第18話 全員集合
「ただいま戻りましたよっと。」
騎士団にカルト集団を引き渡して詰め所にレイシアと二人で戻る。
いつもなら隊長しかいないだろうが今日は別だ。
「ねェその話さっきも聞いたよ。」
「ん?そうか?まあ細かいことは気にするなよネームレス!ほらお前も儂の酒を飲まんか!」
「ホントにうっせえなあコイツら。本が静かに読めねえだろうが。」
ネームレスにラグナロクにROA、全員揃うのはいつぶりだろうか。
酒盛りするラグナロクに絡まれるネームレスとソファで本を読みながらキレ続けるROA。
俺はちょこちょこ会ってるけど全員で顔を合わせることは余程の任務か奇跡的に詰め所に揃うぐらいしかないからな。
「つーかラグナロクのおっさんは酒飲んでんのかよ。」
「おお!クライムも来たか、どれこっちに来い!」
「この馬鹿ときたら…。」
こんなんで大丈夫か?俺達。ラグナロクなんて完全に酔っぱらってるし。明日には酒抜けてんのか…?
「はあ…全員揃うといつにもまして騒がしいな。まあいい、ブリーフィングを始めるぞ。」
ミハイル隊長の一声から明日に向けた準備が始まる…。といっても大したことは無い。
明日の正午、友愛の国クロノの
「いいか、これから馬車でクロノに向かう。中立を保つ審判の立ち位置をとってはいるがくれぐれも向こうに粗相のないように。」
そう忠告する隊長の顔は険しい。まあ間違いなく俺たち全員揃って静かになることないだろうし。
「クロノかァいったことないなァ。」
「それはきっと幸運だろうぜ、俺はあいつら気に喰わねえ。知性ってもんをドブに捨ててやがる。」
ROAが吐き捨てる、友愛の国とはいうがその実態は殴り合い、殺し合いで絆を深める筋肉バカ魔法バカの集まりみたいな国だ。
ROAとは特に相性が悪そうなのは頷ける、いやROAもどこか魔法バカみたいな所があるし意外と相性がいいのか?
「む、というより馬車で向かのか?つまり私はこの喧騒の中で眠れと?」
「そういうことらしいぜレイシア。だから
「なんだと
俺とレイシアの会話を聞いてROAが詰め寄ってくる。
「
「ふざけんな!おい!今から俺と行くぞ
「わかったわかったから、明日終わったらいくらでも好きなとこ連れてってやるから頭を揺らさねーでくれ、気持ち悪くなってきた。」
ROAが俺の隊服をつかんでぶんぶん、ぶんぶん。オエ…。マジで吐きそうになってきた。
「人気だねェクライムは。」
「恋多きことはいいことだぞ小僧!」
「本気で言ってんのかお前ら?この
「「
「本当に喧しいな貴様ら…。」
やれやれと顔を振る隊長の顔を最後に俺は意識を手放した。般若のごとき形相で迫ってきていた2人の事は気にしないことにする。
でないと後が怖いから。
◆◇◆
「うん…?」
ガタガタと体が揺れる不快感で目を覚ます。体が痛い。
「おはよォ、クライム。」
見回すと
辺りを見回すにここは馬車の中なのだろうな。となれば寝ている間に運んでくれたわけだ。
「あァ…眠。僕は今から寝るから。着いたら起こしてよ。」
そういうとパチンと指を鳴らして描き終わったスケッチを仕舞うネームレス。
「俺が起きるまで待ってたのか?」
「いやそういう訳じゃないよ。ただ描き終えたい所まで書かないと気持ちよく眠れないだろ?」
そういうと彼は目を閉じてしまう。当たりはまだ真っ暗だ。
どれほど寝ていたのかイマイチ見当がつかないが走っている風景から大体夜明け前ぐらいだろうとわかる。
もうひと眠りするには目が冴え過ぎた。車窓から星を見ながらこれからに思いを馳せる。
「どうなるかねえ…代表選は。」
敗北などあり得ない、とはいいたいが相手の能力は未知数だ。案外致命的なほど相性の悪い相手が来たらあっさり死んでしまうかもな。
そんなことを思いながら日が昇るまでずうっと星明りだけで照らされる道中を眺めていた。
◆◇◆
「頭が痛いのぉ…肩貸してくれんかクライム。」
「なんで二日酔いするほど飲んだんだよこの
頭を抱えるおっさんに肩を貸して馬車から出る。
「あーあ、また来ちまったぜこの国。なあ
「お前はどんだけこの国嫌いなんだよROA。つか失礼なことすんなよ?一応賓客扱いなんだぜ俺ら。」
「クライムの言う通りだな。
「アァ⁉んだと武器女!今ここでぶっ殺してやろうか?」
友愛の国クロノ到着早々からソレはもう酷い有様だった。
「やめろレイシア、ROA。貴様らときたら本当に…というよりネームレス!起きろ!!もう到着しているぞ!!」
ネームレスを叩き起こしている隊長の心労は計り知れない。俺だったら絶対胃に穴が開いちゃうねこんな
これで一番年下なんだから情けない大人の反面教師にしてほしいと思うよ全く。
「ようこそ!友愛の国クロノへ。私、魔法国家レイメイ案内役のゴリアテと申します。」
他国で大騒ぎする俺たちに話しかけてくるのは案内役らしい高身長、筋肉質の男。
「本来ならば我が国の様々な観光スポットを案内したい所ですが本日は用向きが用向きだ。規約に則り、
「ああ、よろしく頼む。私は隊長のミハイルだ。こうるさい馬鹿ばかりだが悪気はないのだ。どうか気を悪くしないでくれ。」
そういうと隊長と案内役は握手をして
いよいよだ。いよいよ始まる。
「なあゴリアテっつったか。あんたは向こうの代表選の相手は見たのか?」
ROAが先導するゴリアテに問いかける。確かに向こうのグレイディの特殊部隊の顔ぶれは全く情報がない。
「私は直接会ったわけではありませんが…グレイディ担当の案内役である同僚の連絡によれば個性的、だと。」
「はーん、強いよか言われるよりそっちの方が嬉しいよな。俺達より強えなんてあり得ねえし。」
個性的、個性的ねえ。どうなんだろうか。本当はもう少し色々同僚から聞いてるんだろうがゴリアテとやらが俺たちに伝えてもいいフェアなラインが個性的、だったんだろう。
「ま、あったら分かる事だろ。楽しみにしてようぜ、ROA。」
かくして正午前、俺たちは大闘技場へとたどり着き、歓声が響き渡る。
「待ってたぞーーー!!!!!!」
「さっさと殺りあえ馬鹿ども!!!!」
喧々囂々、大闘技場は満員だ。
「あぁ?なんでこんなことに…いや確かにそうか。」
この客のほとんどはクロノの国民たちだろう。規約に則って行う都合それぞれの国の国民は代表を除いて闘技場に足を踏み入れられないため必然クロノ国民しかありえない。
といっても一部の人間、王族関係者や今回でいうミハイル隊長みたいに色々と条件付きで大闘技場に入れる奴もいるが。
「戦争、その代表戦だなんて言うけどこれじゃあまるで見世物だと、そうは思わないかい君たち。」
俺達とは反対の位置、つまりは対峙した彼ら彼女ら。別の案内役に連れられたこの
特殊部隊マンフレッドの一人、キザな態度をした男が語り掛けてきた。
何かに巻き込まれたようなそんな感覚。
開戦の時は近い。響きわたる歓声と怒号の中で俺たちは向き合っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます