第19話 シンプルに強い
本日2話更新予定です。1話目。
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最初の遠征から数えて五回。
私が遠征隊の隊長になって、四回の遠征が終わった。
初回と二回目以降は、三日から五日に一回の頻度で遠征している。
ホント年上が多い環境だと、号令出すだけでも毎回毎回変に疲れるわ!
母が参加した遠征は、私の授業参観みたいになっているし!
メンバーを減らしたり変えたり試行錯誤して、五回目は今までで最少人数の二十人で無事に終えることができた。
カントリーエレベーターに行くだけなら、祝福などいくつか条件はあるけど、それさえ満たせたら現参加者でも五人前後で行けると思う。
まぁそこまで無理して、少人数で遠征するメリットは少ない。
我が家からは、弟と私は祝福的に固定メンバー。
女性陣は一人一回は参加して、外の様子に一喜一憂していた。
なお、父は祝福の燃費の悪さで辞退している。
カントリーエレベーターに仮拠点の設営が計画されているので、そのときに父には活躍してもらう予定だ。
意外と言ったら失礼だけど、女性陣は遠征で活躍していた。
妹とカノ・ミライさんは同じ「癒手」の祝福。
怪我の治療、疲労回復、病気の治療などができるらしいが、父の「防壁」並に燃費が悪い。
私たちも避難所でも、幸い大きな怪我を負った人は出ていないけど、本領発揮することがないのを願うしかない。
もしもの備えとして、「癒手」持ちは遠征に一人は来てもらいたい人材である。
自己回復が常にかかっているらしく、無尽蔵の体力で走り回れるのは羨ましい限りだ。
母とヒムロ・アカリさんは、同じ「強化」の祝福。
自身の肉体と装備した物品を謎エネルギーを消費して、文字通り強化できるらしい。
強度を増した武器を上昇した身体能力で叩き付ける、シンプルに強い戦いができる。
完全に前衛戦闘向きの祝福。
と思いきや、石を投げるだけでも脅威になる遠近両用の戦士である。
燃費は「飛行」と似ていて、常に低出力で強化が可能。上
限出力を超えると、謎エネルギーの消費が爆増する。
遠征で活躍するのは「飛行」か「強化」を持っている人だ。
……やっぱり「格納」って地味では?
遠征を続ける理由は色々あるが、その一つが田植えを主目標とした食料確保だ。
遠征初回で入手した種もみから芽出しや植え替えを終えている。
人力で田んぼもいい感じに整備して、避難所周辺での田植えも、ほぼ終えている。
しかし、日を追うごとに、懸念されることがいくつか。
気温が一定すぎる。
地球の声が初めて聞こえた日から、気温が朝晩関係なく一定の気温。
あの日から一月半は経っているのに、今も変わらない気温は、二十度をキープしている。
作物が育ちすぎる。
我が家の家庭菜園や避難所で管理する畑でも、旬なんか関係なく育つ。
地面に落ちた米の種もみから芽が出て、普通に育っていたから異常すぎる。
二つだけでも異常だ。
気温が一定なのも、それを無視して作物が育つのも、とても助かるし困ることではない。……雑草もすくすく育つのは困る。
でも、このボーナスタイムが、いつまで続くかわからない。
今日には終わるかもしれないし、一生続くかもしれない。
明日には、大規模な気候変動が起きるかもしれない。
ボーナスタイムだと思って、今はそこら中に長期保存のできる作物を手当り次第に植えたりもしているが、連作障害とかあるのかね。
今の地球は、想像できない何かが起きても不思議ではないので、できる限りの食料確保のために遠征を続けている。
……オオブタの肉も食べたいからね。
あの食べられると判明した、謎の実も美味しい。
食感は全部リンゴっぽいけど、種類によって味が大きく違い、食卓が豊かになった。
物によっては、食べると疲労回復や美容など、様々な効果がわずかにあるようだ。
女性陣で、美容の実に対する取り決めもできたらしい。
それを解析して、大活躍した祝福を持つ女の子は、
「祝福が微妙過ぎる! もう解析できるものがないよぉ」
と落ち込んでいる。
なぜなら、解析できる物品は大災害以降に新しく発生した、生物を含む物品にしか反応しなかったからだ。
そのへんの石ころからスマホに至るまで、大災害以前からあったものは、何も解析できないと嘆いていた。
地球の声が初めて聞こえた大災害の日から、一ヶ月半。
暦上は五月に入り、本来ならゴールデンウィークで浮かれていたはずの時季。
元の生活水準に戻ることは、あり得ないと思う。
それでも、得られた祝福や上がった身体能力でゴブリンを殴りながら、なんとか生活水準を徐々に高めていけるようになったんだけど……
これからどうなるのかね。
出来ることなら、このまま平穏に暮らしていけたらいいなぁ。
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tips フラグ
英語で旗を意味する。
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