第49話 魔法とは…

 試食会も終盤に入り、招待客も少なくなってきた。招待客といっても、ジュリアさんとアレグリアの知り合いと、ご近所さんだけなのだが…。


 だが、一組だけ超大物がいる。もちろん王家筆頭魔術師のシーザリオ様と従者のメサイア様だ。だだし、VIPとして特別扱いをするつもりは無い。本人もそれを望んではいないからね。


 ジュリアさんとリスグラシュー、それにアパパネにもその旨は伝えてある。


 そして入り口のドアが開き、メサイア様が現れ、その後にシーザリオ様が入ってきた。



「いらっしゃいませ」



 ここはジュリアさんが対応する。間違っても店員全員で元気よく『いらっしゃいませ!!』とは言わない。このレストランは大衆店ではなく、お洒落で少し高級なレストランを目指す事になったのだ。雰囲気作りも大切なのである。


 しかし、特別扱いしないといったが、二人が店に入ってきた瞬間、店の雰囲気が変わった様な気がした。特にドレスアップなどはしていない普段着なのだが、二人の醸し出す雰囲気はリーズの人達とは明らかに違っていた。



(…何か近寄りずらいオーラ的な物が出ている。明らかに俺とは住む世界が違う人種という気がするな。圧倒的な勝ち組の匂いがするが、俺の劣等感からそう思うだけなのだろうか…)



 俺はそう思わずにはいられなかった。


 確かにアレグリア達も超が付くほどの美形なのだが、雰囲気は結構気さくで話しやすい。でもこの二人は…無理!!。絶対に三人にはしないで頂きたいです。アレグリアさん、二人の対応をお願いいたします。



(まったく…人生相談に来たときは何も感じなかったのに…。こういう人たちは時と場合により、オーラをONにしたりOFFにしたりできるものなのだろうか?)



 俺は自分の小物感を棚に上げ愚痴る。



(大体がこの状況って…普通に暮らしてきた庶民がいきなり国の要人のお世話をするって状況じゃないか…。俺には到底できないよ。でも、俺には俺の…小物には小物の奥義がある。ふふふっ、どの様な状況になっても自分の存在感を消すという究極の奥義…普段から居ても居なくても同じだと言われたら反論できないが…)



 俺は店の隅で存在感を消し去り『ジッ』と二人が帰るのを待つ事にした。すでにシーザリオ様から警戒されているとも知らないで…。



 店の片隅で存在感を消しながら、二人がパスタを食べる様子をうかがっている。



(…まるで女優だな。ただ普通にパスタを食べているだけなのに絵になっている。本当にお上品で優雅な振舞いだな。まあ、こういう女性は近寄らないで、遠くから見ているだけでいいんだよ)



 二人がパスタを食べ終わったようだ。とびっきりの笑顔でアレグリアに話しかけている様子を見ると、かなり満足しているのは明らかだった。


 俺はひとまず安心をし、二人が帰るのを待っていたのだが…。



「ハヤト、こっちへ来て!!」



 アレグリアが俺を二人が座る席へ呼ぶ。



(行きたくねぇ~よ!!)



 そう思ったが、ここで行かないわけにはいかないだろう。顔には出さないが、渋々三人が待つ席に向かった。



「どうも…ハヤトと申します」


「ふふふっ、かしこまらなくて良いですよ。私は気にしませんからね」



 シーザリオ様が笑顔で言う…が、その笑顔が怖い。



「シーザリオ、あなたが言うと怖いんですよ。ハヤト、気を使わなくても結構ですよ」



 メサイア様がそうは言うが



(あなたも十分に怖いですよ)



 と、思ってしまう。



「シーザリオ様、私の願いはハヤトに魔法が使えるようになる方法を教えてもらいたいのです。ハヤトには魔法の才能があるのです」


「魔法の才能?」



 シーザリオ様の顔が一瞬、険しくなったが



「魔法とは簡単に言うと、体内にある魔力を頭で思い描いたイメージと一緒に放失したものと考えてください。そして人それぞれ属性を持っていますが、その属性の魔法が一番使えるし、伸びしろもある。最終的に得意属性の魔法しか役に立たない。私なら水属性以外の魔法は使えない事は無いが、実戦では役に立たないから使いもしないし練習もしないものよ」



 と、分かりやすく説明してくれた。



「それで、使えるようになるには、どうすれば…」


「使えるようになるには、体の中にある魔力を体の隅々まで循環させる必要があります」


「循環させるにはどうすれば…」


「まあ、少し待ちなさい。私は先代の王家筆頭魔術師、まあ、私の恩人だが…その人に魔法の才能を見出された。魔法使いが魔力を持っている人間の体を触ると分かるのです」


「そうなんですね」



 俺はシーザリオ様の話を興味深く聞いている。シーザリオ様が水魔法を使うのを見て、魔法について非常に興味が湧いてきたのだった。



「…そこで問題があるのです」


「問題?」



 俺とアレグリアは首をかしげる。


 シーザリオ様はもう一度、表情を険しくして言う。



「なぜ、ハヤトに魔法の才能があると言えるのですか?」


『……………』



 俺とアレグリアは無言になってしまった。






【シーザリオとメサイアの会話】


 私達は試食会に招待され『ベガ』というアレグリアの実家の宿に向かう。リーズの街を見て回りたいので、馬車を使わずにのんびりとメサイアと話をしながら歩いていく。



「メサイア、アレグリアをどう見ました?」


「ふふふっ、まるで数年前の自分を見ている様でしたね。彼女は今、伸び盛り。きっとシーザリオとの戦いも非常に良い経験になったと思うわ」


「確かに…。しかし…どうにも解せません。なぜ彼女がFランクなのでしょうか…。急に実力が伸びたと言ってはいたけど…そのようなレベルでは無かったわ」


「そうね。彼女の槍を受けた時の衝撃…。少なくとも、Cランク…否、Bランクだとしてもおかしくはないわ」


「それに…彼女の恋人という少年、メサイアは何かを感じた?」


「リア充死ね!!っと…それは…まあ、冗談として、違和感は感じたわ。何だろう…すべてを見透かされているような感覚…」


「確かにそうね…その感覚は分かるわ。でも、彼の後ろには、得体の知れない何かが付いていると思う」


「得体の知れない何か?」


「そう…例えば、加護」


「加護ならシーザリオ、あなたも持っているでしょう」


「そうね…水の精霊様の加護を…。しかし…彼から受けた感じは…精霊様の加護とは比べ物にならないくらいの巨大な力…」


「きょ…巨大な力!?私にはそこまでは…でも、あなたが…シーザリオが感じたなら確かなのでしょうね」


「普通の人間なら分からないわ。次元が違いすぎて違和感さえ感じないでしょう。私が加護持ちだから、感覚的に何かを感じ取れるのかもしれないわ」


「でも…どうするの?」


「まあ、彼の人となり次第ね。出来れば良好な関係を築きたいと思うわ。出来なければ…」


「出来なければ?」


「私達の命を懸けてでも…始末しないといけないかも…」


「!?…そ、そこまで…」


「はははっ…最悪の場合はね。でも彼からは邪悪な感じはしない。何というか…表現が難しいわね…。凄い力を感じるのですが、優しさというか癒しの力というか…。案外、マリア様の加護を持っていたりしてね」


「ふふふっ、マリア様の加護か…。それが本当なら二人して嫁にもらってもらいましょうか」


「あはははっ、メサイア。それは素晴らしい提案ね!!」



 そんな話をしながらリーズの街を歩いていたら、遠くに『ベガ』の看板が見えたのでした。



 ☆☆☆☆☆★★★★★☆☆☆☆☆★★★★★


 あとがき


 今日は振替休日でお休み…忘れてた。仕事もお休みだったので、予定外の更新をします。同じような人、いるのでは?


 あと、気が向いたら☆を付けてください。お願いします。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る