第41話話 クエスト発動

「先輩っ、ダンジョン運営ってところからメール来てんすけど、知ってますか? ダンジョン運用計画の修正とクエスト発動って書いていありますけど」


「計画修正とクエスト発動だって? どれ、見せてみろ」



■■ダンジョン各位■■

 再生ダンジョン運用の計画修正を通達する。10の再生ダンジョンの稼働を、4月1日から3月16日に変更する。

 それと同時に、堕天使フジーコの誕生を通達し、全世界にクエストを発動する。

 各ダンジョンに於かれましては、対応の程よろしくお願いします。


ダンジョン運営本部


 尚このメールは送信専用で、返信することは出来ません。



 再生ダンジョンの稼働を半月め早め、さらには堕天使フジーコの誕生を公式に認める通達。重大な内容のはずが事前連絡もなく、メッセージもたったの数行で終わっている。


「ブランシュ、ダーマさんから何か話は聞いていないのか?」


「残念だけど、何の情報もないわ。きっとトップ3にも情報が無いなのは、神々の要求かもしれないわ」


 熾天使の管理しているダンジョンは全部で12あった。その中でも上位の3つのダンジョンが、今後の方向性を決めている。

 そして、第3ダンジョンの司令官である黒子天使ダーマは、俺とブランシュの恩師。特に愛弟子あるブランシュには、ダーマさんからそれとなく情報をリークしてくれていた。


「ブランシュさんは愛弟子でも、先輩は嫌われてるから、打ち消し合ってるんじゃないっすか」


「そんな訳ないだろ。それに嫌われてるは、お前も一緒だろが」


 ダーマさんですら、再生ダンジョンの稼働計画の変更は知らされていない。ダンジョンの外には、第3ダンジョンの手のかかった冒険者や商人達が、村を作りつつある。ダンジョンの稼働に合わせて、アジノミ草やサプリを独占する準備は出来上がっていた。


「でも、クエストってそんなに影響のある話なんすかね?」


 熾天使が堕天使となってしまったことは、天界にとっては汚点でだが、堕天使となっても存在がバレなければ問題ない。だからこそ、エンジェルナイツを率いたラーミウが、ヒケンの密林にまで出てきた。


「メンツが大事のラーミウも、堕天使の誕生を認めたんだ。クエストは当然、堕天使フジーコの討伐になるだろう」


「それじゃ、ラッキーじゃないっすか。第13ダンジョンの近くには、ダーマさんの手のかかった冒険者達がいる。オレ達には助っ人じゃないっすか」


「問題は、そこじゃない。クエストの報酬だ」


「クエスト報酬って、別にオレ達は関係ないでしょ」


「クエストの報酬が、ダンジョンだったらどうする。最下層まで到達し、攻略したダンジョンの利権が与えられるとしたら!」


 熾天使がキョードの世界のダンジョンの全てを管理しているわけではない。凶悪な魔物が眠るとされる未開のダンジョンもあれば、地上の種族が管理しているダンジョンもある。ダンジョンは莫大な富を産み出し、そこを中心として国が興る。


「フクオのエルフ族、イスイの蟲人族・トーヤのドワーフ族の治めるダンジョンは、過去のクエストの報酬だぞ」


「うっ、金目当ての冒険者達が押し寄せてくるんすね」


「残念だが、それだけじゃない。他のダンジョンの手のかかった者も来る。利権を与えられるのは天使も一緒。神々から魔力を搾取されない、自由に扱えるダンジョン。魅力的な話だろ」


 もし、自由にすることの出来るダンジョンの利権を手に入れば、ダンジョン運営は格段にしやすくなる。それは、ダンジョンの序列を大きく変える、滅多にない機会でもある。


「一応聞きますけど、報酬にされたダンジョンの天使ってどうなるんすか? お役御免ってことで、晴れて自由の身になれるとか……」


「ダンジョン運営の失敗だ。崩壊させたと同じペナルティが下るだろ」


 現存するダンジョンの数は11。そして第6ダンジョンの崩壊により、新設させたダンジョンは第13ダンジョンを含めて最低でも10はある。


 今、ダンジョンの生き残りと、序列争いの戦いが幕を開けようとしている。







■■■■更新の変更■■■■

魔女の一撃にやられて、しばらくは月水金の投稿になります。

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