第22話 控え目に言って最低
本日4話更新予定です。2話目。
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なんだ? なにしてたっけ?
今日は、弟と、カノさんと、私を加えた久しぶりの遠征隊三十人編成。
カントリーエレベーターから先の、低温倉庫に向かう遠征に出ていたはずだ。
……い。……きろ。
……いさん。……きて。
なにか、あったよな。
偵察隊が低温倉庫の先で小山を見つけて、小山にでかい洞窟があって、洞窟にモンスターが住み着いてないか確認に……
「いい加減起きろ! くっそ! 嬢ちゃん! そのバカ! 叩き起こしてくれ! 起きなきゃ! 見捨てるしかねぇ!」
「お兄さん! ごめん! なさい! 起きて! 囲まれてます!」
「いっ。ぶっ。おっ。おきぶっ。起きた! 起きたよ! えっなに!?」
両頬に交互に伝わる痛みに、意識が覚醒する。
妹の親友のカノ・ミライさんと、私とカノさんを背にかばい戦う見知らぬ男性がいる。
え、マジで意味わからん。ゴブリン!? 戦わなきゃ! 剣スコは? 握ってる!
「立て! 武器持て! 自分の身くらい守れ!」
「わかった! っ! 囲まれてんじゃん!」
「だぁから! さっきっから言ってんだろうが! やれるな? 根性見せろ! ……ゴブとホブはやれそうか。やっぱ守る戦いは疲れるわ……」
カノさんと私が自衛できるのを確認した男性は、守る動きからスイッチを切り換えたように攻勢を強めている。
私は剣先スコップ、カノさんは鉄パイプに鋼材を接合したメイスでゴブリンは一撃。
私より少し大きいゴブリンは、カノさんと連携して、三発か四発で撃破。
オオブタや二足歩行の牛は、二人では時間がかかると思ったけど、こちらには流れてこない。
流れてくるのは、大小のゴブリンだけだ。
男性が大小のゴブリンは無視して、オオブタと牛を優先して倒している。
しばらくして、呆気なく戦闘が終わった。
やっぱり私が寝ていたことで、かなりの負担をかけたっぽい。
それにしてもこの男性強すぎる。戦い慣れている感じだ。
片刃の大きな剣鉈のような双剣を嵐のように振り回し、飛んで跳ねてビームまで出していた。
「二人とも怪我はねぇな? オレもお前らも聞きたいことだらけだが、ここを出てからだ。ここはお前らには、ちっと厳しいはずだ」
「すみません! ひとつだけ、他に、他に人がいませんでしたか? 一緒に行動していたのですが……」
「他? 何人だ?」
「私たち二人を含めて、十五人です」
「十五人も? いや、オレはお前ら二人だけしか見てねぇよ。お前らも突然出てきたからな」
「そう、ですか。あ、すみません。助けていただきありがとうございました。怪我はありません。私はサトウ、こちらの女性はタナカさんです。
貴方の指示に従います。よろしくお願いします。タナカさんも怪我はない?」
「はい。私も怪我はしていません。よろしくお願いします」
カノさんの少し前に出て男性の指示に従うことと偽名を伝え、カノさんに目配せをする。
カノさんが不安そうに私の服の後ろを掴んでいるのがわかるが……そのカノさんの存在で混乱せずにいられる。
この男性に襲われたら、カノさんと私の二人がかりでもどうしようもない。
今は下手に抵抗せず指示に従ったほうがいい……はずだ。
唯一の勝ち目は私の「格納」で捕らえることくらいだけど、不意を突くくらいでしか勝機がない。
「サトウとタナカ、な。オレはスズキ。二時間は早歩きで移動続きになる。さっきほどじゃねぇが魔物も出る。集中しろよ。
オレが先行する。……二人はオレから少し距離を開けてくれ。オレとお前らのためだ。お互いに不用意に近付かないようにするぞ。わかったな。そんじゃ行くぞ」
スズキさんも警戒を隠すことはせず、私たちと常に一定の距離を保っている。
敵対することが無いように、願うしかない。
弟は、遠征隊の他のメンバーはどうしたのか。
あの小山には外に弟を含めた十五人に待機してもらい、半分の十五人で入ったはずだ。
心配ではあるけど、カノさんと私が心配される側だと確信できるくらい、彼ら彼女らは強い。
今はここを脱出して、すぐに遠征隊に合流しないといけない。
スズキさんは一人っぽいけど、あの低温倉庫まで一人で? あの強さならあり得そうだ。
本当にここはなんだ?
洞窟なんだろうけど、壁自体が光っているのか、電球などの光源もないのに、はっきりと先まで見える通路。
通路も真っ平らではないものの、普通に全力疾走出来そうな足元と、大型のトラックが二台は通れる広い空間だ。
大小のゴブリンとオオブタと二足歩行の牛。四種類のモンスターが出てくる。
牛は牛頭に首下から人体のミノタウロスではなく、牛が直立している。
めっちゃバランスが悪い。軽トラほどのサイズで俊敏に動くから強敵だ。
オオブタと牛は、カノさんとの二人がかりでも時間がかかるのを、スズキさんが察して瞬殺してくれる。
……スズキさん、めちゃくちゃいい人では?
私たちが遅れていないか気にかけてくれるし、戦闘後もカノさんと同じように、私にも怪我や疲労がないかを確認してくれる。
何より、私が寝ている間にずっとカノさんと私を背にして、守ってくれていたんだ。
彼の実力があれば、あのときに全て彼の思うように出来ただろう。
でも、それをせず私が起きるまで戦い、叱咤激励をしてくれて、戦闘のフォローまでしてくれる。
現状、どこからどう見ても命の恩人である。
恩人に道案内をさせ、移動も戦闘もフォローしてもらい、寝ていた謝罪もせず、偽名を伝える私。
……もしかして控え目に言って最低では?
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tips ダンジョン
地球が他の世界からパク……愛する者の試練に地上と海中に用意した。修練場としての意味合いが強い。
アキト達が入場したのはモンスターや原始的な罠、魔力的な罠のある洞窟型。
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