第8話「月夜のヮルツ」

ーー面倒くさいな。

でも、練習しとかないと…。

後で痛い目に遭うのは嫌だ。

やると決めたからには、完璧に…。

もう、日付けが変わる。

やる事もないので、店に行くか…。

「おう。モア!」 

ーーなんで、人間のくせにこの時間で晴れやかな顔なんだよ…。

これから、苦しい特訓が始まるとも知らず。

ーー今夜は、もう店を締めるらしく。

店先だと、薄暗い。

ソレイュの部屋は、散らかってる。

月明かりの方が全体的に明るいか?

屋根でやる事に。

 踊った事ある?

「?…ぁあ!簡単なのならダントンさんのスヮリィで。」

ーーふぅん。

お手並拝見。

 三拍子で踊るやつ知ってる?さぁ手を、教えてあげるから…。

ーー簡単なのでいいか。

 ァン、ドゥ、トヮの三拍子で…。

顔は、真っ直ぐ。

姿勢は、正しく。

胸を張る。

さぁ、ァン、ドゥ、トヮ。

脚は、前。

後ろ。

横。

回りながら進む。

「こう…か?」

 もっと、顎をひいて。

ーーこれは、時間がかかりそう。

背骨そっとなぞった。

「〜ッ!!」

 身体が傾いてる。

ーー肩を少し押して顎の角度を変える。

 お前は、身長があるから会場でも目立つよ。

「そうか?…わっ!」

>>とすっ

ーー躓くなよ。

受け止めるこっちの身になってくれ。

「…。」

 何?

「ぃや…その…ありがと。」

ーー何?

その何とも言えない顔。

 見てるからやってみて。

ーー周りをぐるりと回る。

>>ごっ

 違う。逆。

「いぃ''ッ!」 

ーー脚を蹴った。

何故、こんな簡単な事ができない?

 腕は、もう少し上。

ーーすぅっと二の腕に手を添えた。

「〜ッ!!」

>>がっ

 身体が、傾いてる。

「い''ッ!」

ーー肩を叩いた。

  顔は、もう少しこっち。

ーーそっと頬を傾ける。

「〜ッ!!」

 相手の眼を見て微笑む。ほら、いつも店でしてるの。

ーーうぅん…。

それだけ、合格。

 これから、毎日練習する事。

ーー必要な事は教えた。後は知らん。

「ぁ…。」

 ほら、降りるよ。早くして。

「…ぅぅ。」

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