第18話 言い出しっぺの法則です!

本日4話更新です。4話目。

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「……の理由はわかりました。皆さんにお怪我がなくて良かっ……」

「……で明日も行くのか? 問題ないなら避難所のみんなが助かるが……」

「……の祝福でこのオオブタのお肉を調べられないかしら? 今日新しい祝福を……」

「……カントリーエレベーターに仮拠点? そいつは大仕事になるから、代表会議で……」

「……の隊長と副隊長は、たしかに必要だったわ。それなら格納ができる……」


 近辺で新しく発見された巨大な謎の生命体は、「オオブタ」とそのまんまな名前で自然と呼称されるようになった。


 オオブタを倒した私たち遠征隊は、本来の第一目標である崩壊したカントリーエレベーターの探索と、オオブタの解体を終わらせて予定時間よりも大幅に早く帰還することに。


 カントリーエレベーターまでは片道三時間。


 荒れ果てた道、乱立する謎の樹木と草、ゴブリンやオオブタなど進行の妨げになる要因が多数ある。

 人数が少なければ負担も増える。


 初回で慎重に進んだけど、三十分も短縮できれば上出来なはずだ。……直線距離を最高速で飛んで行くなら十五分かからずに行けそうではある。

 でも、飛行できる人も多くはないし、少数じゃ危険だからなぁ。


 あまりに早い帰還に、驚きと心配の声で迎えられた。

 事情を説明して、明日もう一度同じメンツで遠征へ出ることを伝える。


 明日の朝に再集合を約束して、各自の拠点へ帰還することになった。


「これが、そのオオブタの肉なんだね。不思議な肉だねナツコ」


「肉質は少しサシの入ったヒレ肉のようですが、内蔵も無く、全身が同じ肉質というのも意味がわかりませんね」


「アキトお兄さん、このお肉は食べて大丈夫なんですか? 美味しそうですけど……」


「カノさん、分析だか解析だかできる祝福を得た人がいてね。食べられるって言ってたよ。な? トウジ」


「その子が肉大好きみたいでさ、みんなが止めるのお構いなしでバクバクうまそうに食ってたよな。おれらも食ったし」


「お兄ちゃんたちも食べたの? アカリちゃんも? 大丈夫なの?」


「大丈夫だよハルぴ! うちらもお腹減っちゃって食べたけど、今もなんも異常ないよ。めっちゃうまかった! 元気出るよ!」


「謎の木に生ってる実も食べられるって。今日祝福を得たばかりだから色々調べるらしい。全体に関わりそうだし、次の代表会議でどうするか話すみたいだよ。父さん」


「あの実って食べられるんだね。種類もありそうだし、気味が悪くて手を付けていなかったから忌避感があるんだよねぇ」


 自宅拠点で今日の出来事を共有した。

 オオブタを調理してもらった夕食をいただきながら、弟とヒムロさんの活躍を自宅拠点に残った四人に話す。


 父たちも自宅から離れすぎずに、ゴブリン退治を午前だけやったみたいだ。


 母たちの調理の腕がいいのか、避難所で食べたものよりも格段にオオブタの肉が美味しい!

 躊躇してた妹とカノさんも気に入ったようで、久しぶりに動物タンパクをいっぱい食べることが出来て満足そうだ。


 生姜焼きはホントご飯泥棒だよ。

 ヒレ肉っぽい肉で生姜焼きも美味い! カントリーエレベーターでもみや玄米の状態だけど、米が大量に見つかって本当に良かった! 今年の田植え頑張らないとな!


 カノさん、私の活躍? ……オオブタを一発殴って……うん……肉の塊を運んだくらいかな……


「アキトお兄さんは運搬担当で行ったんですから、戦いで活躍なんかしないほうがいいんですよ! いっぱい持ち帰っただけで、大活躍です!」


 ありがとう。そうだよね! 私は格納で運搬が担当だもんね!



 翌日の朝。

 弟、ヒムロさん、私の三人で二回目の遠征のために避難所へ向かうと、私が遠征隊の隊長になっていた。……なんで?


「いや、なんでってシキ、昨日格納持ちの中から隊長選ぶってなったじゃん。隊長って言っても号令かけるだけだし」


「格納持ちの中で一番年長がアキトくんなんだよ。年上が多いけど、萎縮しないでね。みんなでフォローするからさ」


「シキさんの言いたいことはわかるわ。でも、護衛班も偵察班も隊長やってる暇がないのも、昨日参加したからわかるでしょう?」


「あれ? おれは兄ちゃんが隊長引き受けるから、昨日隊長が必要なんだって提案したのかと思ってたわ。兄ちゃん格納持ちじゃん」


「アキっち隊長! これは言い出しっぺの法則です! びしっ!」


 ヒムロさんキレイな敬礼だねぇ……お? おお? これはマジだ。マジで私が隊長やる感じだ。

 うわぁ。半数以上年上だから、やり辛すぎる! 副隊長! 一緒に頑張ろうな!



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tips 広域農道

 大型の農業機械や農作物輸送の大型車両が通る、規模の大きな農道。地域の主要農道。農地間、消費地域、各施設へのアクセスの向上などを担う。

 信号も少なく交通標識が設置されていない区間が多いため、法定最高速度時速60kmでかなりの距離を走行可能。

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