見たら、コータからとハルトから、それぞれLINEが入っていた。

おそるおそる画面を開いたが、2人とも、なんてこともない日常の話を送ってきていて、ホッとした。



まだ、誰も気づいていない。

このことは、私だけの秘密だ。









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