第12話 ROAと俺、3日後
「んっ…ああ。」
グググっと伸びをして体の凝りをほぐす。
「ROAはどこにいるんだろうな…。」
悩んでいるようで実際大して困っちゃいない。さすがにアテもなくこの町全体を探してたんじゃあ今丁度てっぺんにある太陽が沈んでしまう。
「ま、お昼時ならあそこだろうな。」
ROAだけに限らず
ゆっくりと俺は街の喧騒の中に溶け込んでいった。
◆◇◆
ごたついた魔法杖をもってうんうんと本を見つめる彼女。
「お前も飽きないよな、ROA。」
魔法国家レイメイ、その中央に近いほど賑わいもまた一層激しくなるが今いる場所はその逆。
中央区から外れて小道を進み、やや寂れたような路地にある古書店。
街の喧騒からは大きく離れたまさしく落ち着いた場所。
「おお!
静かな本屋に響くROAの声、古書店で大声はご法度だろうが、店主と彼女との付き合いも長い。とやかく言う事もいまでは無い。
「任務行ってたんだよ、知ってんだろうが。」
「知ってるかどうかは関係ぇねえんだ、共犯者の口から聞きたいんだよ。」
「そうかい。ま、ここじゃなんだ、ちょっと歩くか。」
流石にここでずっと話し込むのも店主に悪い。ROAも特に反対しないので街を歩きながらしゃべることにした。
◆◇◆
なんだか妙に変な通り名の付く彼女こそがハウンドでも一番俺の予想がつかない狂犬。
そんな彼女と俺は街の外れ、静かな川沿いを歩いていた。
「はあ…ったくよ。3人とも出払っちまうからさ、俺がどんだけ働かされたと思ってんだよ。あんの女狐ときたらここぞとばかりに…。」
改造装飾を施した
「ラグナロクのジジイは使えねえからよ、俺がぜーんぶ出張ったってわけ!」
確かに、この街に残っていたのは隊長とROA、そしてラグナロクだけとなると実質前線で戦うのはROAだけになるだろうな。
いやまあラグナロクも「戦え」はするんだけども。
「人使いが荒いったらねえよ。おい!聞いてんのか!?」
「聞いてるよ…。ったく、むやみに街を破壊したりしてねえだろうな?」
一番気になるのはこの気性の荒さからくる破天荒な任務完了。
アリアドネの宿でのジャック事件でもそうだったがどーもROAは周りの被害を考慮しない傾向がある。
「あん?別に壊そうとはしてねえよ、勝手に向こうが壊れただけだ。」
「…やっぱりな。まーた
「つーか大体、いつも思うがなんで共犯者はそんなに評判が気になるんだよ。」
「いや折角なら人気になりてえし、モテたいじゃん?」
実際特殊部隊というなんとも格好いい響きある仕事だ。人気だってある…と思いたいが現実はあんまり評判はよろしくない。
勿論対処できないS級以上の問題解決をするわけだから感謝もされるし完全に嫌われてるわけではないがそれとコレとは別だ。
いつかの宿みたいに任務の度に馬鹿にならない被害が出たり、メンバーの人格に難がある者ばかりだったり…、
結局少しでも俺たちの事を知っていたり、現場で働くような人間からは
純粋なファンは俺たちを直に見たことの無いような…、騎士団や魔導士の育成機関の子供たちだけだろうか。
「モテるだあ…?んな必要あんのかよ。こんなに可憐で最強な美少女である俺様がいるってのによ。」
そういいながらこちらを振り返るROA、確かに長く金髪に不老によって整った容姿は道行く者すら魅了するほどだ。
ただ致命的な荒々しすぎる内面に目を向けなければ。
「あーあーウレシイナー、こんなにカワイイROA様と一緒に居られるなんてコウエイダナー。」
「感情がこもってねーぞ。」
冷ややかな視線が痛い。
「実際よ、お前も隊長もレイシアも面はいいんだがなあ…中身がなあ…、いや悪いヤツってわけじゃないけど癖強ぇんだよ。」
「俺の内面の何が悪いってんだよ!」
詰め寄ってくるROAに後ずさりする。
「だから悪くはねえよ!ただもうちょっと落ち着きってもんをだな…。」
この外見と内面で俺より年上ってんだから女ってのは分からないもんだ。
結局ROAをなだめるのに新しい服やら新作の魔法論文巡りなどに一日を使ってしまった。
たまにはこういう日があっても悪くない。なんせ最近疲れる任務をこなしたばかりだ。
ゆっくりと過ごしていたいと思うことは悪いだろうか。
ROAと遊びまわった今日という日はそれなりに俺のリフレッシュにはなった。
また明日からの任務に備えて眠りにつく。
道を踏み間違えないように、正常に生きられるように。
◆◇◆
翌朝、何の変哲もない一日。
「…朝か。早いな…眠ぃ…。」
二度寝するか…。いやここん所最近隊長の前で寝坊してばかりだ。さすがにあんまり舐めてると減給なんて言われかねない。
「あぁ眠ぃ…、ROAの野郎俺がこっちに戻ってきたばっかりだって言ったのによ…。」
さんざん引きずり回されたせいで体の疲れがまだイマイチ取れてない。
起き上がって顔を洗い、いつものように支度をする。
「うん、やっぱり俺は正常だ。」
いつものように支度をする。
魔法国家レイメイは今日も今日とて変わらない。
詰め所に入るといつものように隊長が仕事していた。
「おはよーございまーす!今日も早いっすね、姉さん。」
「ああ、おはよう。クライム。今日は…遅刻してないのか、珍しいな。」
「珍しくはねえっすよ。」
なんだかもう遅刻前提みたいな言い方だ。いや確かに最近は遅刻してたけど普段はあんまりしないんだよ?
「他の奴は…まあいないっすね、知ってましたけど。」
「ああ、皆見回りだ。」
実際どうなんだ、ネームレスとかラグナロクとか絶対見回りやってねえだろ。画描いてるか酒飲んでるだろ。
案外まだ起きてないかもしれない。
「今日は特に急ぎの問題は無い。ああいや、グレイディに宣戦布告されているが特に問題は無い。」
「…問題しかないように思えますけど。」
当然そうなるだろう、なんせ
失敗したとはいえじゃあやっぱり無しで、というわけにもいくまい。
「グレイディに送られているスパイからの情報だがレイメイが軍事、及び騎士団、魔法術者の質において劣る部分は無いだろうとのことだ。ま、向こうの
「それって結構マズいんじゃねーんすか?」
全くの未知数なら何が起きてもおかしくないが。
「色々と国同士の揉め事には裏があるもんでな、宣戦布告を出したとはいえ実際にはもっと様々なやりとりが行われているんだ。パフォーマンスといってもいい。」
「…つまり?」
「お互いの不利益を考えるとな、どちらかの国が崩壊したり…というようなことは無いんだ。精々が属国になるぐらいさ。」
属国になるっていうのを精々なんて言葉で納めるべきではないと思うが。
「喧嘩売ってきたのは向こうだ、こっちは適当に買うだけだ。」
「3日後、代表戦で決める。それぞれ各国から5人、腕に覚えのある者を出してやるアレだよ。」
なんだか言いたいことが分かってきた。
「お前たち全員で向こうの馬鹿どもをぶっ飛ばしてこい。分かりやすくていいだろう?」
ニヤリと笑う隊長の顔はとても楽しそうだった。
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