第12話 鋭意努力中です
本日3話更新予定です。1話目
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「お兄ちゃん、ナイスひざカックン! ミライちゃん!」
「っ! やりました!」
「カノさん、グッジョブ!」
「コンパクトでいいスイングだねぇ」
ゴブリンの頭部に、鉄パイプをフルスイングした妹の親友カノ・ミライさんに、父と妹と私が親指を立てて労う。
カノさんも少し恥ずかしそうに親指を立てているけど、嬉しそうで何よりだ。
現在、父と妹とカノさんと私の四人で、午前の見回りと言う名の、ゴブリン狩りに出ている。
新たな祝福を得て数日。
父と弟も祝福を得ることができたため、早急に全員が新たな祝福を得る必要があった。
以前は偶に女性陣の誰かが一緒することはあったけど、基本的に午前中のみ男性陣三人で見回りをしていた。
今は午前と午後に、見回りを増やして女性陣も毎日参加している。
メインの女性二人とフォローの男性二人、毎日組み合わせを変えている。
最年長の父を酷使するわけにはいかないので、弟と私が一日交代で午前午後の両方に参加している。
必然的に生活力の低い男性陣も拠点内の仕事を手伝うのだが……うん。
生活力が低くてごめんなさい。鋭意努力中です。
避難所にも危惧すべきことを含め全て情報提供して、避難者全員が知ることとなった。
避難所周辺では、今もゴブリンが乱獲されているだろう。
「ストレス解消になるよ」と、情報交換した中年の女性が、笑っていたのが印象的だった。
参加者最年少の五才の幼女も、躊躇することなく大人が押さえ付けたゴブリンを倒した。
と複雑な表情で、幼女の父親が言ってた。
やはり、なんらかの精神作用があるのだと思う。
同じ見回り組の人も数人が新たな祝福を獲得した。
私の「格納」、弟の「飛行」、父の「防壁」と同じような祝福や、「強化」「吸着」「衝撃」など色々な祝福があるみたいだ。
……今度見せてもらえないかな。
午前の見回りから情報交換のために避難所に向かうと、防壁の出入り口前に人が集まっている。
悪い雰囲気は感じないが、動揺しているようにも見える。
怪我人が出たんだろうか?
「三人とも避難所の様子に気付いた? なにがあるかわからないし、離れすぎないようにね」
「はーい。お父さん。ケンカしてる感じもしないし、なんだろ?」
「こんなことってよくあるんですか? アキトお兄さん」
「怪我人が出たときはあんな感じ……かな? いつもより人が多い気がするけどね」
少し警戒しながら四人で近付くと、五人の自衛隊の装備をした人物が目に映る。
防壁の出入り口で、避難者の代表者三人と話しているようだ。
「あ! シキさんいいところに! 今、自衛隊の方々が来たところなんだ。これから壁内で、代表者と話し合いをすることになってなぁ。全員だと収集が付かないだろ? シキさんも参加してくれないか」
「わかりました! 私も参加させてもらいます。家族も一緒なので、少し待ってもらえますか」
「シキさんありがとう。自衛隊の方々を、いつもの会議場所に案内するよ。どうやら話し合いが長くなりそうで。参加は遅くなっていいから……
見回りでお疲れのところ、申し訳ない。では、先に行ってます」
「いえいえ、お気になさらず。
……アキト、ハルカ、カノさん。三人はここで軽く情報交換をしたら、ナツコ達にも自衛隊のことを知らせてほしいし、私を待たずに帰ってね。自衛隊との話し合いは長くなるみたいだけど、さすがに明日の朝までかかるなんて……ないと思いたいなぁ。
今日は避難所で泊まらせて貰うよ。三人は明日の朝食後に、念の為全員で避難所に来てほしい」
「わかったよ、父さん。無理はしないでね」
「そうだよ、お父さん! 明日の朝フラフラしてたら、お母さんが心配しちゃうよ!」
「わかりました、シロウおじさん。明日お迎えに来ますね」
「うん。それじゃ私はこのまま行ってくるよ。拠点のナツコたちによろしくね」
父を送り出して、避難所からの帰り道。
妹とカノさんが鉄パイプでゴブリンを殴り倒し、私は周辺警戒などフォローしながら、どうしても自衛隊のことを話してしまう。
「アキトお兄さん。自衛隊の車両って見当たりました?」
「ん? そういやリュックは背負ってたけど、車とかバイクは見てないね。ハルカは見た?」
「あたしも見てないよ。トウジお兄ちゃんみたいに飛んできたんじゃない?」
「あぁ、あり得そう。……飛行いいよなぁ。ヒーローの必殺技まんまの飛び蹴りを、現実で見ると思わなかったよ。父さんの防壁も派手だし、おれの格納って地味過ぎない?」
「お父さんのは燃費が悪いみたいだけど、たしかにお兄ちゃん地味だよね。あたしも、早く新しい祝福欲しいなぁ」
「もうハルカちゃん。アキトお兄さんの格納だってすごいよ! 重さを気にしなくて、食料の保存もできるんだから」
「ありがとね。カノさんはホントいい子だよ。ハルカはもっとおれに気を使え。それじゃ、おれが地味みたいじゃん」
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tips 避難所周辺
避難所の小学校跡地周辺は田畑が広がり、農業用水路が流れている。
少し離れた所に民家と、手入れされていない雑木林や竹林がある。
数年前に個人商店は全て廃業し、周辺にはドリンクの自動販売機と郵便ポストしかない。
災害以前でも避難所から一番近いコンビニは車で10分、スーパーマーケットや最寄りの駅は車で20分。
年々過疎化が進み、世帯数は減少する一方だった。
過疎地域ではまだ恵まれた方でもある。
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