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その夜、軍の本部。スミノフに与えられた研究室では、一人の軍人が顔を出した。
「お久しぶりです。スミノフ室長」
金髪の少女は、敬礼をして入室する。スミノフも作業の手を止め、少女に向き合う。
「久しぶりだね。カトライエ二尉。最後に会ったのはいつ頃だったかな」
「〈ダイナリノン〉に移る前ですね。あの時は、忙しくてまともに話せませんでしたが」
「ああそうだ。すまないね、時間を取ることも出来ずに」
「い、いえ……室長がそのようなことを仰ることはございません」
「はっは……君も軍人らしくなってきたね。して、“計画”は?」
「兵器の建造は、着々と。しかし、レティシアは我々の計画通りに行動するのでしょうか?」
「するよ」
スミノフは珍しく言い切った。カトライエは唾を飲み込む。カトライエの肩に重圧がのしかかった。
「それで、室長が作業なさっているのはナンバー0ですか?」
「そうとも。今のところ、これが完成形だ」
スミノフとカトライエが指しているのは、紛れもなく昼間レティシアとヒバリに見せた、ケースに入ったレティシアのことだった。
「美しいですね。これほどまで生身に近づいたボディはこの世に存在しないでしょう」
「ありがとう。折角だからナンバー1の方も見ていくかい?」
「よろしいのですか?」
「ああ、目的は明確に統一されていた方がいいからね」
「では」
スミノフは、奥にあるデスクで電子キーボードを打ち込んだ。床の下から格納されたもうひとつのレティシアが出てくる。厳重に保護された専用ケースはカトライエをいっそう厳かな気持ちにさせる。
「──これが。これほど極限化された兵器を私は見たことありません。0と見た目は何一つ変わらないのですね」
感嘆の息を漏らし、矯めつ眇めつ眺めるカトライエにスミノフは研究者冥利に尽きる思いだった。
「ハハハ、これで安心してもらえたかな? 計画は万事順調、我々に抜かりなど一切ないのだよ」
「その通りでございますね。これだけのことをしてもらったのですから、レティシアは望外の喜びに違いありません」
再会するのが楽しみですわ、とカトライエは呟く。
「二尉はどうだね? 時期はまだ早いが検診でもしていくかね?」
「いえ、次の任務があるので。失礼します。後の役目は私にお任せください」
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